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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その番長に狙われていることを彼は知りたくなかった
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その女から逃げ切れないのを、彼女らは知らない

「えっと、ここは森の西側だから、レディース達がいるんですよね」


「そうなるわね。動物は居るけど他の魔物はいないでしょ? 魔物たちも縄張りがあって滅多なことじゃ……」


 スマッシュビーが現れた!

 ちょ!? なんでこいつが森の中に!?

 ネッテさん話が違うっ!


「ふんぬっ!」


 クーフの一撃が襲いかかる。

 直角軌道で逃げるスマッシュビー。さらにラケットを振るって来る。

 これを葛餅が硬質化して受け止め、別の触手を伸ばしてアルセソード改で切り裂いた。


「おかしいわね。なんでスマッシュビーがここに?」


 何かしらの変化が起こったと思われるけど、やっぱり新しいスマッシュクラッシャーのリーダーが関係あるのかな。

 そんな事を思っていると、ガサリと揺れる目の前の茂み。


 なんだ? と思っていると、見知った存在が現れた。

 ピンク色の綺麗な肌。

 尖った豚鼻。

 くるりと回った可愛らしい尻尾。

 はい、セレディ再来です。


「せ、せせせ、セレディさん!? なななななぜここに」


「ブヒブヒ」


「えっと、昨日の人は一命取り留めて教会で休養してるらしいわよ。それで、暇ができたから別パーティーにくっついて来たんだって」


「あら。お久しぶりですねネッテさんでしたっけ?」


 不意に、セレディの背後から誰かがやってきた。


「あら。モーネットさん?」


 そいつはモーネット・スパルタクス。『戦乙女の花園』を立ち上げた若きクラン長である。

 Aランクパーティーがなぜここに?


「ギルド依頼でこの森の生態を探ってほしいっていうのがあってね。どうやらレディースとツッパリ以外の魔物が出てきだしたらしいのよ。その原因を探りに来たの」


 どうやら上位冒険者パーティー専用依頼のようだ。

 カインたちはまだ中級らしいのでこの依頼は紹介されてないらしい。

 ギルドからの指名依頼のようなものなので、ほぼ強制だからあまり受けたくはないけどね。


 というわけで、原因調査に行こうとした戦乙女の花園に、丁度冒険しようとしていたセレディがなら一緒に連れて行って下さいと名乗りを上げたのだそうだ。

 今話題のセレディの実力を見る意味でも、モーネットさんは快く引き入れたのだという。


 チッ、余計な事を。

 なんにせよ。豚娘が豚とエルフの愛の巣近くまで追ってきた事実は変わらないらしい。

 リエラ、胃を押さえないように、顔面が蒼白から土気色になりだしてるよ。


「それで、あなたたちはなぜここに?」


「えーっと、それは……」


 さすがのネッテも答えに困る。

 まさかセレディがここに居るとは思わなかった。

 彼女がいなければ説明は出来たのだけど、これは大ピンチ。


「ブヒッ!」


 しかし、その危機はセレディによって回避された。

 敵襲! そう告げるセレディが斧を構えた時、森の中から一匹のウサギが現れた。

 なぜかボクサーグローブを手にしたウサギは、飛び跳ねながらセレディに拳を打ち込んで来る。


「パンチャーラビット!?」


「そこまで強い魔物じゃないけど、こういう魔物がこの森にきだしてるのよ」


 言いながら、玉串で一突きするモーネット。

 たったの一撃でパンチャーラビットが絶命した。

 さすがはAランクパーティーか。


「それで、ネッテさんたちは何故ここに?」


 話、振り出しに戻る。

 溜息ついて、ネッテはモーネットさんに手招きをする。

 モーネットさんと護衛のクーフを引き連れ少し離れた場所に向ったネッテは自分たちが何故ここに来たのかを小声で告げた。


 だが、彼女は甘く見過ぎだった。

 そう、索敵能力に優れているということは、聞き耳スキルも高いという事に。

 アニアと会話しながらも、時折ぴくぴくと耳を弾ませるセレディに、僕は不安感が爆発的に増加するのを感じた。

 これは、ヤバい気がする。


「そ、それじゃあ、ネッテさん、私達は引き続き仕事を行っていますので」


「ええ、それじゃ、私達は目的地に向います」


「ブヒブヒ」


「え? ねぇモーネットだっけ? セレディが北が妖しいって言ってるけど? 調べに行くの?」


「「き、北!?」」


 アニアの無垢な質問に、モーネットとネッテが脂汗塗れに声を揃えた。


「き、北には何も無いわ。ええ。ないそうよ。さ、さぁ東を見て回りましょセレディさん、パーティーの皆も待たせては悪いわ」


「ぶひぶひ」


「北に、国跡があるのでは? 何も無いわけないでしょ、だって。ああ、クーフの国だっけ?」


 と、なぜかアニアは悪戯っぽい笑みを浮かべて飛びまわる。

 いいカモ見つけたみたいな顔をして、何悪夢を引き起こそうとしてるのお前は!?

 国が、もう滅んでるけど、跡形も無く滅ぶかもしれないんだぞ!!


「ブヒ」


 ほら、あるんじゃない。さぁ、奴らのもとへ案内しなさい。

 半ば確信したように告げるセレディ。

 既に進退極っていた。ふふ、そうか、アニアよ、地獄が見たいのなら見せてやろう。

 ああそうさ、覚悟するがいい。お前が引き合せた二人の結末を。

 パンチャーラビット

  種族:魔獣 クラス:マギラビット

 ・魔力を纏い魔物化したウサギの一種。

  マギラビットからの進化系存在であり、おもに敵を拳で倒していたウサギが進化する事が多い。

  肉体強化魔法とボクシング技を使いだしたラビット。

 ドロップアイテム・ボクシンググローブ・ウサミミ・ウサ肉

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