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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 そのダンジョンで起きた悲劇を僕は知らない
400/1818

400話突破特別編・その捜索隊が見たモノを、僕らは知らない

変態注意報発令中。ボーイズラブ系に耐性のない方は気を付けてください。

マーキス探索隊がサファリ洞窟へ侵入します。

「お願いしますっ、俺と一緒に、サファリ洞に入ってくださいッ!!」


 今、悲壮な決意と共に、一人の青年が俺の前に土下座していた。

 何が起こったのか? そうだな。ちょっと時系列を整理して話そう。

 まずは、そう、俺達チーム『ハッスル・ダンディ』がサファリ洞から二日ぶりに出て来た本日、皆で公衆浴場で汗を流し、酒場で一杯やってたんだ。


 いやー良い汗掻いたなとか。ボノーやべぇよボノーとか、皆で笑いながら次の冒険どうするかを相談しようとしていた、そんな時だ。

 一人の男が酒場にやってきた。

 この荒くれどもが屯う酒場には不釣り合いなお坊ちゃん。

 影のある顔でこちらにやって来ると、ハッスル・ダンディの皆さんですか? そう聞いて来た。

 もしかしてアレか? ボノーにでもやられたか?


 俺らの誰もがそう思った。

 こんな可愛いガキがボノーにやられちまっちゃ、そりゃあ辛いだろうな?

 一応、ボノー被害者はウチで引き取って面倒見て社会復帰を促しちゃいるが、大抵は人生観変えられた後なもんで、ゲイバーやらニューハーフバーでの働き口に紹介している。


 最近冒険者学校でサファリ洞が解放されたせいかちょっと学生の数が多くなったんだよな。可哀想に。

 まぁ、俺としちゃバッチコイではあるんだがな。ウホッ。

 とにかく、そんな俺らボノー被害者の会であるハッスル・ダンディに彼は名指しでやってきたのだ。

 理由など聞く必要もなかった。

 なかったのだが……


 突如、彼は土下座をする。そして今に至るっつーわけだ。

 禿ちまった頭を掻きながら、俺は周囲の仲間たちを見る。

 その殆どが厳ついおっさんだ。

 平均年齢4、50代。

 冒険者引退を視野に入れ、未だ最深部まで到達した者の少ないダンジョンであるサファリ洞でボノー被害者を救済する集まりを作ったのだが、ミイラ取りがミイラになるっつーか、ボノーと遊ぶ会みたいなメンバーになっちまってる。


 この中で互いの身体を重ねた奴は結構な数になるだろう。

 俺は……いや、この話はやめておこう。

 とりあえずだ。このお坊ちゃんは被害者って訳じゃないらしい。


 どうも、話を聞いてみると、サファリ洞にパーティー組んで向ったそうなのだが、奥まで向った仲間が帰って来てないんだと。ボノーが邪魔でそこまで行けないので、護衛を頼みたいとのことだった。

 目的は友人の生死の確認。報酬はかなり高い。どうやら本当にお坊ちゃんらしい。貴族様なので金払いはいい。そして長男やら次男という訳でもないのでボノーに掘られても俺らに監督責任などは発生しない。

 なるほど、良い儲け話だ。とくに、ボノーから身を守るだけでいいのなら、むしろ俺ら程適任は居ないとも言える。


 そういう訳で、皆と相談した結果、彼の依頼を受けることにした。

 中層以降については一人で向うとのことらしいが、さすがにそりゃあ目覚めが悪い。

 中層手前で報酬を渡すという彼の言葉を断り、最後まで一緒してやることにした。

 そして……


「来たぞボノーだ!」


「俺に任せろ! さぁ来いボノー、テメーの全てを受け止めてやるぜ!」


「ラムサス、遊び過ぎるなよ! 今回は護衛だ!」


「ちょっとぐれぇいいだろ。ケツが疼いてんだ!」


 正直お坊ちゃんに聞かせる会話じゃぁねぇわな。

 彼もちょっと青い顔で苦笑いしている。

 ふむ……ちょっと、好みだな。


「ひぃっ、あ、あの……今、なんか変な視線が」


「あぁん? 気のせいだろ」


 青年は戸惑い気味に俺に聞いて来たが俺は素知らぬ顔で受け答える。

 そう言いながらも彼のケツを舐めるように見ちまったのは許して欲しい。俺だって男なんだ。

 しかし、勘が鋭いなこいつ。


「うおおおおおおっ。俺が相手だボノー! 今日こそテメェが掘られる番だぁぁぁ!!」


「おお、今日のユステルはいつも以上に強気だな」


「良い男がいるから張り切ってんだろ」


「んだよ、昨日もアレだけヤりまくってたくせによ」


 ……本当に、なんつー会話だ。

 いや、俺は違うぞ。そんな会話に入っちゃいねぇからな。

 だからそんな引いた顔すんなよお坊ちゃん。

 そんな可愛らしい顔されると……じゅるり。


「あ、あの。ギースさん……?」


「あぁん? なんだフィックサス?」


「いえ、その、なんで涎が?」


「……気のせいだ」


 おっとこりゃあはしたない。

 俺は思わず涎を右腕で拭きとる。

 気にすんなよお坊ちゃん。狼の群れに迷い込んだ羊みたいな顔すんなって。

 大丈夫、痛くはねぇよ、あ、違った。襲ったりはしねぇから。なぁ?


