その変態がなぜ脱いだのかを、彼らは知らない
「フオオオオオオッ!」
ばさりと衣服が宙を舞った。
夕闇が広がる空に高々と舞い上がるスラックスと下着。ブリーフではなくトランクスだ。
……???
スラッ……クス? トラン……クス?
「ちょぉっ。何で脱いだの変態ッ!?」
「「き、きゃああああああああああああああああああああ!?」」
「いやあああああああっ変態っっ」
気付いたネッテが思わず叫ぶ。それに反応したユイアとメリエの悲鳴が重なる。リエラは悲鳴と共に罵った。
「おー!」
「のじゃぁ……」
そして楽しげに笑うアルセと呆れた息を吐くのじゃ姫。
ネフティアが変態を見てグッと親指を立てる。
そしてアニアが顔を両手で隠しながら掌を開く。指と指の間からしっかりと見てやがる。
何が起こったかと言えば、まぁ、御察しでしょう。
変態が、全裸になりました。
裸一貫。むしろ恥じる物など何も無しと告げるように、ロリコーン紳士は胸を張る。
メニスが若干気圧されているのは相手の不敵な態度か? それとも変態だからか?
ホント、コイツ変態過ぎる。
滾って来ましたぞとか、どういう意味だと問いかけてやりたい。
素早い踏み込みでロリコーン紳士が突撃。
対応するように真横からスイングされるハンマー。
それを、なんとステッキ一つで圧し留めた。
「キュゥ!?」
「フオオオッ!!」
タタンッ。とステッキがぶれた。
なんだ? と思った次の瞬間、突如ハンマーがステッキの先を中心にして無数の亀裂を走らせる。
こ、これはまさか……物質の中心にダメージを重ねることで粉砕するというあの妙技を……
次の瞬間、ハンマーが音を立てて破壊された。
自分の持っていた重量武器が一気に無くなったことに気付いたメニスが驚きバランスを崩す。
そんなメニスの隙を、変態が逃すはずもなかった。
百枝刺しが発動する。
叫ぶロリコーン紳士が、突く突く突くっ。
メニスの悲鳴とも付かない絶叫が迸る。
変態に突き殺される賞金首。うわぁ、なんかとりあえず合掌しとこう。
僕としては全裸男に殺されたくもない。
なんて悲惨な最期。
メニスが倒れたからだろう。慌てたようにスマッシュクラッシャーたちが逃げて行く。
全く、あいつらも懲りないな。放っといたらまたリーダーが出てきそうだぞ。
「ふぅ。スマッシュクラッシャーは討伐依頼出しとくべきかしら」
「私としてはあっちの変態を討伐すべきだと進言しておきます」
沈痛な顔をするネッテとメリエ。
そんな二人のもとに、カインがやって来る。
「なんとか撃退したな。のじゃ姫、お前の御蔭で助かったぞ」
「のじゃっ」
えへんと胸を張るのじゃ姫。カインはそれに苦笑を返し、未だ全裸の変態に視線を向けた。
「そら、倒し終わったなら服を着ろ変態。目の毒だ」
「フオ!?」
いそいそと着替えるロリコーン紳士。哀愁をそそるなぁ。
しかし、このメンツだと強い敵が出てきた場合、ロリコーン紳士突出になりそうだな。
一人だけ火力が違う。
カインも強いっちゃ強いんだけど、一番必要な時は大抵場外にいるから役に立たない。
ネフティアも最大火力のチェーンソウを失ったのでかなりな戦力ダウンになっている。
雑魚敵に対する備えはのじゃ姫が担ってくれてるが、これはやはり高火力戦力が足りないと思う。クーフかバズがいればよかったんだけどなぁ……
メニスの死体をポシェットにしまった頃には、狼モドキの群れも殲滅されていた。
ござる数多過ぎ。いつの間にか百体くらいに増えている。
戦場に敵対存在が居ないことを確認すると、のじゃ姫に傅いた個体から消え去っていく。
自殺するんじゃなくて消えるんだ。視覚的には良かったというべきか。
「あれ? くずもちどこ行った?」
気付いたリエラがふと周囲を見回す。
にっちゃうと目が合うと、にっちゃうは困ったように「に?」と首を捻る。
しばらくきょろきょろしているリエラだったが、彼の姿を見付けることは出来なかった。
そういえばいつの間にか居なくなってるな葛餅。どこに……あ。
少し離れた場所から戻ってくる葛餅の姿を確認。どうやらまた人知れず脅威に気付いて単独行動を行っていたようだ。
何と闘ってたのかは不明だけど、倒したらしい。
その身体には何かが刺さっている……チェーンソウ?
さすがにオリハルコン製ではないけれど、チェーンソウを身体に差し込み葛餅が戻ってきたようだ。
どっかの魔物がドロップしたのだろう。
お前一体何倒して来たの?
そして葛餅はチェーンソウをネフティアに渡す。
ネフティアは無表情でソレを受け取っていたが、エンジンを入れて、少し振りまわす。
直ぐにスイッチを切ってこくりと頷いた。
そして葛餅にグッドマーク。気に入ったらしい。
うん、このパーティー、葛餅先生がいればまだ安心できそうだ。
頼りにします、葛餅先生!
ハロウ・ウィーン
種族:妖精 クラス:ジャック・オ・ランタン
・カボチャ頭の妖精の一種。外套に包まれた身体に実体はなく、手にはチェーンソウを持っている。
魔法生物に見えるがジャック・オ・ランタンとは違い実体がある。
高位存在ではあるが悪戯好きには変わりがない。
ドロップアイテム・カボチャランタン・チェーンソウ・ハロウ・ウィーンの種




