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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五部 第一話 その貴族の悪意を奴は知らない
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その魔女の正体を、皆は知らない

 にっちゃうがピンチだ!?

 これはマズいとアルセソードをポシェットから抜こうとした僕だったけど、ジーンたちは下卑た笑みを浮かべるだけで追撃はしてこなかった。


「魔物風情がどうこう出来るとは思えねぇな」


「そういやぁそうか。魔物の言葉分かる奴なんざいないしな」


 ジーンとオーギュストは笑い合う。

 ホントこういう悪役って今まで居なかったから新鮮だよね。


「それより、リエラを手に入れたら味見させてくださいねオーギュスト様」


「ほんと、お前は変態だな。まぁ好きにしろ、ただし、壊すなよ」


「ふふ、楽しみだわ」


 リアッティはリアッティで危ない人だな。


「あ、あの、それで、そこのにっちゃう殺さないんですかい?」


「アンディ、仮にもクラスメイトだ、口封じに殺すにも外聞が悪い。まぁ魔物一匹殺したところで問題は無さそうだがな。そうだ。お前がやれよアンディ」


「あ、あっしがっすか!?」


 戸惑いながらもオーギュストに急かされアンディが剣を引き抜く。

 これはマズい。

 にっちゃうも闘わざるをえないと知って魔法を……


「何を、してるのあなたたち?」


 不意に、物蔭から女性が現れた。

 あまりにもタイミングのいい出現だ。

 しかも……ジェーン・ドゥ!?


「いや、魔物が街中にいたのでね。大事になる前に退治しようと……」


「あら、にっちゃう程度で大事になるはずないでしょう? それに、これ、マイネフラン王国王族のテイムモンスターよ、殺したらあなたたち大犯罪人ね」


「なっ!? 王族の飼い魔物!?」


「チッ、行くぞお前ら」


 ジーンが忌々しげににっちゃうに舌打ちし、四人が去って行く。

 本当に、タイミングいい暴露だよねジェーン・ドゥ。

 ゴスロリファッションの少女は優雅に日傘を差してにっちゃうに視線を向ける。


「お邪魔だったかしら? まぁ、あなたたち・・・・・なら圧倒出来たでしょうし、入らぬお節介だったわね」


 今、やっぱりあなたたちって言った。にっちゃうしかいないはずのここで、僕を数に含めやがった!

 この人、僕を認識出来てる!?


「初めまして新種のにっちゃう。そして、見えない誰かさん」


 にこやかに微笑む彼女に、僕は何故か背筋がゾクリとした。


「ここは場所が悪いわ。少し、ご一緒してくださいます?」


 にっちゃうはこくりと頷く。

 僕としては帰りたいんだけど……行かない訳にはいかないらしい。

 僕らはジェーンさんに付いて行って郊外の人気がない場所へとやってきた。

 うーん、ここで少し前にドンパチでもあったのかな。所々焼け焦げたり破壊された家屋とかが散乱している。


「まずにっちゃうさん、折角魔法が使えるのですから、ああいう輩には問答無用で迎撃すればいいのですわ。こういう風に」


 と、フレアバレットだっけ? ラ・ギの魔法を無数に作りだして空中待機させ、順次打ち出して……って危ねぇぇぇぇぇぇぇっ!?

 ジェーンさんは何を考えているのか僕に向って連弾を叩き込んできた。

 慌てて逃げるが間に合わないと踏んで、ポシェットからネフティアの柩を取り出し盾にする。


「な、何するんだよ!」


 叫ぶけど、僕の声は彼女に聞こえてないらしい。


「とある方から聞きましたの。この世界にはバグがいる。放置はしているけどあまり浸食が酷いようなら、消去して構わないよ……とね」


「か、神様ェ……」


 多分あの自称神だ。


「最初は半信半疑でしたが、ゴブリン討伐からここまで、あなたのいる近辺の変化が著しい。極めて危険な存在ですわ。これはもう、消去しておくしかありませんのではなくて?」


 理論無茶苦茶です。いや、バグを消すというその主張、否定できないけどさぁ!?

 というかにっちゃう。その魔法どうやって使うの? みたいなきらきらした目で見てないで助けて!?

 認識してないわけじゃないでしょ!


「ツッパリの魔王化、エルフの魔人化、ニンゲンたちもかなり変化してるわ。魔王を倒せる実力者が二人以上いるパーティーなんて稀を通り越して奇跡よ。まさに英雄製造機。でも、分かっているのかしら? それだけ強力な仲間を作れるという事は、あなたの意思次第では世界を混沌に導くこともできる。なにより意図せず周囲を暴走させるあなたは危険の塊ですの」


 炎の連弾を絶え間なく叩き込みながら近づいてくるジェーン・ドゥ。まさに死神だ。

 これはマズい。にっちゃうのピンチがどうこうといってる場合じゃない。僕の方がピンチです。

 何かないか、ここでこの人から逃げ切る一手、何かないか!?


 !? そうだ、アンブロシアの実! 種を取り出して……くらえ!

 地面に種が埋まったその刹那、急激に成長したアンブロシアツリーが出現した。

 炎の連弾がアンブロシアツリーを焼きつくした。

 ……現状、維持です。


「ふふ、無駄な努力は止めて死になさい。アカネ・トドロキ。それがあなたを屠る女の名よ」


 この人、転生者かよっ!? 今知らされてもどうでもいいよっ!

 誰か、誰か助けてっ、アルセーっ。リエラーっ。にっちゃーん!

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