AE(アナザーエピソード)その女達の衣類無き闘いを僕は知らない
火炎の連弾がリアッティに襲い掛かる。
まさかの攻撃に慌ててバックステップ。
何が起こったのかと思えば、更なる火炎連弾。
リエラから距離を取らざるをえなかったが、リエラの戸惑いからして彼女は関係していない事だけは確かだ。
ならば別の人物となる訳だが、リエラの背後にいるアメリスが何か出来るわけもない。
となると……
答えは一人しかいなくなる。
「ジェーンだったわね。姿が見えないということは、隠蔽魔法を使ってるのね!」
しかし、声は返って来ない。
それはそうだろう。声を出して認識されればこの手の魔法は大抵解除されてしまう。
ならばどうするか。索敵魔法が使えないリアッティはひたすら適当な場所を攻撃していくしか手はない。
炎が飛んで来る場所は大体同じだから、動いて無ければ……
「そこッ!」
手にした鞭を思い切り打ち据える。
空中で一度パンッと音を鳴らし、強烈な一撃が虚空を打ち据える。
「いったぁっ!? ……くない?」
「あ、本当に当った……」
声を発したせいでアカネの姿が現れる。
全ての衣服を脱ぎ去った、生まれたままの姿で太股をさする。
「全然痛くない。というか……体力が回復してる? あのエロバグのせいで付いた物理吸収のせいね」
本人はまだ魔法が継続していると思っているのか、自分の傷を確認し終えるとリアッティを見る。
さぁてどう落し前つけてくれようか。そんな顔で彼女を見ると、リアッティは鼻を押さえている所だった。
何か臭い臭いでも嗅いだだろうか? と思った次の瞬間、リアッティの鼻から夥しい量の鼻血が噴き出した。
彼女は物凄い嬉しそうな顔でアカネ自身を見ている。
ソレを認識した瞬間、アカネの血の気がさぁっと引いた。
まさか。まさかまさかまさかっ!? 今の一撃で上がった悲鳴で、隠蔽魔法が解かれていた、とか?
アカネは今回、魔法を使うために隠蔽魔法を使って身を隠す作戦に出た。
隠蔽魔法を使った瞬間、吹き飛んだ服をアイテムボックスに収納し。裸一貫でリエラの後を付けていたのである。
ヤバくなったら手伝おう。その程度のつもりだったのだが、予想以上に大ピンチなリエラ達を見てついつい手を出してしまったのだ。
まさか反撃を早々に受けて隠蔽解除になるとは思わなかった。思いたくも無かった。
「な、なぜ裸……」
「う、ううう、うるさいッ。あんたはどうして女同士で裸見て鼻血だしてんのよ!!」
「それはもう……ふふ。待ってなさい。正直好みじゃなかったけど、着瘦せするのね。いいわ。リエラちゃんの前に。食べてあ・げ・る」
刹那。アカネの全身を嫌悪感が突き抜けた。
初めて感じる怖気に思わずリエラの後ろに隠れる。
「ちょっ!? 私を助けてくれるんじゃなかったんですか!?」
「無理、変態無理。私じゃ勝てそうにないわ」
「全裸の変態姿で言わないでくださいっ!」
「違っ。これは……」
「知ってるんですよジェーンさんの二つ名。露出狂じゃないですか!」
「それはあのエロバグが! ああもう。どうにでもなれ!!」
自棄を起こしたように飛び出ると、リアッティ向けて連弾を叩き込む。
さらに二つの属性魔法を同時起動。
炎弾と黄色の岩石球の様な物を混ぜ合わせる。
「ミックス・マジック! 喰らえ花崗岩の憂鬱!」
「なっ!? 変態露出狂のクセに変わった魔法を!?」
炎に包まれた岩石がそこかしこへとばらまかれる。
火炎弾とは違い、床に落下してからも燃え続ける魔法に、徐々に逃げ場を失って行くリアッティ。
鞭で魔法弾を切り裂くが、岩石が細かくなっただけで炎の勢いが変わる様子はない。
「さらにミックスマジック! 溶岩大地! というか、誰が露出狂だぁっ!?」
水魔法を床に散らばるグラニッド・ディストレスへと加える。
ただの燃える岩石たちが溶けだし溶岩地帯へと早変わり。リアッティが気付いた時には既に周囲が溶岩に囲まれてしまっていた。
「ふふ。ふふふ。いいわ。そんなことを言って来るのなら。あなたも素敵な二つ名を貰うと良いわ」
「な、何をする気?」
「ミックスマジック……服だけ溶けるよくある溶解液」
「い。いやあああああああああああああ!!?」
うわぁ。思わずリエラは一歩引いた。
アカネが放った魔法により、リアッティの衣類が防具が、道具袋が全て消えて行く。
折角手に入れたアイテムも、冒険用に買ったアイテムも、彼女が身に付けていた全ての装備品が一瞬にして溶け消えた。
代わりに溶岩地帯の魔法も蒸発させられたが、アカネは満足そうにしている。
彼女に露出狂は禁句だ。
リエラは思わず二度目を口にしそうになっていたその言葉を封印する事に決めたのだった。




