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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その山頂に輝く悪夢の木を僕は知りたくなかった
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その彼女の資質を、僕ら以外は知らない

 頭の蕾が左右に揺れている。

 なんかメトロノームのようにアルセの蕾が揺れてます。

 楽しげに揺れ動く蕾は、笑顔のまま微動だにしないアルセの頭上で彼女の心情を露わしているようだった。


 リーダー学とは何か?

 そんなことを壇上の先生が告げている。

 どこかの冒険者だろう。若くはないがそこまで年老いてもいない。多分現役、あるいは丁度冒険者を辞めたての人だろう。


 どこにでもいそうなやり手のおじさんだ。

 ちょっと視線が強いのは、それだけ修羅場をくぐっていることの表れだろう。

 だからこそ、彼の言葉に正確性が生まれるのだ。


 リーダーに求められる資質、やるべきこと、心得。

 そして裏切りが起こった場合の対処法、強敵に対峙した時の鼓舞、自分たちの力量では敵わない敵と出会った時の損切り法。

 自分が残るのは愚策、仲間のためにも仲間の一人を犠牲にして、自分が指揮して散り散りに逃げて各個撃破されないように残った仲間を無事街へと戻す方法など、幾つもの話をしてくれるのだが、なんか分かりにくい。


 例え話だけ言われても頭に入りません。

 右から左にすーっと抜けていくのですよ。

 同じ気持ちなのだろう。不死王様もご立腹だ。


 僕と同じようにアルセの背後に陣取るルグスは腕を組み、右の人差し指で左の肘を叩いている。

 少しづつ速度が上がっているのでイライラ度が溜まっているのがよく分かる。

 しかし、アルセが普通に聞いているので放置せざるを得ないらしい。


「では、リーダーとなる君たちに、ダンジョン探索許可証を配らせて貰う。これを貰ったからといって仲間を募って冒険にはまだ出るな。次の授業で許可証についての説明を行う」


 いや、それだったら全部の説明終えてからにしようよ。

 絶対行く奴いるでしょ。

 というか、ダンジョン潜るのに許可証とかいるんだ。


「ふむ。今回で全てを説明しないというのは、ワザと先走る奴を煽っているな」


 感心したようにルグスが唸る。

 ソレ本当? 先生が何も考えてないだけじゃないの?

 アルセも理解不能だったのかコテンと首を傾けている。


「つまり、今回先走り痛い目を見るような輩はリーダーの資質なしと判断されるのだ。言わば試しているのだよ我が主よ。そしてまた、言われた事だけを守る者も見定められている。先生の言葉に従うだけなら別にリーダーでなくともいい。つまり、リーダーの資質がどういうものか、これからの行動には常に問われるわけだ」


 わかったようなわからんような。

 ようするに、今回の失敗を踏まえた授業内容が次の時に告げられるとかそんなんだろう。


「別に仲間と共に洞窟に行っても構わんのだよ。許可証自体はどのリーダー見習いがどの洞窟に入ったかを調べるものであるのだしな」


 なるほど、この許可証、必要なのは洞窟に入るためではなく入った人物を特定するためのものか。

 つまり、別に許可証無くてもダンジョン入れるけど、先生がこう言っておけばここの生徒は許可証をダンジョン案内人か誰かに見せるんだ。そこで許可されるのではなく、誰々がどの迷宮に入ってますというのが案内人から学校に連絡が行くとか、そんなシステムなのだろう。


 後は階級制みたいなのにしてあって簡単な洞窟からしか行けないようにしてるとか。

 比較的安全なダンジョンに向うように誘導されてるのかもしれない。


「その辺りも考え、どうするかの決断を下すのもリーダーとしての資質であるな」


 アルセ、この授業、本当に受けるの?

 彼女が何を目指しているのか僕には理解できません。

 それとも、あれかな? 姫としての自覚がでてきたとか?


「我が主にリーダーの資質があるのかどうか。なるほど、これは確かに見物であるな。我を失望させてくれるなよ我が主様よ」


 クックと挑発的に哂うルグス。

 当然アルセに足を蹴られていた。

 さて、そんなアルセですが、どうやらさっそくダンジョンに潜りたいようです。

 学園ギルドにやって来ると、許可証を見せびらかせ周辺地図を見せてもらう。


 ふむ。一年生に解放されてるダンジョンは四つか。

 サファリ洞窟にカイヘイ洞窟、英雄迷宮、時代劇の逆塔。

 ……え? これツッコミ要素しかないんだけど。ツッコまなきゃダメ?


「あら? アルセじゃない。もうすぐお昼なのにこんな場所に居ていいの?」


 アルセを見付けたらしい女性が近づいて来た。

 というか、ネッテじゃん。

 なんでここに来てるの? ああ、あの二人追ってきたのね。

 居るよあいつら。なんか二人で冒険選んでるよ。


「おー?」


「あー私の事はいいからいいから。あら、それダンジョン探索許可証? 二年の時貰ったわね。懐かしい。あの頃はダンジョン探索にも確認証がいらないって知らなくて、通るたびに見せてたわね」


 昔を懐かしむ様に告げるネッテ。丁度何かを飲んでいたらしい。液体入りのグラスをテーブルに置いてトリプッている。

 ここのギルドで頼むことのできる紅茶のようなものらしい。匂いからしてローズヒップとかいうやつだ。

 帰っておいで、アルセが困ってるよ?

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