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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その森の秘密を彼らは知らない
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その魔物がいたことを、彼らは知らない

「ちょ、ミクロン!? なんでこんなところに?」


「こんな所も何も、あの暗号を調べる為に現地調査にきたんですよ姫様」


 ただの学者がお供も付けず一人でか。死ぬ気だこの人。

 一応迷彩を意識したのか土やら泥を身体に纏い、草の汁で顔をペイントしている。服装も現代で見るような迷彩柄のローブを着ている。


「しかし、この森、奥へ行けば行くほど魔物が強力に成りすぎです。まさかキルベアが可愛く思える日が来るとは思えませんでした。見てください、新種が多数ですよ」


 と、似顔絵だろうか、大して上手くもない絵が描かれた紙束を取り出すミクロン。

 その中には先程のティラノサウルスみたいな魔物も描かれていた。

 おそらくだけど、この人追って森の浅い場所に来たところでアローシザーズの咆哮に吸い寄せられたのだろう。だから浅い場所に現れたんだ。ちくしょう、疫病神め。


「全く、これなら冒険者を雇ってきた方が良かったですね」


 本当だよ。どれだけ勝手に突っ込んだんだか、死んでも誰にも文句言えないぞ。


「ま、丁度いいわ。一緒に行きましょう。その方が安全だろうし」


「よろしいのですか? では遠慮なく」


 そしてお荷物が一人増えたのだった。


「あの、何か進展はありましたか?」


「ええ。新種の魔物を幾つも手に入れられましたし、未踏破地域が少し減りました。ただし、アンブロシアについてはなんとも言えませんね」


 これを聞いたリエラが落胆した顔をする。

 いやいやリエラさん。こんな無謀すぎるバカがアンブロシアなんて見かけたらもう、こんなとこに居ずに帰って来ませんよ。

 その場で絶対研究始めるだろうし。


 と、ネッテたちが話しあっている間、バズ・オークが何やらしきりに鼻をヒクつかせている。

 しかし、敵意を感じ取れないようで、珍しく首を捻っていた。

 気になったのでアルセを連れてバズ・オークの前にやってくる。

 アルセに首を捻って貰うと、バズ・オークはそれを何してるの? という意味に取ったようで、ある一点に指先を向けた。


 アルセをバズ・オークに任せ、僕は一人でそちらを見に行く。

 もしも危険な魔物が居た場合はアルセを連れてきたら危ないしね。

 バズ・オークに任せておけばまず安全だろう。マーブル・アイヴィもあるしね。


 そうして叢掻き分け向った先には、見覚えのある物体。

 ウサギのようにとがった耳、雪だるまのような体躯。ふさふさの毛並みに覆われた丸い尻尾がヒクヒクと揺れている。黄色い毛並みに耳についた可愛らしいリボンが特徴的な生物。


「にっちゃう・つう゛ぁい居ちゃった!?」


 僕は思わずそれを見つけて叫んでいた。

 まぁ、どれだけ叫んだところで誰にも気付かれないんだけどね。

 そして見つけたにっちゃう・つう゛ぁいは僕に気付くことなく周囲を見ている。


 何をしているのかとしばらく見ていると、急に全身の毛を逆立たせた。

 淡い光に包まれるにっちゃう・つう゛ぁい。

 何コレ、何コレっ!? なんか神秘的なんですけど!?


 気のせいか、周囲の森から緑色に光る何かがにっちゃう・つう゛ぁいに集まって行くのが見える。

 そしてしばらく、緑色の光を吸収しきったにっちゃう・つう゛ぁいは、ぴょんぴょん飛び跳ねる。

 どうやら自身の身体の動きを確かめているようだ。

 近くの木に軽い体当たりをして跳ね返って別の木にぶつかる。

 一人ピンボールを始めたにっちゃう・つう゛ぁい。ちょっと面白い。


 しかし、その音を聞きつけたらしい生物が、にっちゃう・つう゛ぁいの楽しい時間を奪い去った。

 現れたのはどう見ても化け物だ。

 いや化け鳥だ。

 大きな嘴にギョロ付いた目。彩り豊かなカラフルな体毛を持ち、二足歩行で現れると、鳴いた。


「タスケテ――――ッ」


 ……は?

 え? 今の、あの鳥から出た言葉だよね?

 野太い男の悲鳴のように聞こえたんだけど。

 まるで九官鳥などのように言葉を喋るその巨大な鳥は、にっちゃう・つう゛ぁいに向けて口を開く。


「タスケテ――――ッ」


 やっぱりあの鳥だ。

 怖い。あの声はない。助けに向う気にもならなくなる。

 いや、実際にはあの声を聞いた人間が助けに来たところを食べたりするんだろうけどさ。

 せめて女の子の声っぽくね……その……


「タスケテ――――ッ」


 ああ、いや、もう、いいや。

 とりあえず、こっちには来ないように皆を誘導しないと……

 と思った瞬間だった。


 にっちゃう・つう゛ぁいが小さく小さく地面に縮小した。

 何をする気かと思ったその刹那。

 バズーカでも発射されたのかと思う程のありえない音と共ににっちゃう・つう゛ぁいが視界から消えた。


 後に残ったのは抉れた地面と、胴体に風穴を作った化け鳥だけだった。

 森の中へと飛んで行ったにっちゃう・つう゛ぁいはどこまでいったのかすらわからない。

 ただ、呆然とする僕の前で、化け鳥が静かに倒れた。ついでに射線上の木が数本、音を立てて倒れた。

 僕はこうして、にっちゃう・つう゛ぁいが恐れられる理由を知った。

 ミクロン

  クラス:宮廷魔道書士

 ・長い髪にメガネを掛けている男性。ずぼらな性格ながら、森に入るため臭いを消すことに。久々に風呂に入ったようだ。

  只今草や土などの臭いを擦りつけ迷彩中。

  新種魔物のスケッチブック所持。絵は結構上手い。

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