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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その山頂に輝く悪夢の木を僕は知りたくなかった
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AE(アナザーエピソード)その冒険者たちがいたことを僕は知らない2

「あーその、なんだ。御愁傷様」


「ふざけんなバカ野郎ッ! あんなの反則だろッ! 知ってたなら教えろよ!!」


「いや、いきなり現れるとは思ってなかったから……なぁフィックス?」


「あ、ああ。さすがにこれは予想外だったわ」


 とりあえず両手を合わせて御愁傷様のポーズを決めるフィックサスとランドリック。

 女性陣の顔が真っ赤なのは目の前で恐ろしい行為が行われたのを見てしまったせいだろう。

 なんとか服を着直したマーキスが涙目で立ち上がる。

 やけっぱちに歩きだす彼をある意味強いと思う面々だった。


 ただ、時々尻を抑えたり、変な呻きをあげるのがまた哀愁をそそる。

 折角彼に惚れ始めていたらしいクライアも今のを見てしまえば100年の恋も冷めるようで、可哀想な物を見る目はすれど、今までのように恋する乙女な顔はなりを潜めてしまっている。


 逆にエリザベスの方はその辺りは気にしていないらしい。

 彼女は助けられた恩があるようで、マーキスを慕っているため、この程度では揺らがないようだ。

 ランドリックは苦笑い気味に彼らの背後を付いて行く。

 どうもついさっきまでの話しかけづらいパーティーではなくなった。


「あのーランドリックさん?」


「ん? えーっとアイリーンだっけ。どした?」


「お兄ちゃんが言ってたんですけど、お二人は貴族なんですよね?」


「まぁ、貴族っつっても俺は七男坊だし、フィックサスに至っては二十八男坊だからな。貴族なんて肩書きはあってないようなもんだ」


「二十……兄弟多いんですね」


「まぁ、あいつパールハイマーだしね。家族多いのは有名だぜ? 親父さんメイド全員側室化してるし」


「あはは。やっぱり男の人ってそういう女性沢山侍らすのが好きなの?」


「まぁ、結構多くはあるよな。さすがに相手の意思もあるから余程権力がないと実現は出来ないだろうけど」


「そっか……やっぱりお兄ちゃんも……ううん、でも今回の事で……ということは。ふふ、うふふ……」


 何かを感じたのだろうか? マーキスがゾクリと背中を震わせ周囲に視線を走らせた。

 次の瞬間おふぅと謎の声を漏らし尻をかばう。

 何が起こったのか、ランドリックたちは察しがついたので見なかったことにした。


「あ、皆さん、敵みたいです。右方密林より数1。来ます!」


 犬の嗅覚を持つらしいべスに言われ、皆が武器を構える。

 いつでも武器を捨てられる状態なのは、ボノーを警戒してだろう。


「フォレストタイガー!?」


「上等だ。全員戦闘準備、行くぞ!」


 マーキスが剣を構える。

 力んだ拍子にうひぃっと悲鳴を漏らしていたが、全員が無視する事にした。

 フォレストタイガーといってもそこまで危険な魔物ではない。

 そもそも森に擬態するこの虎は魔物界の中でもかなりの下っ端である。


 サファリ洞窟に出没するウサギにすら狩られる魔物なので、その実力は充分人の敵う力であった。

 べスが先制とばかりに飛び込み爪の一撃。

 さらにクライアの剣がフォレストタイガーの足を切りつける。


 悲鳴が上がる。

 そこにアイリーンの魔法が炸裂。

 闇弾の一撃を受けたフォレストタイガーが盲目に陥った。


 この隙をついてランドリックとフィックサスが突撃。

 一瞬早くマーキスの一撃がフォレストタイガーに当るが、力を込めていなかった一撃ではフォレストタイガーを撃退するに至らない。

 結果、ランドリックとフィックサスが同時にトドメを刺した。


「すまんランディ、フィクス。どうにも力むと垂れてきて……」


 何が? とは聞けなかった。ただ、ランドリックとフィックサスは悲壮感漂う顔でマーキスの肩に手を置く。


「「強く生きろ。俺達は味方だ!」」


 互いに想いは一つだった。余りに不憫なこの友人が絶望しないように、ランドリックもフィックサスも彼を守り抜き生還しようと……

 しかし、マーキスの目を見た瞬間、思わず手を放して距離を取る。

 なぜだろう。彼の泣きそうに感動した顔の奥底に二人を熱く見つめる粘ついた視線が見えたのは?


「俺、生きて帰ったらライカと結婚するんだ」


「だから変な決め台詞とやらいうなよランドリック」


「いや、なんか言っとかないといけない気がしたんだ。このままだと大変なことになるっつかな」


「敵、また来ます。今度は二体!」


 べスの言葉で全員が気を引き締める。

 初めに現れたのは、空飛ぶ赤ちゃん。フライングベイビィだ。だぁー。っと声を上げながら密林を飛んで来る。

 戦闘態勢に移行したパーティーの目の前に、もう一匹の魔物が現れる。ボノーだ。


「ど、どうしろってんだ!? これじゃ闘えないぞ!?」


「とにかく武器、武器を捨てるんだッ!」


「い、いやぁぁぁっ。お兄ちゃ、ボノーがこっちにっ」


「ボノーッ! 貴様に妹はやらせねェ。俺が相手……って。またかよぉっ!!!?」


 そして彼らを守るため、一人の男がまた、犠牲となった。

 ボノー

  種族:魔猿 クラス:ボノーン

 ・世界唯一にっちゃう以外で争う事をしない生物。

  認識範囲外から仕留めないとスキルが発動してしまう。

  魔物、人間問わずに発動するスキルのため、出会った場合は武器を捨て相手がどこかに行くまで待つしかない。

  種族スキル:愛し合うラブ・アンド平和な世界ピース:攻撃体勢の相手を認識すると発動。双方ダメージ無効になるかわりに愛し合わない限り解除されなくなる。

 ドロップアイテム・禁断の果実、愛の記憶メモリー、友愛の指輪


 禁断の果実:食べると全てのステータスが+3される。

 愛の記憶メモリー:対象のボノーが愛し合った者たちとの記録が詰まった水晶玉。再生可能。

 友愛の指輪:装備すると敵からのダメージ30%減少。同性から好かれやすくなる。

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