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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その山頂に輝く悪夢の木を僕は知りたくなかった
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AE(アナザーエピソード)その冒険者たちがいたことを僕は知らない3

「終わった……」


 彼は絶望していた。

 もう、既に正常に戻るのは不可能だろう。

 ランドリックとフィックサスは妹のために大切な何かを失った友を見る。


 まるで強姦にあった様な虚ろな顔で全裸の彼は……いや、文字通りの状況が起こった気がするのだが、二人の男は記憶から消す事にしたらしい。

 ここでは何も無かった。フライングベイビーを倒したらマーキスが裸になっていたんだ。それだけだ。他に異変は何も無かった。


「ボノー、やばいわ……ちょっと、さすがにこの洞窟ヤバいんじゃない?」


「マーキス様……御健闘でした。素敵です」


「お兄ちゃんは私を庇ってくれたのよべス。お兄ちゃんが大切なのは私なの」


「マーくんがマーくんがボノーと……ごきゅり」


 女性陣が呟くのを盗み聞きつつ、ランドリックは考える。

 さすがにボノーの相手が女性だと洒落にならない。

 いや、男性でも洒落にならないけど、まだこう、なんていうか御愁傷様。で笑い話に出来るのだが、綺麗どころが強姦となるとランドリックとしても見過ごせない状況である。


「一つ、提案なんだけど、サファリ洞窟以外の洞窟に行かないか? ここは今の俺達には少々手が余ると思うんだ」


「ああ、確かにな。今はマーキスが守ったから良かったけど、へたすりゃアイリーンちゃんが奴の毒牙にかかってたんだぜ。洒落にならないだろ」


「俺は既に洒落で済んでねぇよ……」


 かすれた声で反論するマーキス。

 服を着終えると、深い溜息を吐いた。


「このサファリ洞窟な。二十階層に俺が欲しいアイテムがあるんだ。俺はそこに行くためにここに来たんだ。絶対に、絶対に手に入れる!」


「でもよ、さすがに女の子連れて来る場所じゃないぜ? 間違ってボノーとラブ&ピースしちまったら一生モノの傷になるだろ。特に好きな奴がいる女の子とか」


「そ、それはそうなんだけど……」


「お兄ちゃんは行きたいんでしょ。私は一緒に行くよ?」


「マーキス様。私も、例えこの身が穢されようとも心は常にあなたの物です!」


 アイリーンとエリザベスはマーキスと奥に向う気満々だ。

 しかし、キキルとクライアは戸惑い気味である。


「私は……さすがにこれ以上は身の危険を感じますわ。よろしければ引き返しません?」


「わ、私もその……初体験がボノーは、嫌……かな」


 言葉を聞いたマーキスは考える。

 そして二人の友人を見た。


「ランディ、フィックス。二人を洞窟の前までエスコートしてやってくれないか?」


「マーキス? 行くのか?」


「ああ。俺は目的地まで向いたい」


「そうか……分かった。なら一つ言っておくことがある」


「なんだランドリック?」


「初めてが好きな相手以外というのはあまりに酷だ。責任を持つなら今すぐ貰ってやれ! さらば!」


 なぜか血涙流しながら叫ぶランドリック。背を向け入口向けへ歩きだした。

 意味が分かっていないクライアとキキルがソレについていく。


「なぁ、フィックサス、あいつ何言ってんだ?」


「おそらくだが、失われる前にエリザベスとアイリーンの処女貰ってやれって言ったんじゃないか?」


「……え? な。なな。何言ってんだよ、俺は……ソレにアイリーンは妹だぞ!? 俺、既に穢されたし」


「そんなお前を見たのに一緒に行くって言ってんだよその二人は。自分達も穢されるのを承知で。男としての責任くらい、取ってやれマーキス。クソ、べスさん狙ってたのによ……幸せにな、そして爆死しちまえ残念リア充野郎っ!!」


 そう告げて、フィックサスは泣きながら走り去って行った。

 ランドリックに追い付き男泣きするのをランドリックが慰めている。

 そんな二人の友情に軽い嫉妬を覚えつつ、マーキスは残った二人を見る。


 フィックサスとの会話を聞いていたのだろう。

 妙に落ち付きなくそわそわした二人が上目使いに見つめて来たりしている。

 ごくり。マーキスは生唾を飲み込む。


「良いのか? 俺はそのボノーに……」


「助けられてから、私の全てはマーキス様に」


「お兄ちゃんの前の初めては私が貰うのよ。これ絶対だからね!」


 若干の戸惑いを覚えつつもマーキスは友人二人に感謝した。

 こんな事がなければ、きっとこの二人とそういう仲になることはなかったかもしれない。

 否、いつかはあったかもしれないが、あまり相手の感情などは考えなかっただろう。


 こんな俺でも付いて来てくれる。それに気付けただけでもマーキスにとっては不幸中の幸いであった。

 ただ、ここはダンジョン内である。さすがにギッタンバッタンしていれば色々と問題がある。


「そう言えば、もうすぐボス部屋がありますよね。階層の違いが分かりにくいですけど多分そろそろ10階層のはずです」


「え? べス分かるの?」


「はい。森が途切れてる気配があります。あのあたりですね。多分見えない壁みたいなのがあるはず。ボスさえ倒せばボス部屋でゆったりできるハズです」


「お兄ちゃん……」


「……そうだな。行こう。お前達の人生、俺にくれ!」


 マーキスは二人と共にボス部屋へ辿りつくのだった。

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