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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その番長に狙われていることを彼は知りたくなかった
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その二人が出会う意味を、彼らは知りたくなかった

「まずいまずいまずいまずい……」


 リエラさんが壊れたように呟き始めた。

 にっちゃうをぎゅっと抱きしめる姿は可愛いはずなのに、何故だろう、危機迫る顔に見えるのは?

 ヤバいな、重圧弱点が予想以上に彼女の精神を蝕んでいく。壊れないでリエラ。君が壊れてしまったら誰が僕を認識してくれるの!?


「ね、ねぇセレディ、なぜそんな北に行きたいの? 東にツッパリたちの泉があるらしいし、今日はそこで野営を、ね?」


「ぶひぷひ」


 あら、どうしてそんなに北に行きたくないのかしら? まるで私がそこに行くのを阻止したいみたいね?


 ほぼ確信しているセレディには、モーネットさんとネッテの必死の話題逸らしも意味を成さない。

 むしろ言い訳すれば言い訳する程に確信を強めて行く結果になっていた。

 セレディの身体に静かな闘気が宿る。


 戦乙女の花園のメンバーも、理由は知らないながらもモーネットさんの必死の説得に、何か北に向ってはならない事実が存在する事を察知し、一緒になってツッパリの泉に向おうと説得を始めていた。

 うん、さすが女性高ランクパーティー。綺麗な人が多い。一人ワイルダーな方がいらっしゃるが、そんな彼女もカッコイイと言える存在だ。

 美形の男とか言われても納得できるので、彼女の女性ファンは多そうだ。


 そして、結局僕らは悪夢の現場へと辿りついた。モーネットさんたちとネッテではセレディを止めるには力不足だったようだ。

 セルヴァティア王国跡。

 その崩壊しながらも自然に浸食され神秘的な廃墟となった王国跡に、戦乙女の花園メンバーは感慨深げに魅入っていた。


「凄い。ここまで綺麗に残ってる遺跡久しぶりに見たわ。こんな場所にもあったのね」


 モーネットさんが呟く。

 その横で、洗練された闘気を纏い、復讐の豚が一歩、静かに踏み出した。

 それに気付いたリエラが人知れず吐いていた。

 ああ、リエラの精神力はもうゼロだ。


 彼女に抱きしめられたままのにっちゃうが凄く怯えてる。

 大丈夫、まだ君には掛かってないよ。

 リエラがちゃんと避けてくれてるから。


 動き出す豚娘。

 他の皆が止めるのも聞かず、一歩、また一歩とガレキを踏み割り歩いて行く。

 その形相、雰囲気、佇まい。全てが魔王を彷彿とさせる。豚魔王オークキング、いや豚女王オーククイーンだ。

 城下町を進んでいくセレディ。

 誰も止められない。

 触れたら殺すぞを地で行くような雰囲気に、さすがのAランクパーティーも諌めることはできそうになかった。


 今更ながらアニアがちょっとやりすぎ? みたいな顔をしていたが遅すぎる。

 すでに回避する段階は過ぎた。

 もはやこの闘いは不可避だ。


 荘厳な、朽ちた城に現れたセレディはゾワリとする程の殺気を迸らせる。

 その瞬間、音が聞こえだした。カツン、カツンと通路を歩く音がする。

 一歩、一歩、ゆっくりとその音が近づいてくる。

 まるで女の殺気に気付き、闘いへと出向くかのように、そいつはたった一人で現れた。


「恋に破れた女の気配がすると思って来てみれば、あらあら、セレディさん。お久しぶりですね」


 笑顔を湛え、セレディ同様研ぎ澄まされた闘気を身に纏い、魔王エンリカがご降臨召された。


「ぶひ」


 ええ、久しぶりね泥棒猫のエンリカ。その後どうかしら? 


「御蔭さまで。バズさんとエルフニアで結婚式を行いました。晴れて、両親公認夫婦となりました。この地で夫共々幸せに暮らす予定です」


「ぶひ」


 そう。私はマイネフラン王国で冒険者になることにしたわ。いい男を見付けるつもりなの。


「そうですか。出来るかどうかわかりませんが、頑張ってください」


 にこやかに二人の会話が展開される。所々に毒が含まれている気がするけど、まぁ、言い合うだけならまだ可愛いモノだ。これが、準備運動でなければね。

 確かに、この会話だけだったなら問題はなかった。

 互いに話し合う間に殺意を迸らせたりしなければ。

 周囲の石が闘気で浮き上がり弾け飛ぶ幻想が見える。何この強ぇ奴に会いに行く状態は?


