AE(アナザーエピソード)その犬の冒険を僕は知らない5
本日二話目です。
学園都市コルッカ。
冒険者ギルドに着いたバルスたちは依頼を受けるフリをしながら周囲に視線を走らせる。
ユイアに抱き上げられたワンバーカイザーから香しい匂いが漂う。
まさに飯テロ。
今から冒険にでようとしていたパーティーが一斉に振り向く。
視線を集めるバルスたちはちょっと居心地が悪そうだが、むしろ一番に身の危険を感じているのはワンバーカイザーである。
丁度帰って来て一杯やるかと噂していたパーティーも、この匂いにやられたらしく、今日は肉が良いなとか呟いている。
と、厳つい男で構成された三人パーティーが近づいて来た。
「よぉ嬢ちゃん。美味そうな匂いさせてんじゃんか。いくらだ?」
「はぁ?」
「その魔物、いくらで売ってくれる?」
「食わせてくれよ。金なら払うからよぉ」
「美味そうだなぁ、グヘヘ」
最後の一人は丸々太った男で、ワンバーカイザーを見て涎を垂らしている。
さすがに身の危険を感じたワンバーカイザーはグルルと唸りをあげる。
ユイアも危険を感じてワンバーカイザーを隠すように身を固めた。
「おい、そこ。ギルド内で問題起こす気か」
「はぁ、違ぇよアレン、俺らは美味そうな犬を食わせてくれねぇかとだな」
「ペットを金で売って食べさせるとか、誰がやるんだ誰が。おまえアメリス嬢にそれ言えるのか。にっちゃうつう゛ぁいが美味そうなので金払うからくれってよ」
「おまっ、アホか。何が悲しくて即死フラグ建てなきゃならねぇんだよ!」
「今、建てようとしてんじゃねぇか。そのワンバーカイザーっつぅのか? クラス魔王だぞ」
「「「「「魔王!?」」」」」
若い男が現れ男達を牽制するようにバルス達と男達の間に割入る。
そして想定外の暴露を行った。
ワンバーカイザーと若い男、アレンを見比べる男達。
「これが、魔王? 嘘だろ?」
「ただの美味そうな食糧じゃねぇか」
「よぉワンコロ、お前、こいつらと闘って勝てるか?」
「ワンッ!」
アレンに聞かれ、ワンバーカイザーは答えた。
こんな奴ら、あの悪魔に比べればどうという事はない。
そうだ。こんな奴らに食べられるくらいなら、踏み潰してくれる!
「だそうだ。折角だし郊外で対戦してみたらどうだ? ワンコロ、お前手加減できるか? こいつら殺さず制圧するんだ」
「ワンッ!!」
今度は強く頷いて見せる。
任せろアレンとやら。我が実力を存分に見せてやろう。
そんな気分であった。
せっかくなので、と暇を持て余していた冒険者たちがアレンに付き従ってコルッカ郊外へ。
バルスとユイアも困った顔をして大丈夫かな? とワンバーカイザーの横を歩いているが、さすがにこの冒険者たち相手にワンバーカイザーを守れる程の実力も無く、アレン任せにするしかないようだった。
郊外に辿りつく。
まだ外にまでは出てないが、家が全くない開けた荒野だ。
少し街中へと向うと家があるのだが、この付近にだけは何も無い。
「ここは?」
「ああ、俺らが良く練習とかに使ってる場所さ。冒険者が自由に訓練出来るように家も建てずに放置されてるんだ。時々冒険者学校の奴らも使ってるみたいだぜ」
アレンはそう言うと、付いて来た冒険者たちを遠ざけて行く。
男達三人パーティーと、ワンバーカイザー、その付き人のバルスとユイアを残し、かなり距離を開けた彼らは、完全な見物人になるらしい。
「ほれ、そこの冒険者二人も下がった下がった。ワンバーちゃんだっけか、こいつの実力がだせねぇだろ」
ワンバーちゃんいうな。ワンバーカイザーは不満そうに唸りながらも相手となる冒険者三人を見る。
自分が闘った冒険者たちと見比べると顔は凶悪だ。
だがその実力は、武器を構える姿から、前の冒険者たち、カインパーティーとは全く違う格下だと思われる。
自分は恐ろしい悪魔、プリカと闘ったのだ。
あの時の生きたまま自身を食われる恐怖に比べれば、強面の男三人、何するモノぞ。
そうだ。あいつに比べたら、こんな奴らに負ける気がしない!
「んじゃ、始め。どっちも相手を殺すなよ~」
気の無いアレンのことばで男達三人は戦闘体勢に入る。
一人は剣士だ。トゥハンデッドソードを両手で構えニヤついた笑みを見せる。
一人は重戦士。巨大なハルバードを両手で持って口元からは涎を垂らす。デブった身体がブルンと震えた。
一人は魔術師。詠唱を開始している。その言葉とは似合わない失敗顔が何ともいえない。
そして対するワンバーカイザーは男達を見据えたまま、小型化を解除した。
むくむくっと巨大化して行くワンバーカイザー。
その威容、隠していた戦闘力、威圧、全てが男達の動きを止め、ただただワンバーカイザーを見上げる観衆となるのを彼は気付いちゃいなかった。
さぁ、始めようニンゲン共。
ワンバーカイザーの咆哮と共に魔王闘気が解放された。




