その失意に暮れる彼女の慰め方を、僕らは知らない
前回までのあらすじ、ジェーン・ドゥが襲ってきた。
バグ弾当てたら全裸になった。
ステータスがバグりました。
「ちょ、ちょっと、何よコレぇ!?」
僕が図鑑を見せてみると、案の定、ジェーン・ドゥことアカネ・トドロキは絶叫していた。
ちなみに、僕のバグ弾喰らって手に入った能力というか、バグった能力はこれ。
オラクル:幼女の神からの啓示を受け取る祝福。
うん、これは見たことあるよ。あの神父さんの能力だ。
装備解除:魔法を唱えると装備が全て解除されます。
これが原因のようです。彼女は魔法を使おうとすると全裸になるようになりました。
全裸魔法少女です。魔法少女の新たなジャンルを開拓しそうな勢いです。
物理吸収:物理攻撃を無効化、吸収して体力に変換する。
ある意味無敵になりました。物理ダメージ全吸収とか、酷過ぎる。
バグの恩恵ですね。
聖属性激弱:神聖属性の攻撃に対し激烈に弱くなる。
これはバッドステータスです。神聖属性に弱いって……アンデッドじゃないんだから。
ふるふる震える彼女も同じことを思ったのだろう。
「アンデッドじゃないのよぉっ!?」
四つん這いになって黄昏てました。
可哀想に。
そして種族スキルは四つもバグが追加されてるらしいです。
バグ弾の威力は弱めにしたのにここまで酷いとは。
自分解放・改:衣服を脱ぎ去りありのままの姿を相手に見せる。全能力+補正。
おそらくロリコーン紳士とかが持ってる自分解放の上位スキルだろう。
全能力がアップするとか便利ではあるけど、彼女にとっては死にスキルになりそうだ。
悪夢再び:戦闘中に限り、一度死んでも完全復活する。
ロウ・タリアンが持ってたね。あの悪夢は思い出したくもないよ。
でも、死亡しても復活できるのは便利ではあるよね。
これがこの世界のいいところか。
ぷにぽよん:ぷにんと柔らかくぽよんとした抱き心地。人肌温度で冬もあったか。
ああ、ついに証明されてしまったよ。スキル盗みでにっちゃうから盗んだら、このスキルが手に入ってしまうということですね。
ちょっと抱き締めていいですか? いえ、欲望ではなく知的好奇心なんです。本当ですよ?
絶倫:殆どの男たちが夢見る能力。
ちょっ、おま……
これ、女性が持つべきものじゃないでしょうよ!?
「治しなさい、治しなさいよこのエロバグぅっ!!」
僕に走り寄って来たジェーン・ドゥいや、もうアカネさんでいいか。
アカネは僕の首を引っ掴んで前後に揺さぶった。
首が締まってる。締まってますよ。タップ、タップ!
「ふざけないでっ! なんてことしてくれたのよ! これじゃ魔法打つたびに全裸になるじゃない! 男共の前で露出しろっての! このバグがっ、バグキャラがぁっ!」
死ぬ、死んでしまう……
「ああもうっ、神なんかの言葉を律義に守るんじゃなかったわ!」
べしっと僕を投げ捨てるアカネ。憤慨したように空を見上げて地団駄踏みだした。
「折角異世界に転生したっていうのに、チート無双してたのに、バグ調査お願いとか言われて、やってみればこれよ! 私がバグらされたらどうにもならないじゃないのよっ!」
ああ、これがこの娘の素なんだね。
我の強い人らしい。僕にはちょっと……合いそうにありません。
「このバグなんとかする方法はないのっ! あ、そうだわ……じゃない、そうですわ。オラクルを使えばきっと!」
まだ混乱中なのだろう。
僕を放置してオラクルのスキルを起動。
魔力が蠢きスポポポポーン。
「きゃあああああああああああああああああああっ!?」
うん、これはイカン。けしからんですよ。どげんかせんといかんとです。
カシャカシャカシャカシャ
ダメだ。脳内接写が止まりませんっ。
服を集めたアカネは僕を睨みつけながら服を着る。
羞恥心さえ克服すれば強力な魔法使いになりそうですが、いえ、なんでもありません。無理ですね、はい。
「絶対殺す」
「勘弁してください」
僕は思わず返すが、やっぱり意思疎通はできないらしい。
それでも、もしかしたら筆談が?
と紙にはじめましてと書いて出してみる。
「何コレ? 暗号? 古代ルーン文字か何か?」
……こいつも異世界人かよっ!? 真の日本人はどこに……
惜しい。ニアピン賞とかいらんのです。
意思疎通が出来そうなのはやはりクーフしかいないのでしょうか。
忘れてたのが痛い。
もしかしたらクーフと文通出来てたかもしれないのに。
「仕方ありませんわね。オラクルのお告げじゃ、あなたがこのバグを解除する切っ掛けとでましたし、今はまだ殺さないでいてあげますわ。これで勝ったと思うなよっこのエロバグッ!」
わざわざ見逃してあげましたみたいに言われ、アカネはそのまま逃げるように去っていった。
ふぅ、なんとか危機は脱したようです。




