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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五部 第一話 その貴族の悪意を奴は知らない
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そのパーティーの厚かましさを、僕らは知りたくなかった

「よぉリエラさん。今日もパーティー一緒に行かないか?」


 なんか勇者っぽい出で立ちの男がやってきた。

 丁度昼休憩に入ったので学食に来た僕らに、そいつらは無遠慮に話しかけて来たのである。

 アルセがシチューっぽいのを食べながら頭上の蕾を躍らせているところです。

 邪魔しないでいただきたい。シャッターチャンスなんだよ!


「あ、オーギュストさん。最初の授業はお世話になりました」


 リエラがそんな事を言う。ああ、そういえばちらっと見たなこのメンツ。

 オーギュストの左右には揉みあげの長いへこへこした男と魔法使いみたいな女性がいる。

 うーん、ちょっとリエラには向ないパーティーだぞ。

 なんかこうして見るとニセ勇者パーティーって気がしてくる。


「皆さん初めまして、俺はオーギュスト・デン・トルーミング。こいつは護衛のアンディとリアッティだ」


「初めまして初めまして初めましてアンディっていいます、これはもうご贔屓によろしくお願いしますです、どうぞよろしくお願いします。なにとぞよろしくお願いします」


 すっげぇ腰低っ!? そしてしつこい。


「リアッティよ。よろしく」


 こちらは妖艶なお姉様タイプだ。

 そんな彼女はリエラに視線をロックオンして……舌舐めずり。

 何故か知らないけどリエラが物凄くぞぞぞっと身震いしていた。


「あーその、御免なさいオーギュストさん、既に私、こちらの方々とパーティー組んじゃいまして」


「そう、なのかい?」


「初めましてオーギュスト王子、私はチグサ。チグサ・オギシマといいます。こちらは私が護衛をしているケトル・エーゲ・フィグナート。リエラさんとパーティーを組ませて頂いてます」


「ほぅ……」


 何故だろう。その時チグサとオーギュストの間で火花が散った気がした。


「まぁ、今回は諦めよう。でも、またよろしく頼むよリエラさん」


「は、はぁ。またいつか……」


 そんな会話が終わるとオーギュストたちが去って行く。

 彼らを見届け、リエラははぁっと息を吐いた。


「どうかしたんですの?」


「ちょっと、苦手で。最初に声を掛けてくださったので最初の薬草の授業は一緒に受けたんですけど。オーギュストさんは凄く質問攻めで話しかけて来るし、背後からはリアッティさんの視線を物凄く感じるし、アンディさんは凄く腰低くて話にくいし……」


「ああ、それで私達の誘いを簡単に受けたのですか。私達としてはこうして皆さんと知り合えてよかったですけど……ねぇケトル様?」


「ん。にっちゃうもふもふ」


 なんか、さっきからにっちゃうを抱えてると思ったら、そういう理由ですか。

 いんてりじぇんすにっちゃうたちはさっきまでどこかに行ってたんだけど、直ぐに帰って来たのだ。にっちゃんや葛餅が一緒だったから万一はないだろうけど、皆珍しい魔物には違いないからなぁ。気を付けてくれよ皆。


 それとケトルさんや。あんましにっちゃうを構わないであげて。君のお兄さんが遠い場所から凄い怨嗟の視線向けて来てるから。

 これ、全てにっちゃうに向けられてるんだぜ。

 俺の妹に気に入られるとは何事だぁ。みたいな感じだろうか?


「のじゃ」


「ああ、もう、のじゃ姫ちゃんダメじゃない」


 ずずっとシチューをすすったらしいのじゃ姫。満足そうに鳴いて顔を上げると、口の周りが白くなっている。

 それをナプキンでいいのかな? なんかタオルッぽいのが机に置いてあったので、それでリエラがのじゃ姫の口元を拭いていく。


 んー、なんか普通に新しいパーティーが出来つつあるなぁ。

 カインたち大丈夫だろうか?

 ……あ。ネッテが来た。


 面倒臭そうにやってきた彼女は、食堂の一角でイチャコラしていた王子とルルリカを見付けて近づいて行く。

 また修羅場の予感です。

 というか、なんか、これ、フラグ建てていってませんかね?

 このままだと悪役令嬢とかの基本エンドに入りそうな気がします。


 特にあの後方から迫るネッテの気配に気付いたルルリカのあくどい笑み。どうみてもネッテを嵌めそうな気がする。

 あ、ネッテにわざとぶつかる様に身体の位置替えやがった。カシャッ

 結果、避ける暇がなかったネッテとルルリカがぶつかり、ルルリカが盛大に前倒しになり机に顔を打ち付ける。オーバーリアクション過ぎる。

 しかも、なぜか机がベギッと折れて彼女の真上から食事が襲いかかった。


 すっごい大惨事だ。しかもこれ、自作自演なんだぜ?

 ルルリカはパスタ塗れで突っ伏しており、ネッテはもはや放心状態。

 一体何が起こったのか理解してない顔です。


 ランスロット王子はというと、ルルリカに襲った不幸、(自作自演)を見せつけられて呆然としていたが、はっと気付いて叫ぶ。

 「ル、ルルリカァァァァァっ!?」と、絶望じみた叫びをあげていた。

 これで注目を集めるネッテ。

 結果だけを見た皆は疑惑の視線をネッテに向ける。


 ネッテがわざとルルリカの肩を押して盛大に倒れさせたと誤解したのだ。

 しかも、机を壊す程の勢いで。

 ルルリカはピクリとも動かない。


 御免なさいルルリカさん。そんなことを告げようとするより早く、「どけッ!」とランスロット王子に叫ばれ、ネッテは思わず身体をどける。

 ルルリカを抱え上げたランスロット王子は急いで治療室へと向って行った。


 うん。完全に嵌められましたなネッテさん。

 証拠写真は撮れたけど、さぁて、これ、どうやって皆に伝えよう?

 オーギュスト・デン・トルーミング

  種族:ニンゲンF クラス:トルーミング王国第四皇子。

 ・トルーミング王国の王子。リエラが欲しいらしい。


 アンディ

  種族:ニンゲンC クラス:斥候

 ・腰の低すぎる護衛。ただし実力は半端ないらしい。

  

 リアッティ

  種族:ニンゲンB クラス:魔術師

 ・妖艶なお姉様。女性が好きらしい。リエラを狙っている。

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