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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 そのすれ違う者たちを豚は知らない
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その魔物が希少だということを、彼らは知らない

「ああもう、疲れました……」


 アルセソード改を支えに内股で座りこむリエラ。

 だらしないと言ってやりたいが、彼女にしてはよく頑張った。

 今回の闘いはあまりにも敵の数が多かったし、良く倒しきれたな。


 僕らの周囲には無数のヘルピングペッカーの死骸が残されている。

 一つ一つポシェットに入れてるけど、数が多くて追い付けない。

 アイテムボックスを使えるクーフがいないので僕しか回収できないのだ。

 というか、このポシェット、どれだけ入るんだろう?


「たぶんだが、あのレッドオーガに追われていたんだろうな」


「ヘルピングペッカーってレッドオーガより弱いんですか? どう見ても全員で掛かれば……」


「レッドオーガの咆哮のせいよリエラさん。あれでリーダーあたりが恐慌状態になって逃げ出したんだわ。それに付いて来たヘルピングペッカーをレッドオーガが追って来たのよ」


「な、なるほど」


 そんなリエラの背中では、戦闘の緊張から解放され安堵したらしいにっちゃうがふひゅ~といった様子でリエラにもたれかかっていた。

 僕らから逃げる気力も無いらしい。


 あ、アルセイデスだ。

 アルセのもとに茂みから顔を出したアルセイデスが一体、寄ってくる。

 双葉のアルセだ。当然だけどクリソツです。ようするにソックリです。


「の、のじゃぁ!?」


 しかし、アルセしか見たことのないのじゃ姫が驚いている。

 ロリコーン紳士なんぞ鼻血噴き出してフオオオオオと興奮していた。

 そして二人して踊りだすアルセイデス共。


「さて、とりあえず死体回収してアンブロシア探しに行こ……ちょお!? なんでアルセがまた二人に!?」


「あ、カインさん、アレ双葉です。ただのアルセイデスみたいですね」


「ああ、そっか。アルセ以外にもこの森アルセイデスいるんだっけ」


「理解はしてますが、こうやって実際に二人出て来ると困りますね。双子に増えたみたい」


 ほぼ同じ動きで踊るアルセたちは、ひとしきり踊った後、満足したようにアルセイデスが去っていく。

 アレ、もしかしてアルセイデスに伝わる会話とかそんななのだろうか?


 その後も、僕らはワラビットやアローシザーズ、キルベアなどと闘いながら森の深部を目指す。

 深部に出るのはブラックドッグ、ヘルピングペッカー、ティアラザウルス。

 相変わらず巨大なティアラザウルスは出来るだけ見つからないように隠密行動で回避している。


 メリエさん、いい仕事してます。

 そんな中、僕らは新種というか上位種っぽいのに出会った。

 10代中盤くらいの背丈の少女。緑の蔦で膨らみかけた胸と局部を隠した可愛らしい少女だ。

 緑色の肌とアルセに似たあどけなさの残る姿。

 膨らみかけのツボミがアルセと同じように頭の上で揺れている。カシャッ


 ???

  種族:妖精 クラス:アルーナ

  スキル:

      笑顔の圧力:周囲に笑顔を振りまき幸福にする。

      魅了の花粉:周囲に吐き出した花粉で敵を魅了する

      切り裂く叫び:悲鳴じみた絶叫で攻撃する。

  種族スキル:

      マーブルアイヴィ:大理石すら割り砕く蔦を瞬時に成長させることが出来る。

      枯蔦の御手:自分が作りだした蔦に限り自由に枯らせることができる。

      光合成

      キューティダンス


「フオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


 変態紳士は悩殺された。

 なんかいい笑顔で鼻血拭きながら倒れました。

 もう、思い残す事はないといった幸せそうな笑顔でした。

 本当にそのまま死んでくれませんかね変態。


 しかし、やっぱりだ。アルセはアルーナの進化前。この後アルルーナ、アルラウネといった感じに上位種がいるのだろう。

 でも、変だな。アルーナはすでにツボミだ。アルセは既にツボミなのに小さいままなんだけど。

 やっぱり僕のせいで通常進化から外れたとか?


「これ、もしかしてアルセの進化後の姿?」


「ネッテがいないから魔物図鑑がねぇ。失敗したな」


「あ、大丈夫です、私持ってますよ。アルセ、出してくれる?」


 リエラに言われてアルセを操りながら魔物図鑑を渡す。

 名前と能力をみた彼女は確信したように頷く。


「カインさん、やっぱりアルセの上位種みたいです。アルーナだって」


「アルーナか。初見の魔物だな」


 あれ? 冒険者たちも初めて見る感じ?

 結構希少な魔物なのかな?

 まぁアルセイデスがマーブルアイヴィ目的で狩られてるせいでアルーナになる個体があまり居ないのかもしれない。


「さすがにアルセの手前、上位種を倒すのは気が引けるが、どうする?」


「そうですね……このまま帰ってくれればいいですが……」


 そんなカインたちの思いを無碍にするように、アルーナは両手を頬に手を当てた。

 刹那、周囲をつんざく強烈な悲鳴が周囲に轟いた。

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