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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 そのすれ違う者たちを豚は知らない
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その知識の実を人が食すとどうなるかを、彼らは知らない

「KYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――ッ!!」


 物凄い音量の悲鳴。

 鼓膜が、鼓膜がぁあぁあぁあぁっ。

 アルーナの上位種はアルラウネじゃなくてバンシーだったのだろうか。

 それともマンドラゴラ?


「ぐああっ。すげぇ声っ。皆大丈夫か?」


 すでに逃げ去ったアルーナを追うのは無理そうだ。

 僕らはふらつきながら全員の無事を確認する。

 さすがに鼓膜が破れるほどではなかったが、確かに逃走するには十分過ぎる叫び声だ。


「ああ、びっくりした。まさかあんな技持ってるなんて……」


即死の絶叫ラディカル・シャウトじゃなかっただけマシだ。マンドラゴラやバンシーの亜種じゃなくてよかったぜ」


「本当ですねカイン様。今の……て、敵襲!」


「オルァ!?」


 頭を振っていたメリエが突然叫ぶ。

 敵。こんな時に襲撃か!

 驚きながらメリエの視線の先を見る。


 あ、アンブロシアツリーだ。

 おそらく先程の声に引き寄せられたのだろう。アンブロシアツリーが一体、僕らの傍へとやってきていた。

 お、凄い。このツリー、実が四つも成ってる。

 その分巨大だけどね。


 根っこを伸ばして襲い掛かるアンブロシアツリーに、未だに声のせいでふらついている面々は上手く逃げられない。

 のじゃ姫が宙づりにされ、アニアが絡め取られ、ロリコーン紳士が亀甲縛りに……なんでお前はそんなに変態なんだ。


「のじゃぁ!?」


「くそっ。バックアタックか」


 アルセだけは死守したぞ。どうだロリコーン紳士め! 僕だってやる時にはやるんだよ!

 アルセを抱きかかえリエラの傍に飛び退いた僕は思わずロリコーン紳士にニヤリと笑みを浮かべる。

 相手は気付いてないのに対抗心燃やすの、なんか切なくなってきた。


 ギュイイイイイイイイイ。

 のじゃ姫を絡め取っていた蔦が切り裂かれた。

 さらに危ない妄想を垂れ流していた妖精も救出される。

 さすがネフティアさん、いい仕事してます。


 さらにリエラからアルセソード改を奪い取った葛餅が単身飛びこむように無数の蔦のもとへと向って行く。

 襲い掛かる蔦を軽々と避けながらまさに軽業師のように相手に近づいて行く。

 避け切れない蔦を剣で切り裂き、ネフティアと共同でアンブロシアツリーを伐採してしまった。


「え? え? くずもち凄いッ!?」


 初めて葛餅の闘いを見たリエラが驚きの声を上げる。

 ほんと、凄いな葛餅。彼? 彼女? 単体でならむしろリエラなど及びもしないくらい強い気がする。

 カインの出番すら今回なかったぞ。


「オルァ!!」


 アンブロシアを倒して気を抜いてしまっていた面々に、辰真の声が叱咤する。

 何かと見れば、赤いカマキリが一体、そこにいた。

 レッドマンティスだ。


 丁度良いとばかりに闘いを始める辰真。

 一人で大丈夫そうだったので彼に任せて皆はアンブロシア回収を始める。

 頑張れ辰真。僕とアルセだけは応援しているよ。


「とりあえず、四つあるけど、ほれ、のじゃ姫とロリコーン紳士に一つずつ。それと葛餅も」


「のじゃ」


「ふぉ?」


 二人の魔物が知識の実を口にする。

 そして葛餅……体内に取り込むがそれだけだ。

 彼は鉱物、つまり、食事を行う必要が無い存在だ。

 当然、この知識の実を吸収するなんていう能力も存在しない。


「後一つは……どうする?」


「にっ」


「そうですねぇ、他の魔物が仲間になるまで待ってみます?」


「にっ」


「じゃあアルセのアイテムボックスに……」


「にっにっにっ」


 飛び跳ねているのはリエラが抱えて来たにっちゃうだ。

 そういえば放逐する機会が無くてそのまま連れて来てたな。

 まぁ、こんな場所で放たれても魔物の餌になりそうだからいいんだけど。


「ふーんこれがアンブロシアの実ですか……」


「にっにっにっにっにっにっ」


 必死に飛び跳ねてほしいほしいとアピールするが、無視されているにっちゃうがちょっと可愛い。

 そして気にすることなくぱくりとアンブロシアに齧りつくメリエさん。

 ちょおぉ!!?


「あら、結構おいしいかも」


 呆然とするカインたちに気付くことなく、人類初、知識の実を食した女はその実を完全に食べ終えた。

 最後にチロリと指を舐めて、カインたちを見る。


「あら? どうしました?」


「い、いやいやいや、な、何か変化はないか? 大丈夫か?」


「まぁ、私のことを心配してくれるんですかカイン様!」


「いや、その……大丈夫なら、いいんだ。うん」


 呆然としながら告げるカインの影で、僕は人知れず魔物図鑑で彼女を確認する。


 メリエ・マルゲリッタ

  種族:ニンゲンZ クラス:魔術師・冒険者トレジャーハンター

  装備:火炎の杖、紫のローブ、ターコイズサークレット、形見のペンダント

 スキル:シェ・ズ

     シェ・ズル

     シェ・ズルガ

     ラ・ギ

     ラ・ギラ

     恋する少女の魂バーニン・ファイア

     ラ・グ

     ラ・グラ

     ラ・グライラ

     レイ・ル

     グレ・ゴ

     グレ・ゴル

     グレ・ゴルン

     グラ・ン

     グラ・ント

     グラ・ンドロス

     シンクホール

     ヒール

     キュア

  常時スキル:

      肉体強化Lv1

      詠唱速度Lv3

      毒耐性・小

      混乱耐性・小

      麻痺耐性・小

      妄想:妄想して精神力を高める。MPがわずかに回復する。

      ?定

      ?知

  種族スキル:

      杖術Lv1

      鍵開けLv2

      罠回避トラップサーチLv3

      索敵エネミーサーチLv1

      探索アイテムサーチLv2

      魔術師の弟子

      ?者の?め


 ああ、これ完全にアカン奴や。

 ニンゲンGだったかだったのに、Zになってるし。なんだよニンゲンZって。

 名称不明スキルも増えてるし。


 ん? あれ? 辰真、何してんの? ああ、さっきまでレッドマンティスと闘ってたのね。忘れてたわ。

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