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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五部 第一話 その貴族の悪意を奴は知らない
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その作戦が作戦になってないことを、僕は知りたくなかった

 動きの鈍った生徒たちが葛餅に意識を刈り取られて行く。

 リエラが現れた。

 葛餅とこうして敵対することは今回が初だろう。

 ゴクリと喉を鳴らしつつ、自分に掛かるバッドステータスを確認しながら葛餅へと突撃する。


「はぁっ!」


 木剣なのがリエラにとっては不安要素だ。

 そもそもが葛餅に効きそうにない打撃攻撃なのだからそれも当然だろう。

 さぁ来るがいい弟子よ。みたいにリエラの接近を待つ葛餅。


「アッパースイング」


 葛餅は避ける、かと思いきや、わざわざ彼女の一撃を喰らって空中へと跳ね上げられる。


「いくよくずもち。浮沈撃っ!」


 落下してくる葛餅を再び跳ね上げるリエラ。

 葛餅は、なんか楽しそうに空に上がっている。

 彼にとってはこの作戦も遊びのうちなのだろう。


「浮沈撃、浮沈撃、浮沈げ……あ」


 でも残念。ちょっと続けられて調子に乗ったリエラが手元を狂わせた。

 葛餅がぽーんと敵陣へと飛んで行く。

 そこには麻痺効果を受けて痺れている貴族側の生徒たち。


 当然、葛餅の恰好の獲物でした。

 できるならば闘い終わるまで葛餅を宙に浮かせておきたかったリエラだが、地面に落とされた葛餅の動きは凄まじかった。

 さっきまでが嘘のように動き回り、跳ね飛び、リエラに突撃して来る。

 慌てて剣を振るうリエラに触手を伸ばして剣を弾き、白兵戦を始めた。


 どうやら今回の作戦を機と見てリエラと模擬戦をするつもりらしい。

 最大戦力がリエラに掛かりきりになったので、ある意味リエラの思惑通りになったともいえるのだが、最大戦力が動かずともすでにアルセチームの有利は揺るぎそうにない。


「敵は麻痺ってるぞ、この間に突撃!」


「勝ってる勝ってる。なんだこれ、すげぇ楽」


「待て、出すぎだ皆、戻れ!! 奴が来るぞ!!」


 闘いに勝利して浮かれる生徒たち。だが、そこへ突撃して来る無数の侍たち。


「のじゃー!」


「「「「「「「「「「ござる!」」」」」」」」」」


 獲物を刀から木剣に変えて、殿中でござるの群れが生徒たちに襲いかかった。


「これってアリなの!?」


「こいつら……倒してしまっても構わんのだろう?」


「押せ押せ、アルセちゃんに指一本触れさせるなぁっ」


「まるで実戦だな」


「命のやりとりがないってだけで戦争だろ。無駄口叩いてると無力化されるぞ!」


「ぐあぁ、クソっ、構うな……俺の屍を越えて行けぇ――――っ」


「ランドリーーーーック」


 さすがに殿中でござるは冒険者見習いたちには強い敵だったか。

 次々に討たれ始めるアルセチーム。

 これはマズい。そう思ったけれど、まだ終わりじゃなかった。


 無言のまま、藍色の髪が風に靡いた。

 木剣を手にした青白い肌の少女が戦場を駆け抜ける。


「のじゃっ!」


「……っ」


 ネフティアの参戦。

 襲い来る殿中でござるたちを木剣で打ち倒して行くもう一人のエースアタッカー。

 のじゃ姫とネフティアの視線が交錯する。


「のじゃ姫なの、じゃー!!」


 まるで自分と相手しろ。とでもいうような声に、ネフティアも反応した。

 彼女に向けて走り寄る。

 騎馬に徹していた無礼でおじゃるたちがのじゃ姫を降ろして木剣を抜いた。


「「「おじゃる!」」」


 無礼でおじゃる三人対ネフティア。

 また凄い対戦だなこれ。……あれ? これってただの授業風景だよね?

 僕は思わずボナパルト先生を見る。

 真剣な顔で表情を崩さないが、一筋の冷や汗が流れているのは気のせいだろうか?


 多分、戦術無く争い合う二チームに戦術とはこういうモノだ。みたいに次の時間教え込もうとしていたのに、普通に戦術使った戦争になってるうえに個人の戦力が高すぎるので、この後どうしよう。とかちょっと焦っているとみた。


「今度の生徒は優秀だな……」


 呆れた顔で小さく呟いていたのは、気のせいだと思いたい。

 だって、彼の背中が幾分煤けていたから。


「クソッ、どうなってるんだ! 全員で蹂躙すれば楽勝だろう! なんで膠着してるんだ!」


 貴族の男が思わず叫ぶ。苛ついているのだろう。頭を掻き毟るその姿は焦燥感が滲んでいる。

 隣の女生徒はむしろ感心したように戦場を見ていた。

 目敏くアレにも気付いたらしいけど、誰にも言う気はないらしい。


 そう、陽動部隊がいるということは、別動隊がいるわけだ。

 いんてりじぇんすにっちゃうが提案したその作戦が、ついに牙を剥こうとしていた。

 遥か遠くを回って敵陣へと近づいていた一団、その中に、その少女は居た。


 アメリス=フィラデルフィラル。

 彼女はお供にレックスを含めた数人と共に戦場から離れた一角に向うと、手に持っていた黄色の毛玉を地面に設置した。


「にっちゃん。いっけぇぇぇ!」


 ご主人様の声に反応し、にっちゃんがたわむ。

 そして次の瞬間、グバンッ。

 地面を抉り飛ばし発射された最速の砲弾が、貴族チーム側の旗をモノの見事に粉砕したのだった。

 コイツ出て来たらもう、策とか全く関係ない気がします。合掌。

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