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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 そのダンジョンで起きた悲劇を僕は知らない
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AE(アナザーエピソード)その魔物たちの暴走を僕は知らない

「アネッタぁぁぁぁぁぁっ!!」


 焦った顔で先頭を進むのはルグスだった。

 いつの間にか群れの先頭に出て来た彼は未だ混乱中なのだろう。

 良く分からない人物名を叫びながら全員を誘うように先行する。


「待ってくださいルグスさん、迷いなく進んでますけどそっちで合ってるんですか!?」


 唯一人間のレックスが必死に魔物たちに追い付こうと走る。

 ルグスを先頭に30体の丁髷集団。その丁髷達の中央で神輿のように担がれるのじゃ姫が前へ走れとばかりにのじゃのじゃと叫んでいる。

 ネフティアはレックスの横を付いて来ていた。

 彼女だけは混乱していないようだ。


 浣腸艦長が突撃して来たのに気付いて緑色のチェーンソウで対応した彼女は一刀で斬り伏せる。

 まさにバターのようななめらかな切り口で真っ二つにすると、なぜか追撃を始める解体少女。

 訂正。どうやら彼女もいきなり皆と逸れて混乱しているらしい。


 やり過ぎだ! とネフティアの両脇を抱えて死体損壊をやめさせる。

 そのうちにも先頭集団と距離を放されたので、レックスは慌ててネフティアと共にルグス達を追った。

 そして、下り階段を見付ける。


「元の場所は上だからこっちじゃないね。戻ろう皆……皆?」


「アネッタぁぁぁぁ、今行くぞぉぉぉぉぉっ!!」


 ルグスが叫びながら階段を高速落下。宙に浮いているので駆け降りる事も無く、すっと落下していった。

 ソレを見たのじゃ姫が我等も続けとばかりにのじゃぁ!! と叫ぶ。

 レックスはどうしようかと迷ったが、さすがに彼らを放置するわけにもいかなかった。

 魔物だけでここで逸れたら、冒険者たちに狩られかねない。

 いや、むしろ冒険者の方が狩られそうな面子ではあるが、放置するには寝覚めが悪い。


 幸い、カインたちはベテランパーティ。レックスたちがいなくても問題無くリエラ達と合流出来ると考えて、レックスは彼らの後を追う事にした。

 溜息を吐きつつ階段を下りると、直ぐ横をネフティアが歩く。

 気付いて顔を向けると、何故が親指を立てられた。

 がんばれ。ということらしい。再び溜息が洩れたのは気のせいだと思いたい。


 どうやらこの辺りは十層を越えた先のようだ。

 そしてルグスが向っているのは、どうも主の居る場所を感覚的に理解していて、アルセを探していることがわかった。

 つまり、彼はアネッタという誰かとアルセを混同しているのだ。

 どういう混乱の仕方かとレックスは思ったが、アルセたちのもとにはパルティもいる。確か二人だけだったはずなので、彼らの助っ人に向うのはいいことだと思われた。


 リエラ達の援護についてはカイン達に任せ、自分は魔物を連れてアルセとパルティ救出に向おう。

 と、気合いを入れた彼だが、目の前に現れたのは目出度いくらいにぼへぇっとした鯛。

 ネフティアが側面から攻撃を仕掛ける。

 チェーンソウが唸りをあげ、鯛が悲鳴を轟かす。

 開かれた口の中では中年のおっさんがちゃぶ台に手を置き座り込み、レックスを見つめていた。

 しばらく、彼と見つめ合う。


 目出度い鯛が口を閉じた。

 目の前にいた謎の光景が消え去った。

 呪縛から解かれたようにレックスははっとする。


「え? 今の何?」


 呆然としながら呟けたのは、それだけだった。

 再びネフティアが鯛に一撃。

 絶叫と共に開かれた口にはおっさんが一人。上着を脱ぎ捨てようとしてレックスに気付く。

 きゃっとばかりに身を捩っていた。


 鯛の口が閉じられる。

 レックスは思わず自分の頬をつねった。

 痛かった。


 ネフティアが鯛に留めを刺したのに気付き、彼女の手を取って即行のじゃ姫たちに追い付こうと早足で立ち去る。鯛の口から何かが出て来たのを理解しながらも絶対に見る気はなかった。

 ネフティアが首を捻っていたが、一度も振り返る気にはなれなかった。

 何か、見てはいけないモノを振り払うように少しだけ首を振り、レックスは更なる階下へと向かって行く。


「ここかぁっ、アネッタァァァァァッ!!」


 二十階層に辿りついたようで、ルグスがボス部屋へと辿りつく。

 なんとかドアが閉まる前に滑り込んだレックスたちは、巨大な漁船との戦いへと突入するのだった。

 大量に現れるマリナーマリナとクルー・ク・ルー。

 そして暴走する漁船の上でふんぞり返る浣腸艦長。

 皆必死に闘った。

 何分闘ったことだろう?


 激闘を終えたその後で、次の階層に向おうとしたレックスだが、ルグスが呆然と佇んでいることに気付きボス部屋に留まる。

 のじゃ姫もルグスが移動しないので戸惑い気味だ。


「な、何故だアネッタぁぁぁぁ!? なぜそちらにいるのだあぁぁぁぁぁ!?」


 いきなり叫び出したかと思うと、なぜか元来た道へと戻り始めたルグス。

 のじゃ姫がソレを追って走りだし、ネフティアも続いて行く。

 レックスは一度だけボス部屋の先を見る。

 そこには転移魔法陣が細々と輝いていた。


「おそらく、あそこから脱出したんだろうな……良くあの二人だけで倒せたなあの漁船」


 呟いたレックスは、直ぐにネフティア達を追って元来た道を引き返すのだった。

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