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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その山頂に輝く悪夢の木を僕は知りたくなかった
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その猿をどうしたらいいのかを、僕は知らない

 うわぁ……

 闘いを始めると、まずはイーワザルどもがこぞって襲いかかって来た。

 否、襲われ掛かって来た。

 襲われるために掛かって来たのである。


 そんな猿を剣で切り裂くと、なんか恍惚な顔して死んでいく。

 正直気持ち悪いです。

 叩けば喜び、突けば仰け反り痙攣する。そして幸福の表情で息絶える。

 何この猿。


 ミーザルも特殊だ。

 攻撃は殆ど行わず、とにかく皆の前に現れひたすらにミーザル自身を指差し自己主張。

 リエラの剣を巧みに躱して、イラッと来るほど自分を主張していく。


 俺だよ俺、俺俺俺、お前の剣避けたの俺っ。分かる? 俺だよ、お・れ♪ 俺登場だよ俺。ほら、ここに俺、ここにも俺、俺がここに居てここに居るのが俺。俺なんだよ俺。俺俺俺俺俺俺俺俺、俺をよろしく。すげぇだろ俺。


 ああ、リエラが凄い複雑な顔になって行く。

 最初は避けられた悔しさと攻撃されると思った緊張、次に攻撃されず自己主張されまくることへの疑問と戸惑い。次第相手のウザさにイライラが募りだして行く。

 そして、その苛つきがピークに達するその刹那、ミーザルは空気を読んだかのように山道を外れて逃げていく。


 そしてまた別のミーザルが現れリエラの苛つきをさらに高めていく。

 すげぇ、リエラがあまりのウザさに初めて見せる怒り顔をしてる。

 なんか叫びだしてデタラメに剣を振りまわしだしたので、慌てて葛餅がにっちゃうからリエラの頭に飛び乗り窘めようとしていた。


 対して落ちついた存在なのがキカザールである。

 煌びやかな衣装でゆったりと歩き、突っかかって来るレックスやカインの剣を扇子でいなしていく。

 メス……という感じじゃないんだよな。オスっぽいんだけど艶やかというかなんというか。


 しかし上手いな受け流し。

 カインの剣撃って結構凄いんだよ。なんちゃって勇者だけどさ。

 しかも時折シェ・ズの魔法を使って来る。

 風で切り裂かれレックスが悪態を突く。


「くっそ、こいつら無駄に強くないですか!?」


「耐久値自体は他の魔物と変わらないはずだ。こいつらはトリオモンキーという種族で三種類の魔猿で出現してくる。回避特化型の魔物だからベテランでも当てるのには苦労するぞ」


 レックスの言葉にカインが告げる。

 なるほど、回避特化型なのか。

 そして攻撃してくるのがキカザールくらいとすれば、そりゃあ新人用の実戦経験積ませるのには一番適した魔物ともいえるだろう。

 こういう魔物が多いから冒険者学校もコルッカに設立されたんだそうだ。

 他の学校も乱立しているのは比較的安全な魔物しか周辺に居ないからだろう。

 貴族とかがそこまでの怪我をしないことも理由の一つのはずだ。


「リエラの実戦経験にはいいかも……ね!?」


 ようやく機嫌が直ってきたらしいネッテが魔法でイーワザルを屠った後リエラを見る。

 そして絶句。

 既にプッツン状態のリエラがふふふふふ……と呟きながら壊れた笑みでミーザルに剣を振りまくっていた。

 頭の上では正気に戻れと葛餅がぺしぺし叩いているが、暴走中のリエラはただ只管にミーザル向けて剣を振る。


 そしてその全てを避け、リエラに近づいてはお前の剣避けたの俺! 俺だってばよお~れっ。と自己主張する盲目ザル。凄くウザいです。しかもドヤ顔してるのがまた癪に障る。

 剣を避け、目を瞑ったままドヤ顔でひたすらに自己主張して来るお猿さん。奴はマジパネェっす。


 なにしろ今、一匹のミーザルがルグスを相手に自己主張を始めたのだから。

 リエラ同様、魔法を避けられイラっとするルグス。

 その横でもミーザルは彼女・・に自己主張を行いだしていた。


「このっ、ムカつく。戦乙女の花園だったら楽に殺せるのにっ!」


 アカネさんは魔法が使えない状況なので杖で参戦中です。

 ミーザルはその杖撃を悉く避けてニタついた顔を接近させては左の親指を自分に向けて、お・れ♪ と主張しては遠のきを繰り返す。

 なんかもう、すっごくイライラ来るんだろうねアレ。

 透明人間で良かった。バーサーカー発生機な彼らと敵対しなくて良かった。


「オノレ……オノレ下郎どもがぁぁぁぁッ!!」


 あ、ルグスがキレた。

 彼の真上に無数の遅延魔法が現れ渦を撒く。

 そして、ミーザル向けて一斉発射。

 降り注ぐ魔法の雨霰を、ミーザルは物凄く華麗に避けていく。

 凄い、まるでどこに来るのか分かっているかのような華麗なステップ。そして合間にルグスへ向けられる自己主張。


 やがて、物理障壁一歩手前まで近寄りルグスの目の前でミーザルは自分の顔に左の親指を向けた。

 「キキッ」と半笑い浮かべて鳴いたミーザル。

 心底バカにしたようなその態度に、ルグスは無言で彼の首根っこを掴み取っていた。

 あー、さすがにやり過ぎたらしいねミーザルくん。


「あーっもう! クタバレクソザルがぁ!!」


 そしてアカネさんもキレました。

 すぽぽぽーんと大空を無数の衣類が舞って行く。

 そして降り注ぐ悪意の火炎ガトリング。

 ミーザルの一体が焼け死ぬのと、アカネが冷静に戻って恥死するのは同時だった。

 ミーザル

  種族:魔猿 クラス:トリオモンキー

 ・自己主張の強い猿。

  とにかく人の居る場所に突然現れ自分を見せまくるだけ見せて満足して去って行く。

  相手を見ていないので時折見当違いの方向に自己主張している姿が見受けられる。

  土魔法を使うのだが、使っている姿を目撃されることは滅多にない。

 ドロップアイテム・虚偽の鑑、バナナナン、ミー物語


 イーワザル

  種族:魔猿 クラス:トリオモンキー

 ・決して声を上げないドM猿。

  とりあえず水魔法で先制して攻撃してくるが、相手が攻勢に転じるとむしろ自分からやられに向って来る。

  コルッカ近辺では新人のトラウマ発生機として名高い魔物の一種。

 ドロップアイテム・荒縄、蝋燭、蝶メガネ


 キカザール

  種族:魔猿 クラス:トリオモンキー

 ・華美な衣装で着飾った猿。

  森の中を優雅に歩く姿がよく見られるが、山道にも出没する。

  扇子を仰ぎ、風魔法を使って来る。仲間の意見すら聞かないので単独行動をする個体が多い。

 ドロップアイテム・扇子、奇抜な服、話題の口紅

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