その薬草に隠れて生えてた草が何かを、誰も知らない
「おーし、お前ら全員来たな」
人数を数え終えたワグナート先生は満足げに頷くと中庭に視線を向けた。
「ここが薬草学で使用するフィールドだ。広さ的には大してないが、多種多様の雑草が適当に生えている。毒草もあるから気を付けろ」
毒草とか普通に栽培していいのかね……って、ジギタリスっ!? ジギタリスが普通に生えてる!?
トリカブトですよ!!? こっちにあるのは朝鮮朝顔!? こっちがドクゼリ!? その横に普通にワサビが生えてます。
小川が通っている中庭はもはや混沌と化した草たちの楽園だった。
この辺りは雑草かな? といった場所に近づいたワグナート先生はおもむろに草を二つ引き抜いた。
そして皆に見せる。
ふむふむ。微妙に右の方がギザギザしてて、左の方は丸みを帯びてるね。
ヨモギに似たのが右の方かな? 左はその類似品か。
「右のが薬草。左が毒草だ。これからパーティーで四つ、薬草を集めて来い。集めたら俺んとこ持ってこい。そら、解散」
放任主義な先生は、それだけ告げるとその場に突っ立つ。
ぱんっと手を叩くと、蜘蛛の子散らすように学生たちが動きだした。
アルセ達は……お、さっそく近くのクラスメイト達と共に真下の雑草から探している。
「えーっと、これか?」
「レックス、それ毒草。こっちよ」
「おー?」
「あら? アルセが首を捻ってますわよ? それ違うのではなくて?」
「ふむ。さすがに魔物は違いが分かるのか。それは麻痺草だ」
アルセの一団に気付いたワグナート先生が感心したように近づいていた。
凄いな。僕も薬草との違いに気付かなかった。
「良く見ろ。麻痺草の方には双葉が付いているだろう。これは薬草には無いモノだ。あと微妙にだが麻痺草の方が細身だ」
「一目でわからないと思うぞこれ」
「では先生、こちらはいかが?」
「ああ、それは……煎じて飲むと謎の鈍痛に悩まされる鈍痛草だな。つか全く似てないだろ。適当な草引っこ抜くんじゃねぇよ」
「あら、ごめんあそばせ」
アメリスはクスリと笑みをこぼして薬草採取に向う。
お、これそうじゃないかな? ほら、アルセこれ薬草だ……よ?
僕が見つけた草をアルセに告げようとしたのだけど、当のアルセは雑草だらけの一角に座り込んでいた。
おお、アルセ凄い。
その辺薬草だらけじゃん。
さっすがアルセ。よく群生地帯見つけれたね。
ついでに皆に教えてあげなよ。パーティーの皆にね。
「グギャアァァァァァ――――ッ!!」
なんか、アルセが草をむんずと掴んで引っこ抜いた瞬間、ヤバいぐらいおっさんの悲鳴が轟いた。
アル中で酔っ払ったおっさん自転車で轢いちゃったみたいな凄い声でした。
皆何の音!? とばかりにアルセに注目する。
そんなアルセは引っこ抜いた何かを食べてくっちゃくっちゃしていた。
ちょ、ちょっとアルセ? 何、それ何の草? というか何引き抜いたの? マンドラゴラ!?
それにしては致死の悲鳴じゃなかったし、おっさんの汚い声にしか聞こえなかったし。そんな奇妙なモノ食べちゃダメでしょ!?
「お、おい、今の、マンドラゴルァじゃないのか!? いや、まさか上位存在のマンドラドルァ!? アルセイデス、今何を食った!? どっちにしろ猛毒だぞ!?」
さすがに焦ったワグナート先生。
だけどアルセは素知らぬ顔でペロリと平らげ、しばらく。
おーっと健康ぶりをアピールしていた。
うん、どうやら今ので毒無効と毒追加、状態異常回復とかいうスキルを手に入れたらしい。
さすがアルセ、意味不明に進化しまくってます。
どうも今回の食物では状態異常回復血液みたいなのは追加されなかったようです。
逆に毒作れるようになりました。
つぼみの先端部が無駄に毒々しい紫色に変化していたけど、それ以外に変化は見られない様子だ。
アルセ……変なの食っちゃダメじゃないか。
僕はアルセに歩み寄り、近くの薬草を摘んで彼女に持たせる。
困ったのはワグナート先生だ。
何を食べたのかはわからないので保健室に連れて行くべきか、それとも様子見で放置していいものかとおろおろしている。
堅物そうな冒険者だけど、面倒見は結構いいらしい。
なんかごめんね先生。
当のアルセは薬草を片手におーと嬉しそうに踊り狂っていらっしゃるけど、まぁ可愛いからいいか。
そんなアルセの様子にまぁ、アルセだしいいか。とさっさと諦めたらしいワグナート先生。生徒たちの持ってきた薬草を確認しながらダメだししていた。
そしてネフティアが薬草を持ってくる。いや、違う。それ毒草ですよネフティアさん?
のじゃ姫を見ろよ。既に薬草人数分摘んでのじゃのじゃと友達づくりに勤しんでるよ。
って、にっちゃうと葛餅は何してるの!?
にっちゃうが頭に薬草を乗せ遊んでいる、その横では体内に幾つもの草を取り込み内部で混ぜ込んでいる葛餅さん。
なんか、液状化してきてますよ。ポーションでも作る気かい?




