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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五話 その奇跡の正体を皆は知らない
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その植物の硬さを彼らは知らない

「おいおい、こんな生物初めて見たぞ」


「そりゃそうでしょ。こんな危険地帯に入って来たの私達が初めてなんじゃない?」


 まぁ、ここまで来た人が居ないからこいつがここまで大きく育ったんだろうけどさ。

 あ、フル装備の骸骨発見。

 一応、ここまで来た奴はいたようだけどあの植物の養分にされたようだ。

 根っこに三人程絡まっている。


「いや、どうやら先に来てた奴らがいるみたいだ。アレみたいにならないように気を付けねぇとな」


 僕が発見した骸骨にカインが気付いた。

 その頃、一瞬気絶していたらしいミクロンがよろよろとこちらにやってきた。

 頭を振りながらも、なんとか生還して来たようだ。


「いや、驚きました。アンブロシアが実在していることもそうですが。まさか自立稼働式の魔物の実だったとは。これは新種の魔物として名前を付けられますね。なんと付けましょう? アンブロシアプラント?」


「今決める余裕があるのかっ。殺されないように後ろにいててくれ!」


「分かってますよ。でも、呼び名くらいあってもいいでしょう」


「アンブロイーターとかどう。人間食べるみたいだしマンイーター?」


「マンイーターは既にいますよ姫様。アンブロイーターだとアンブロシアを食べる植物みたいじゃないですか」


 どうでもいいことで争い合う三人に向けて、無数の蔦が襲い掛かる。

 ブヒッ。と鼻息と共に一閃。

 三人を庇うように滑り込んだバズ・オークが気合いと共に蔦を斬り裂いた。


 しかし、なぜか手前の三本を斬り裂いたところでバックステップ。

 カインに向けてブヒブヒと何かを言ってくる。

 言われたカインは意味を理解できずに首を捻るが、襲い掛かって来た蔦を斬り裂いたことで彼が言いたかったことに気付いた。


「マジか!? この蔦、かなり強度があるぞ!」


「どういうことですカインさん?」


「ようするに、斬り裂くのに力がいるんだよっ。体液が付くから剣の切れ味も落ちる。長期戦は無理だ!」


 斬れば斬る程他の魔物と戦うより体力を使い、斬られた蔦から飛び出る体液にぬめった刃先が切れ味を落として行く。

 すると今まで以上に力を入れなければ斬り裂くことができなくなり、負のスパイラルへと落ちて行くのである。


「ふむ。これは冒険者泣かせな魔物ですね」


「コ・ルラリカ!」


 カインとミクロンが話しあっている隙にネッテが氷結魔法を打ち込む。

 蔦の一部が凍って行くが、本体にまで届かない。

 先程の弾丸さえあればあの植物倒すのも可能なんだろうけど。もう使っちゃったからな。

 リエラが今持ってる弾丸はクリア・オール弾とキュアラ・オール弾。

 クリア・オールは状態異常を全回復。キュアラ・オールは体力を全回復の魔法弾だ。


 残念だけどこれを打ち込んでもあの植物に有効打は与えられない。

 魔法を抜いて空弾薬打ち込めば普通に銃として使えるだろうか?

 一度使ってからになるけど再利用可能かな?


 頼りになるのはやはりネッテだろう。

 彼女の風魔法で敵をひるませ周囲の蔦を斬り裂く。

 出来たスペースをカインとバズ・オークが突撃するというのが一番現実的な戦い方だろう。


 事実、氷結魔法があまり効いていないと知ったネッテは風魔法の詠唱を始める。

 カインとバズ・オークも互いにアイコンタクトを交わし武器を構える。

 ……バズ・オークとアイコンタクト出来てる時点であいつら意思疎通出来るんだ。って気付いたんだけど、何で普通にできてるの?


 いや、おそらくカインは素で気付いてないのだろう。

 ただ頼もしいパートナーとして認識しているので意思が通じているとか全く気付かず任せるぜ! とか伝えているのだ。その意図を汲み取るバズ・オークが知能高すぎる。

 予想以上の見っけもんだよバズ・オーク。


「シェ・ズルガ!」


 ネッテの魔法が完成し、飛び交う蔦に魔法が放たれた。

 放射線状に千切れ飛び体液を撒き散らす無数の蔦が空を舞う。

 そして出来たアーチ状の隙間を二人の男が駆け抜ける。


 アンブロシアの木……いや草? 本体に辿り着くと、緑色の幹というか茎というかに思い切り各々の武器を突き立てる。

 バズ・オークがきこりのように垂直にシミターを叩き込むが、途中で止まってしまう。

 バズ・オークも斬り裂けるとは思っていなかったらしく、剣先が止められる前にすぐに剣を引き戻した。


 しかし、カインは違う。

 思い切り斬りつけ、剣がそこで止まった。

 「やべっ」と声が聞こえるが、そこへ襲い掛かる無事な蔦。

 カインに当るかと思えたその刹那、カインは剣を手放し転がるように後ろに下がった。


「あっぶねぇ。剣抜けねぇでやんの」


 ぶひっと頷くバズ・オーク。

 カインを護りながら僕たちのもとへと撤退してくる。


「あっ。クソッ! 蔦がまた……」


 敵も意思を持って外的要因から自身を護ろうと、蔦を密集させて本体を隠してしまう。


「どうしてくれるんだ、あの剣結構気に入ってたんだぞ!」


 カインが植物に叫ぶが自業自得である。

 技術面ではバズ・オークの方がカインより高いようだ。

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