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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五部 第一話 その貴族の悪意を奴は知らない
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その生物が来ていたことを、僕らは知らなかった

「はぁ……なんか、アレを正気に戻すのは無理そうね」


「ランスさんでしたっけ。こちらから婚約破棄とかできないんですか?」


「お父さんが告げる分には問題無いんだけど、一応相手は王子だし、正妻以外にも側室を娶ることは別に問題無いのよ。私以外に熱を上げてるから婚約破棄しますっていうのは無理ね。まぁ、向こうからそのうち言ってきそうではあるけど、コイントス国が心配なのよね」


 ネッテさんの心配ごとはランスではなく向こうの王国らしい。

 多分お世話になったとかなのだろう。


「ま、現状維持ね。学園に許可は貰ってあるから自由に会いには行けるのよ。国からなんとかしてほしいって言われてるし、嫌だけど会いに行かないと」


 なんというか、苦労してるなぁネッテ。

 本人の心情としては早いところ別れたい。だろうね。

 王族って大変だなぁと思う僕たちに、そいつらは近づいて来た。


「み、見つけたっ。ネッテさん!」


「良かった、見つかった!」


 聞こえた声に視線を向けると、息も絶え絶えに走ってきたバルスとユイアが駆け付けて来た。

 おお、二人はマイネフランに引き籠ると思ったのに、なんでまたコルッカに?


「どうしたの二人とも。というか、コルッカに来てたのね」


「はい、向こうで強制依頼を受けて、その……」


 バルスが申し訳ないといった顔で俯く。

 なんだ? 何かあったのかな? 彼らが急いで来るってことは……

 まさか、バズたちに何かが!? また裏番長が現れたとか!?


「ワンバーちゃんが、ワンバーちゃんが少し目を離した隙に居なくなって、何処を探してもいないんですっ! 会いに来てませんか!?」


 は? ワンバーちゃん?


「えーっと、何? どういうこと?」


「おーい。リエラ、学校終わったのかー?」


 カインとメリエも戻ってきたらしい。


「カインさんっ。大変なんです、ワンバーちゃんが!」


「へ? ワンバーカイザーなら少し前プリカが持って帰ったぞ?」


「え?」


「ん?」


 何の気なしに告げるカイン。

 その言葉を聞いて愕然とするバルスとユイア。

 数瞬、時が止まったかのような顔をしていた二人だが、即座に回復してカインに食ってかかる。


「なんてことしてくれてるんですかっ!? 私達、のじゃ姫にワンバーカイザー届けるって強制依頼受けてたのにっ!!」


「えええっ!? やっぱアレ、散歩じゃなくて逃走だったのか?」


 カインの奴、何となく察していながら気付かないふりして放置したな。

 しかしワンバーカイザーか。

 さすがにプリカの元に放置したのは酷かったかな。

 魔王だし嫌ならそのうち脱走するだろうから大丈夫かと思ったんだけど。


「のじゃ……?」


 今の話、本当か?

 そんな少女の泣きそうな声が聞こえた。

 気付けば、リエラ達が帰って来ない事に気付いた皆が迎えに来ていたようだ。


 のじゃ姫がよろめくように近づいてくる。

 倒れそうになった彼女を、即座に受け止める変態紳士。

 お嬢さん、大丈夫ですか? と彼女を助け起こすと、彼はキッとカインを睨む。


「え? 俺が悪いの?」


「折角会いに来ようとしたワンバーちゃんを連れ戻させるとか、鬼畜です」


「えええっ!?」


「でも、ここからエルフニアに戻るとなるとかなり時間がかかるわ。学校が始まる前だったら良かったけど、丁度今日から授業だし、休ませるのは……何のために学校に入ったのか分からなくなるし……」


 そんなネッテの言葉にアルセがなぜかロリコーン紳士に視線を向けた。

 ソレを察した紳士がコクリと頷く。

 え? なに、アイコンタクトですか!?


「フォッ」


 私が参りましょう。

 目元に溜まりだしたのじゃ姫の涙を指で拭き取り、紳士はにこやかにほほ笑んだ。


「のじゃ?」


「フォッフォ」


 ご安心くださいお嬢さん。あなたの元へ、必ず届けましょう。私は全ての幼女の味方です。

 アルセお嬢様からもお願いされては行かない訳にはまいりますまい。

 安心して、ご学業に従事していてください。

 そんな言葉を残し、紳士は彼女に背を向ける。


「フォ」


 バルス殿、ユイア殿、アニア参りますぞ。

 え? その二人連れてくの? ってアニアも!?

 意味の分かってないバルスとユイア、二人にアルセを連れて来た僕は、ロリコーン紳士に付いて行くよう、二人にジェスチャーをしてみせる。

 アニアの方は話を理解したらしく仕方ないなぁといった顔でロリコーン紳士のシルクハットを止まり木代わりに腰掛ける。


「え? なにアルセちゃん?」


「俺らも付いて行けって、いうのか?」


 やや戸惑う二人に、ネッテとカインが近づく。


「アルセのご指名だ。行ってくれバルス、ユイア」


「そうね。きっと二人の力が必要よ。お願い、もう一度、ワンバーカイザーとのじゃ姫、会わせてあげて。私たちからの指名依頼、受けてくれる?」


「ネッテさん……わかりました。バルス、行くわよ」


「あ、ああ。行こうユイア」


 こうして、再びバルスとユイアはマイネフラン方面へと向って行った。

 ロリコーン紳士がアルセの護衛から離れた。

 でも、多分しっかり観察してるんだろうなぁ。


 あいつがワンバーカイザー奪取してくれるまで、アルセを危機にはできないな。

 あいつアルセが危機になったら絶対こっちくるし。

 僕が頑張らないと!


 よし、こうなったら僕も男だ。徹底的にやらせて貰うとしよう。

 まずは武器屋と防具屋、あとこの町の貴族の家だね。厳重管理されてる骨董品とかになんかいい武器とかあるかも。聖剣やら聖鎧があればいいんだけどな。

 あ、でも盗品アルセ達が持ってたらいろいろ問題だからこれはダメか。

 なんかいい方法ないかなぁ……

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