その泥沼カレーがどうなるのかを僕は知らない
「お姉様~っ」
突如ルルリカに抱き付かれ、何が起こったのか理解できないネッテ。
一瞬にして鳥肌がズゾゾゾゾと立ち上がる。
何かを察したカインがそっと彼女たちから距離を取った。
「ちょ、カイン、私を守るんじゃなかったの!?」
「れ、恋愛は自由だとオモウヨ」
カインが片言になって視線を逸らした!?
「ちょっとカインっ!?」
カインはネッテを見捨てた。
ネッテは半泣きだ。
「お姉様、私、私二番でもいいです。一生ついて行きますっ」
で、ルルリカさんや、どうやったらそんな思考に辿りついちゃうんですかね?
ネッテは慌てたように周囲に助けを求める。
呆然としたまま置き去りにされているランス王子、唖然としていたがネッテと目が合うと視線を逸らすリエラ、レックス、パルティ、チグサ、ケトル。あ、ルグスも逸らしやがった。
そして我関せずとアメリスとにっちゃんは熊たちと遊んでいる。
ネフティアさんはグッドマークを返している。
君はなんでもオッケーだすよね。どんな属性でも楽しめるってことですか?
のじゃ姫は理解すら出来てない。仲が良いのじゃ。みたいな顔をしている。
カレーニャーとにっくんはアルセと三人で何かしてます。
カレーニャーがロッドを地面に突き立て、にっくんが魔法を使い、アルセが何かの種を蒔く。
ちょ、それアルセギン!?
そして取り出す人参と悪夢のジャガイモ……アレ、まだあったんだ。
ソレを迷うことなく地面に投げ入れ、ぼちゃっと……ああ、にっくんの魔法で泥沼みたいにした場所に空間あけてカレーでも作る気かい?
泥入ってるしジャガイモがヤバい奴だし人参鋼鉄だし……ってぇ!? アルセ、それ大根。大根入れるの!?
きゃっきゃと楽しそうに大根を漬けてかき混ぜるアルセ。
ああ、食材じゃなくてかき混ぜ棒の代わりか。
というか、素材切ってないけどそれでいいの?
とりあえずおかしなクッキング教室開いてる三人は放置の方向で。
ネッテは最後の砦とばかりにメリエとアカネに視線を向けた。
助けてください。そんな視線を、メリエは即行視線を外して逃げる。
アカネは……ネフティアと一緒だ。この人も腐ってる! チクショウこの露出好きの変質者め。あなたも仲間ねみたいな良い笑顔してるんじゃない。
五匹の熊たちはアルセの料理に興味があるらしく彼女の方に近づいてるし、ネッテを助ける人はいないらしい。
ネッテは仕方なくルルリカ説得を開始することにした。
助けが期待できないので自分で何とかするしかないらしい。
「る、ルルリカさん、あなた、ランス王子と婚約するんじゃなかったの?」
「婚約する気はありません! というかもう、魅力を感じません!!」
「る、ルルリカ?」
「だって、私が危険に晒されたとき、いっつも叫ぶばかりで何もしてくれなかったじゃないですか。でも、そんな私をいつも助けてくれた人がいました。さっきだって、私が酷いことをしてるのに、身を呈して私をかばってくれて、下手したら死んでたんですよっ。身代わりまでして私を助けてくれる人、初めて出会いました……私、ネッテお姉様に出会うために今までがあったんだと気付きました!!」
「き、気付かなくて良かったのよそこは。多分勘違いだわ。ほら、もっとふさわしい男の人が現れるわよ、ね?」
「いいえ! ネッテお姉様以上に素敵な人なんていませんっ。私が間違ってました。改心します。だから、だから私をお傍に置いて下さいっ。私の全てを、貰って下さいっ!!」
ちょぉぉぉぉっ!? 告白しやがった!?
ルルリカさん、女同士、女同士だよっ!?
「あ、あのね。ほら、さっき私カインと付き合うことにしたって……」
「側室でも構いません。奴隷でもなんでもします! あなたの愛を私にも下さいっ!!」
ルルリカがバグった!!?
え? え? なんで? 僕なんかやったっけ?
あれか、僕の周囲に居るだけで周囲がバグっていくって神様言ってたし、そういう理由ですか?
ルルリカさん悪女から百合系少女にバグりましたか!?
「ね、ネッテ王女……これはどういう事だ?」
押し殺すようにランス王子が告げる。
折角ネッテとの婚約破棄を宣言し、これからルルリカを王妃に迎え入れようと思っていた矢先の出来事で、理解が追い付いていないらしい。
なんか、どこぞのエロフに婚約告げられたお父さんみたいな顔してるぞ。
頭を掻き毟るようにおかしい。なぜだ? そんなつぶやきを始めたランス王子。
僕も予想外です。意中の子が婚約破棄した相手に寝取られるとか。笑っていいですか?
困った顔のネッテもランス王子に答える術を持たなかった。
むしろ、二人のことに私を巻き込むなと目が言ってます。
ほんと、可哀想なネッテさん。
あ、そういえばカインのステータス変更されてたね。後で確認しとこう。
他人行儀? だって僕には関係ないしー。知ーらないっと。




