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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その番長に狙われていることを彼は知りたくなかった
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その襲い掛かってきた者たちを、彼らは知らない

「さて、ゴボル平原を抜けてカインたちを追いましょうか」


 ネッテの言葉で、宿前にやってきた僕らは頷いた。

 早朝の路地は人通りが少なく、朝靄が立ち込めている。

 そういえば、こんな早くに起きるのは久々だな。


 といっても殆どが野宿だったりであまりベッドで寝なかったんだから仕方ないんだけど。

 野宿中はリエラに起こして貰ってたし。リエラ? 最近は葛餅が起こしてるよ。

 一度は起きたら皆居なかったなんてハプニングもあったからな。

 あの時は泣きそうな僕が周囲を探って、ひょっこり現れたアルセに思わず抱きついたくらいの不安だった。


 魔物の襲撃にあって撃退に出ていたらしい。

 終わったら皆戻ってきた。

 あの時の一人ぼっちの不安感は忘れたくとも忘れられない。寝るのが怖くなったよ。割とマジな話で。


「待てネッテ……何か、変だぞ」


 クーフが異変を感じて柩を構える。

 リエラがいつでも剣を抜ける体勢になると、葛餅も警戒するように震えだした。

 アニアがアルセの傍に寄っていく。


 お嬢さん、私の後ろに。

 と、変態野郎が言った時だった。

 影が走った。


 朝靄を引き裂くように走る影は、僕らに向って飛びかかってきた。

 即座に反応した葛餅が剣撃を打ち鳴らす。

 アルセソード改を受けて剣撃!?


 黒尽くめのそいつは、さっとバックステップで朝靄に消える。

 次の瞬間、無数の黒尽くめが襲いかかってきた。

 即座に対処するクーフ。アルセに向う黒尽くめに感づき一気に強化されるロリコーン紳士のステッキが火を噴いた。


「な、なんなんですか!?」


 リエラの悲痛な叫び。バルスが剣を合わせるが相手の力の方が上らしい。跳ね上げられた腕に吸い込まれそうになる一撃。


「ラ・ギ!」


 ユイアの一撃でバルスに迫っていた黒尽くめが飛び退く。


「コ・ル、ラ・グ!」


 氷魔法を唱えたネッテ。難なく避けた黒尽くめだったが、続くラ・グを喰らって仰け反った。

 これに気付いた別の黒尽くめが麻痺した黒尽くめを回収して朝靄に消える。

 しつこいな。執拗にアルセを狙って来てるぞ。なんだこいつら?


「いかん、こいつらアルセを狙っているぞ!」


「と、というか、私も狙われちゃってますよ!?」


 アニアが迫り来る手を回避しながら惑わしの草地ストレイ・ソッドを使って行く。

 さすがに敵とはいえ、人間相手に妖精の輪ガリートラップは使わないらしい。

 それとも忘れてるだけか?


 あ、捕まった。

 ロリコーン紳士の隙を突いた黒尽くめがアニアをむんずと捕まえる。

 ところがどっこい。

 僕はポシェットから名刀桜吹雪を引き抜き斬り上げる。

 捕まったアニアごと腕がぽろりと落ちた。


 悲鳴を上げるかと思ったけど、黒尽くめの誰かはさっと朝靄に消えていく。

 って、アルセッ!?

 黒尽くめの一人がアルセを抱えて消えるのを見付け、走り出そうとした僕は、すぐ横に笑顔のアルセが居るのに気付いて足を止めた。


 ああ、そういうことか。

 僕が納得した次の瞬間、朝霧の向こうから、男の悲痛な悲鳴が響き渡った。

 その声で、襲いかかっていた黒尽くめ達が慌てたように消え去っていく。


「はひゅぅ、助かりました無礼でおじゃるさ……あれ? そういえばこっちにのじゃ姫居なかったよね? 今の刀は?」


 助けられたアニアがそんなことを言いながら周囲を見回すけれど、刀は既にポシェットの中だ、見つかるはずもなかった。

 いや、咄嗟にアニア助けなきゃと武器振るったけど、うわ、今の感触忘れよ。

 それにしても一体……なんなんだあいつら?


「ふむ、消えたか」


「また襲撃されたわね。しかもアルセばっかり狙ってくる……嫌な予感しかしないわね」


「アルセを狙うというのなら理由は限られるな。金か、身体か」


「魔物好きの変態なら大抵お父様が掴んでいるからなんとでもなるけど、おそらく金の方でしょうね。私達相手に襲撃してくるんだし、余程の大物が関わってそうね」


 ネッテの呟きに頷く皆。まぁ、ゴブりん相手に倒した葛餅やこのパーティーは公衆の面前で表彰された訳だし、それを承知で襲撃をしかけて来るならそれ相応の理由があるはずだ。

 しかもアルセを狙ってくるというのなら、アルセイデスの蔦を幾らでも創りだせる存在だからか。


 まぁ。魔物の女性が好きとかの可能性もあるけど、売れば同じように金に成るだけアニアが狙われたのも相手が金が欲しいからと考えるのが妥当だろう。

 おそらく、きっとこの国にもあるのだ。闇ギルドが。

 そういった手慣れの連中が襲いかかって来たのだろう。


「とりあえず、ギルドと教会に伝えておくわ。一度ギルドに向いましょ。各教会にはギルドを通して通知して貰うわ」


「それが良さそうだな。直ぐに向おう」


 鶴の一声で、カインたちへの合流前にギルドに向う事になりました。

 折角だし、あの二体の賞金首を提出しとこう。

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