 水と油。いや、天使と悪魔。むしろ龍虎相討つか? 決して出会ってはいけない二人の女を見て、その場に居た全員が思わず後退さる。

 しかし、二人の女は互いに歩み寄る。

 デッドラインが狭まっていく。

 互いの拳が突き刺さる至近距離まで近づく二人の鬼女。


「ぶひ」


「あら、奇遇。私もそう思っていました……」


 セレディが何を言ったのか、僕の口からはとても言えない。

 そして、この切っ掛けを作りだした犯人を、皆が恨みがましい目で睨みつけた。

 脂汗塗れのアニアは誰か助けてくれる人を探す。

 リエラが死に体で胃を押さえて蹲っているのに気付いた。

 アニアは自分が生み出した悪戯の結末を覚悟した。


「さぁ、始めましょうかセレディ」


「ブヒっ」


 二人は静かに拳を握る。

 ああ、やはりそうなるのか。

 諦めの境地に入った僕の目の前で、二人の女の殴り合いが、再び始まった。


 今回、セレディに遠慮はない。

 顔面だろうが腹だろうが思い切り全力で殴りつける。

 だが、今回のエンリカは殺戮拳闘士デストロイグラップラーで強化された力でセレディを上回る一撃を叩き込む。


「ぶひっ」


 ちょっと離れた間に力を付けたわね。


「あなたこそ、執念深いわねっ」


 二人の女の意地のぶつけ合い。

 すでに双方血塗れだ。

 あまりの激しさに全員が震えて見ていた。

 アルセは見ちゃダメだよ。アレはさすがに目の毒だ。

 ほら、ロリコーン紳士、震えてないで隠して隠して。

モーネット・スパルタクス(再出)

 ・『戦乙女の花園』を立ち上げた若きクラン長。

  女性だけの仲良しクランでよくお茶会をしている。

  おしとやかさのある女性だが、怒ると怖いお姉さん。

  種族:ニンゲンG クラス:戦巫女

  装備:巫女服、白銀の胸当て、忍刀牡丹、忍刀菫、青龍刀、お祓い棒、符×73、筆


クラリッサ・フォルトハウト

 ・『戦乙女の花園』の斧使い。

  鍛え上げられた肉体美と姐御肌な性格で女性ファンが多い。

  咄嗟の判断が出来る人で、クランの副長をしている。

  種族:ニンゲンF クラス:重戦士

  装備:ダマスカスアーマー、ゼブラアックス、パワーリスト、トマホーク


アリアドネ・ネルクリット

 ・『戦乙女の花園』の槍使い。

  まじめな性格で融通の効かない人。洒落も通じない。

  男性に対してはとくに冷たい視線を見せるため凍結令嬢と呼ばれている。

  種族:ニンゲンC クラス:槍術師

  装備:カスタムアーマー銀嶺、カスタム手甲月華、火喰鳥の具足、フレアトライデント


カッタニア・ペレクル

 ・『戦乙女の花園』の弓使い。

  人の恋路に対しての噂が好きなお姉さん。意地の悪い顔で笑う姿がよく見られる。

  本人は隠してるつもりだがアレンに恋をしている。ただし胸はスレンダー。

  種族:ニンゲンH クラス:狩人レンジャー

  装備:緑深の服、ハイネの靴、神馬獅子の手袋、矢筒、破魔矢×100、銀の弓、銀の矢×89、チンクエディア


プラム・トトトトトト

 ・『戦乙女の花園』の斥候。

  ドラゴニアという種族の女性で小柄。高い能力を持っており、進んで斥候役を受け持っている。

  背が低い事を馬鹿にすると相手を瀕死にする程に怒り狂う。

  種族:ドラゴニア クラス:斥候チェイサー・下級竜人

  装備:ダマスカスプレート、ヘイホーリング、投げナイフ×100、忍刀牡丹、忍刀翡翠、クナイ、マキビシ


ジェーン・ドゥ

 ・『戦乙女の花園』の魔法使い。

  ですわ口調の少女。銀髪ツインテールの厨二病的精神。

  ただの魔法使いを演じているが……

  種族:ニンゲンB(仮) クラス:魔法使い(仮)

  装備:ゴシックロリータ、黒い眼帯、蝙蝠傘、ロリポップ、デモニックロッド、サモンリング、デモニックナイフ


サヤコ・マキマチ

 ・『戦乙女の花園』の影の七人目。

  普段は姿を見せず影からパーティーを守っている女性。

  彼女の存在はモーネットの他は数名しか知らない。

  種族:人間 クラス:忍者

  装備:忍装束、鎖帷子、マキビシ、クナイ、忍刀紅葉、忍刀蜉蝣、手裏剣×70、寸鉄、鉤爪、分銅、他忍具一式

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