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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 そのすれ違う者たちを豚は知らない
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その魔物と遭遇した意味を、僕らは知らない

「良し、そろそろ行こうか」


 一時間程のゆったりした午後の昼下がり、まさにぼけっとした時間を有意義に過ごした面々は各々重い腰を上げた。

 リエラが一番最後まで抵抗していたが、代表したらしい辰真が襟首引っ掴んで無理矢理立ち上がらせていた。


 クーフやネッテがいないので、締められる人物がいないらしい。

 カイン結構適当だしね。

 本来ならリエラがやるべきなんだろう。何せこのパーティーではカインに継ぐ最古参なんだし。

 アルセ? パーティーの空気引き締められると思います?


 一応、無数のツッパリをまとめ上げるリーダーなので、面倒見はいいらしい辰真。

 彼がいてくれるからまだこのパーティーはまとまっていられるようだ。

 でも、彼の負担、半端ないだろうね。

 なにせ幼女三人、能天気妖精一人、変態一人、恋する乙女一人、そしてストレス過多一人の大問題パーティーだし。


 カインはリーダーだけど結構天然天才肌だからまとめ役はリエラか辰真に割り振られてしまう。

 頑張れ辰真。お前だけが頼りだよ。

 正気に戻れとリエラをぺしぺしと葛餅が叩いているが、にっちゃうを抱えたままのリエラが正気に戻ることはなかった。

 そしてにっちゃうが解放されることも無かった。


 仕方ないのでカインはそのままリエラを放置して歩きだす。

 幸い、リエラもその場に留まる気はないらしく、にっちゃうを抱きかかえたまま歩きだした。

 葛餅がこら、こんな奴抱きしめるくらいなら俺を抱き締めろ! とばかりにぺしぺしとリエラを叩くが、全く意に介していない。


 時折頬ずりすらしている始末である。

 これは重症だ。よっぽどストレスをため込んでいたらしい。

 大丈夫かなリエラ……


「あ、敵、来るみたいですカイン様!」


「おお、さすがに索敵スキルあるだけはあるな。良く気付いてくれた」


 褒めながら剣を引き抜くカイン。

 褒められたメリエが頬を染めてそ、そんなことありません。とか言ってるけど無視だ。

 カインとの温度差に気付いてないメリエが何とも言えん。リア充爆死……つかカインモゲロ。

 メリエの注意からしばらく、そいつはカインの前に現れた。


「タスケテー」


「だあぁぁ。またヘルピングペッカーじゃねぇか!?」


「あれ? あいつって深淵側にしか出て来ないんじゃ?」


「どっかのバカがトレインして来たんだろうぜ。行くぞ辰真、ネフティア、俺らがアタッカーだ!」


「オルァ!」


 やってきたヘルピングペッカーに突撃するカイン。

 が、ガサリと揺れた先から現れる第二のヘルピングペッカー。

 思わず足を止めてバックステップ。相手が一匹じゃないと気付いたカインが警戒していると、ガサリと激しく揺れ出す茂み。


 ヘルピングペッカーが一匹、二匹、三匹でたよ。四匹五匹六匹いるよ。七匹八匹九匹来たよ。十匹のヘルピングペ……なんか、さらにいっぱいでてきた。


「「「「「「「「「「タスケテー」」」」」」」」」」


 なんか凄い一杯のヘルピングペッカーが現れた。

 周囲を取り囲むようにじりじりと距離を詰めて来る鳥型生物の群れ。


「おいおい、こいつら何でこんなに……新人共が出会えば即死フラグだぞ」


 といいつつも、冷や汗流すカインはアルセソード改を握る。


「辰真、ネフティア、前衛! リエラ、葛餅、ロリコーン紳士は中衛、アニア、補助を、アルセとのじゃ姫は後衛だ! メリエ、遊撃を頼む」


「は、はい!」


 カインの指示で動きだす面々。

 さすがに癒しタイム終了を悟ったリエラがにっちゃうを地面に降ろす。

 逃げようとしたにっちゃうだったが、周囲をヘルピングペッカーに囲まれていたため逃げるに逃げれずリエラの足元に怯えるように逃げこんでいた。


 心中お察しします。

 レベル一でHP10な小動物が獰猛な肉食獣たるヘルピングペッカーの群れに囲まれたのだ、生きた心地はしないだろう。

 死ぬなにっちゃう。あ、でも僕も君を気遣う余裕はないのであしからず。


 先制攻撃は辰真。ヘルピングペッカーの一匹に辿りつくと、自慢の拳で打ち上げる。

 爆裂アパカ。試練の間で番長状態になってからこれを維持している辰真の一撃で、ヘルピングペッカーが悲鳴を上げて絶命する。

 焼かれた鳥のいい匂いが周囲に漂った。


 チェーンソウが唸りを上げる。

 ネフティアさんは今日も平常運転です。

 まさにブラッディカーニバルとでも呼べる血飛沫舞う舞踏祭を開幕。

 ヘルピングペッカーの鳴き声なのか悲鳴なのか分からない声が無数に響く。

 たすけてーとか言ってるから凄く聞くに堪えない。


「よし、気力充填、やろうくずもち!」


 動き出すリエラ。

 打ち込むカインの横に到着すると、ヘルピングペッカーの一匹を相手取り二連撃を叩き込む。

 が、止まらない。さらに連撃を叩き込み相手の体勢を崩しに行く。

 これ、ちょっと上手く出来てないけどスタンラッシュだ。


 どうやら自分が偽モノに喰らわされたスキルをモノにする気らしい。

 さらに雷電崩やらライジング・アッパーを行おうと努力するリエラ。

 まだ技は未熟ながら、型はそれなりになっている。


 練習あるのみだけど、彼女があの幻影並みの使い手に成る日も近い……かもしれない。 

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