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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その山頂に輝く悪夢の木を僕は知りたくなかった
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そのお約束に愛された少女を、僕らは知りたくなかった

 中腹を越えるとまた魔物の種類が変化した。

 周囲を長閑に歩いているのはマウンテンゴート。ただの山羊です。

 草を食んでくっちゃくっちゃしてます。


 魔物化した影響なのか首にはベルが付いていて、歩くたびにチリンチリンなっているのがなんか、落ちつく。

 ただし、眠りに誘う状態異常魔法とか持ってるから気を付けないとね。

 カインたちもマウンテンゴートたちと闘う気はないようで、その光景を見ながら山道を歩いていた。


 ここまで登ると木々は殆ど存在せず、雑草が所々に散見している程度。

 その雑草も山羊たちにより絶滅しつつある。

 これ、放っといていいんだろうか? 禿山になるよ?

 そしたらこの山羊共中腹に降りて来たりして。

 そしてどんどん山の緑を食い散らかして、森を追われたミーザル共が街に……災厄だ。


「アンギャー」


 でも、僕の心配は杞憂に終わるようです。

 まるで赤ん坊の泣き声のような声が響いたと思えば、なんか形容詞がたい鳥が降下してきてマウンテンゴートを一匹連れ去った。


「アレがアンギャートビス。捕まらないように気を付けてね。最悪足元切りつけてやれば慌てて放すわよ」


「これ、学生だけで来るところじゃない気がする……」


「学生だけなら大体ミーザルに弄ばれて逃げ帰るわよ。ここまで来ちゃったら、まぁ、諦めるしかないでしょうね」


「敵接近だわ。アメリスさんこっちに」


 風景に魅入っていた無防備なアメリスに声を掛けるメリエ。

 山羊もいいなぁっと漏らしていたアメリスは、ハッと我に返ってメリエのもとへと戻っていた。


「姫様、今度こそ活躍しますから。見ててください」


「チグサ、私も活躍したい。もちろん縁の下で」


 姫のため、勇者として、大した活躍の無いチグサが刀を引き抜き構える。

 その横に並ぶケトル。

 ふたりもキカザール相手に大した活躍ができなかったうえ、ヨイドレにはほぼ攻撃を与えることが出来ずに吹っ飛ばされていた。


 今回こそは活躍する。

 そんな思いを込めて武器を握る彼女らの前に現れたのは……おお、ゴリラだ。ゴリラが出たぞ!?

 真っ黒い身体に生えた体毛。どっからどう見てもゴリラだ。でもメガネ掛けてます。

 そしてなぜか着ているアロハシャツ。

 なるほど、服屋で売ってるアロハシャツっぽいのはこいつのドロップアイテムかこれを元に作成された服なのだろう。


 ゴリラはメガネをチャリっと直し、こちらを確認すると、フンガーとばかりに二足歩行で立ち上がり、自分の胸を叩きだす。

 ウホッウホッと興奮したように胸を叩き威嚇するゴリラ。


 名前は……マウンテンゴリオ。

 ……え? ゴリラ……じゃない? ゴリオ?

 偽人……じゃないな。魔獣だな。


 そんなゴリオさんは興奮しだしたらしく全力疾走。

 目標は……ランス王子だ!?

 いきなり目標にされて驚く王子。


 慌てて逃げるルルリカ。なぜかネッテの背後に隠れる。

 呆然としたまま逃げない王子。どうやら相手の威容に押されているらしい。

 そんな彼を掴みあげるゴリオ。

 狂ったように咆哮を上げる彼に、チグサが踏み込んだ。


「小手!」


 王子を掴み取った手に剣撃。

 さすがに痛みを感じたゴリオが王子を投げ捨て呻く。


「胴ッ!」


 巻き込む様に身体を回転させて追の一撃。

 ゴヘッと呻くゴリオが態勢を整えるより先に、さらなる連撃を叩き込む。

 剣道ではあるがより実戦向きの動きをしている。

 どうやらこの世界で剣技を磨いたようだ。


 ……チグサの異世界ではアレが剣道、とかじゃないよね、多分。

 そんなチグサは次撃を行おうとして、慌てて身を捻り、スライディングヘッドで飛び退く、ごろんと転がった彼女の真上を、物凄い剛腕のスイングが通過して行った。


「甘い」


 チグサに追撃を仕掛けようとしたゴリオ、そのうなじに両足を巻き付けるケトル。

 その場に辿りつくまで完全に気配を消していた。

 傍から見ていた僕だけは全部見てたけどね。


 闇討ちスキルによる不意打ち。さらに三連撃を行ったらしい。

 ゴリオが悲鳴を上げて前のめりに倒れて行った。

 さすが勇者というだけあってチグサは凄いな。今の、自分が攻撃のメインと見せかけて姫に譲ったってことか。


「あら、可愛いのいるじゃない」


 チグサとケトルがゴリオを倒した時だった。ネッテの後ろに隠れていたルルリカが何かに気付いて皆から離れた。

 そして何かを掴みあげ、頬ずりを行う。

 イタチの様なその姿、黒い縞模様が二筋背中から尻尾まで走っている、栗鼠と鼬の中間みたいな存在だ。うん。コイツ知ってます。


 あいつはね、とってもくっさいおならをするんだ。そう、その名もスカン……

 僕がそんなことを思っていた時だった。

 ルルリカの頭上に影が差す。


 あれ? おかしいな? そう思い空を見上げたルルリカを、アンギャートビスが掻っ攫って行った。

 マウンテンゴート

  種族:魔山羊 クラス:マギゴート

 ・魔力を持っている山羊。普段は群れで草を食んでいる。

  アンギャートビスの食糧にされているが数が多いので自然淘汰されることはないらしい。

  睡眠魔法が得意なので怒らせると眠らされる。

 ドロップアイテム・ゴートミルク、山羊印チーズ、ゴートベル、眠気醒め草


 アンギャートビス

  種族:妖鳥 クラス:トビスバード

 ・山頂でよく見かける鳥型の魔物。禿鷹のような容姿と赤ん坊のような泣き声が特徴的。

  捕まると高所から投げ落とされて食料にされるらしい。

 ドロップアイテム・トビスの羽、あやしい鳥肉、ゴートベル(体内から時々でてくる)


 マウンテンゴリオ

  種族:魔猿 クラス:ゴリーラ

 ・とある人間の行動に興味を持って真似をしだした魔猿の一種。

  メガネには度数が入っており、個体により度数の差がある。

  アロハシャツを着ているので、上手く倒せば無傷のアロハシャツが手に入る。

 ドロップアイテム・メガネ、アロハシャツ、イケメンゴリーラのブロマイド、綺麗なメスゴリーラのブロマイド


 ハイパワースカンク

  種族:魔スカンク クラス:スカンク

 ・見た目からして良く分かるスカンクスカンクしたスカンク。

  一目でスカンクと分かるので知っている人は絶対に近づこうとしない。

  自身の危機を感じると尻から悪夢のような悪臭を放出して逃げる。

  時折逃げ遅れて脅威諸共気絶しているハイパワースカンクも結構見かけるらしい。

 ドロップアイテム・瓶詰め臭い匂い、臭い肉、悪臭の指輪

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