「しかし、おぼっちゃんがまたえらいところに向ったもんだな。なんで一人でここに来ようと?」


「俺だけなんです。俺達三人の中で、無傷で生還しちまったのは。マーキスはその、ボノーにやられたし、ランドリックは、童貞散らしちまった。俺だけ無傷でのうのうと生きるのは、何か間違ってる気がして、だから、だから、俺。せめてマーキスが生きてるかどうかだけでも、確認したいんです!」


「はっ。いい目をしてやがる。その目、嫌いじゃないぜ。抱きたいくらいだ」


「ひっ!?」


「ちょ、違う。タンマ。今のは言葉のあやだ。ホントじゃない。だから身を引くな!?」


 第十層。ついに辿りついた彼らの前に、不自然な洞窟が一つ。

 向こうの景色が見えるが、密林といった場所ではなく、洞窟内だけダンジョン風の石畳が顔を覗かせていた。


「不思議な場所だろ? その洞窟の横から先は見えない壁に阻まれていけねぇんだ。つまり、その扉が終点。ボス戦って訳らしい」


「この先に、マーキスが……」


「お、おい、アレ見ろ! すげぇのが来たぜ!」


 パーティーの一人が叫ぶ。その先にいたのは、ボノー。それも巨大なボノーだ。


「アレは?」


「ボノボンだ。ボノーの進化形って奴だな。まぁ、扱うスキルはボノーと変わらねェよ。ただ、図体だけじゃなく、アレもデケェんだ」


 思わずじゅるりと舌舐めずりするハッスル・ダンディの男達。


「リーダー。あんたは護衛を優先してくれ。アレは……俺の獲物だ」


「なっ!? ずるいぞギルバート!?」


 少し揉めたが、結局ギルバートを残して俺達は第十層へと足を踏み入れた。

 ボス戦で闘うのはフライング・ベイビーの進化形、飛行少年だ。

 飛びかかりながら手当たり次第に噛みつく魔物を、俺達は難なく撃破する。

 あ、こらビル、そいつ生かしてどうするつも……アホぅっ!? ここでする奴があるか!?


「あーその、すまんな、こんなチームで」


「いえ、そうであることくらいは予想してましたので……さ、さぁ先に行きましょう」


 そして現れるニコポナデポ。

 皆魅了封じの首飾りをつけているので魅了される危険は無いが、あの剛腕の一撃は少々きつい。

 滅多に攻撃してくる事は無くこちらを魅了しようとにこっとしたり撫でて来たりするが、首飾りの御蔭で魅了や心酔状態になる奴はいなかった。

 一人、ニコポナデポに文字通り襲いかかったド変態は居たけどな。


 無数の動物系魔物の群れをくぐり抜け、俺達はついに最深部へと辿りつく。

 確かこの先に居た魔物は……ライカンスロープだったかな?

 素早い動きの人型狼だったはずだ。


 だが、扉を開け、ボス部屋へと辿りついた俺達が見たモノは……

 折り重なるように倒れた裸体の少女が二人と、本来ボス部屋の玉座に座るライカンスロープの代わりにそこに座っている一人の男だった。

 肩肘突いて玉座に座る男は全裸であり、こちらを睥睨するように見つめていた。


「やぁ、まさかここまで追って来てくれるとは思わなかったよ、フィックス」


「ま、マーキス、なのか?」


「ああ。いや、違うな。マーキスなどという村人はもういないんだフィックス。俺はこのダンジョンの王になったんだ。だから……初めまして、欲望と淫慾の王、七大罪・色欲のマーキスだ」


 そう言って、マーキスは立ち上がる。

 おお、なかなか立派な物をお持ちで。


「し、色欲って、マーキス、なんで……?」


「あの後ニコポナデポに二人が魅了されてな。床に這いつくばる俺は許せなかった。怒りと屈辱と独占欲に塗れた俺は気合いと共にあいつに攻撃して、でも、二人に邪魔されるんだ。信頼していた二人が、俺に殺意を向けて来るんだぞ。あんなの耐えきれない。それでも、なんとかニコポナデポを倒したんだ。そしたらアイリーンが自害しようとしてね。とにかく必死に、襲ったよ。ニコポなんて忘れて俺だけを見ろって。そしたら……いつの間にか目覚めたんだ。七大罪・色欲に。だから、俺はここに住むことにした。地上に出れば常時垂れ流される俺の魅力で男女問わず色狂いになっちまう。だからさフィックス。俺の事は忘れてくれ。ここで、二人と楽しく暮らすから」


 諭すように告げるマーキス。フィックサスを見れば、まだ現状を理解できずに戸惑った顔をしている。

 仕方ねぇな。今は俺が代わりに質問してやるか。


「よぉ大将、とりあえず、そこの二人は生きてんだな?」


「ああ。今は気絶してるだけだ。あんたは?」


「フィックサス君の護衛だ。ハッスル・ダンディのギースだ」


「そうか。悪いけどフィックサスを送ってやってほしい。もう、用も無いだろうしね」


「他の友人には会わないのか?」


「地上に出られないしね、自重しておくよ。ところで、あんたはなぜ俺の下半身に視線を向けている?」


「ボノーの被害者の一人さ」


「ああ、なるほど。ならいつでも来てくれ、時折なら相手になるよ」


「ウホッ」


 俺は新たな愛……友人を得た。

 フィックサスを丁寧に地上へと送り返し、後にたびたびサファリ洞窟深部まで向う事になるのだが、それはまた、別の話だ。

 いやぁ、良い依頼を受けたもんだ。

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