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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 そのすれ違う者たちを豚は知らない
246/1818

その土地の管理者が誰かを、王国民は知らない

「セルヴァティア王国だ」


 クーフの言葉に、皆がオウム返しに聞いていた。

 それって確か、クーフの建てた国じゃなかったっけ?


「水晶勇者の墓守が欲しいと思っていたしな、丁度良いんじゃないかと思う」


 クーフはそう言って、皆を見回し、さらに告げる。


「あの国を建国したのは我だ。そして数千年、誰もあの土地を管理していないはず。そこの管理士よ、どうだ? コーカサスの森北部は誰の土地になるかな?」


「あの辺りは人の手が入っておりませんので誰の土地というわけでもないかと……ツッパリやレディース、スマッシュクラッシャーという危険生物も居りますし、王国とやらがあること自体初めて聞きましたな」


「では丁度良い。もともと土地を持っていた我が許す、あそこに住むといい。あの土地には昔の建物があるしな。王城なら掃除をすればなんとか使えよう。とりあえず我とネッテで国王と交渉を行おう。何、問題はあるまい?」


「そうねぇ。お父様なら面倒事が無くなると思うだろうし、了承してくれるかも。向こうはツッパリとレディースが森を管理してるだろうからバズとエンリカなら大丈夫じゃないかしら? じゃあ私とクーフ、それから当事者の二人はこれから王城に行きましょ」


「俺らは?」


 ネッテの言葉に疑問を投げるカイン。


「そうね……ああ、少し前から思ってたんだけど、この機にアンブロシアを採りに行ってみないカイン?」


「アンブロシア? あの知恵の実をか?」


「その戦力なら十分対応できるでしょうし、ほら、ロリコーン紳士とかのじゃ姫とかくずもちは知識が芽生えてないでしょ。私のテイムモンスターにはしたけど、奴隷の首輪も何も無い状態だから暴走の可能性は常にあるのよね。万一を考えたらあの実を食べて貰っておいた方が良いわ」


 ……ん? あれ? ふと思ったけど、葛餅は登録してないんじゃないか?

 ……まぁ、いいか。葛餅だし。


「成る程……」


 とカインは周囲を見回す。

 ネッテ、クーフ、エンリカ、バズが不参加となるので戦力が大幅ダウンしてるのは確かだが、アンブロシアを手に入れるのはネッテ、カイン、リエラ、バズ、アルセのパーティーだけで手に入れたのだ。

 となると、今のパーティーなら十分対応可能だろう。


 ネッテの代わりにメリエがいるし、バズの索敵能力の代わりにメリエがいるし、遠距離専用のメリエがいるし……メリエさんの負担半端なくないか!?

 まぁいいか。恋する乙女の実力はエンリカで十分過ぎる程に理解したし。

 この人もきっとそうやって強力な生物に変化していくんだろう。


「まぁ、確かにこのメンツなら問題ねぇか。じゃあ行ってくるぜ」


「ええ。気を付けてねカイン」


 そして夫候補と不倫相手候補を笑顔で送り出すネッテ。

 さぁ、どうなるカイン。大丈夫かカイン? 今、君の選択肢はバッドエンド方向に一気に傾いたよ?

 そんな事は露知らず、宿をすら決めずに聖樹の森へと向うカイン。


 ちょっと、ついさっきこの国に帰ったばかりなのに、即行いくんですか?

 といっても、他の皆も全く気にしてないようだ。

 辰真なんて拳を握ってさぁ闘いの始まりだ。みたいに燃えてらっしゃる。


 もう、何度目になるだろうか。結構な頻度で入ってるよね聖樹の森。

 入口付近で出会うのはにっちゃうとかにっちゃうとかにっちゃう。

 凄い数のにっちゃうが木に体当たりしたり、潰れたように凹んだり、にっと声を上げたりしている。

 何このモフモフ王国?


 リエラが思わずにっちゃうの一匹を捕まえてギュッと抱きしめていた。

 至福の顔でごろんとにっちゃうごと転がるリエラ。

 癒され感は抜群だ。


「カインさん、私ここに住んでいいですか?」


 胃に痛い事ばかり経験してきたリエラは久々に癒されたようで、もうここから動きたくないと逃げようともがくにっちゃうをひたすらに締め上げる。

 形が変わるウサミミ雪だるまがにっ、にっと助けを求めるようにもがいているのが何とも言えない。


「いや、住むなよ。まぁしばらくここに居るのはいいけどここでも他の魔物出るんだからな。ほら、しばらく休憩したら行くぞ」


 リエラが動きそうになかったのでその場に腰を降ろして休むカイン。

 その横にさっと座るメリエさん。うん、この人も手が早そうだ。ネッテ、カインがピンチですよ?

 それとロリコーン紳士、遠くで見守るくらいならこっち来とけ。

 木の影から半身出して可愛いよ、アルセ。とかやってんじゃない。


 確かににっちゃうを抱えるアルセは可愛いけどさ。

 両手いっぱいでにっちゃうを抱えてこちらに笑顔を見せるアルセ。カシャッ

 うん、癒されます。


「のじゃのじゃのじゃ」


 そしてアルセの後ろの方では珍しいウサミミ雪だるまをぺしぺし叩いているのじゃ姫。

 跳ね回るにっちゃうが楽しいらしく笑顔でのじゃのじゃ言っていた。

 ネフティアは……にっちゃうの一匹と無言で見合っております。

 円らな瞳を無表情で見つめ返すネフティア、何アレ怖い。


 ちなみに、リエラが動かないので暇を持て余したらしい葛餅がアニアを捕食? して遊んでいた。

 アニアがヤバい妄想を口にしていたが、聞かなかったことにしておこう。あいつは葛餅塗れになるのを恐れてるのか、喜んでいるのか……まぁ、本人がそれ程嫌がってないみたいだから放置でいいか。

 近くで聞いていた辰真が顔を赤らめてウ○コ座りしてたけど。

 にっちゃう

 ・ウサミミ雪だるまの魔物。円らな瞳と丸い尻尾、人肌温度でぷにぽよんな体のためペットとしての人気が高い。

  口、鼻、排泄器官などの穴が存在しないため、どうやって生活をしているのか未だに解明されておらず、ペットとして飼うと高確率で餓死してしまう。

  種族:にっちゃう クラス:にっちゃう

  スキル:飛び跳ねる:ただ飛び跳ねたいあなたのためのスキル。追加効果なし。

      体当たり:自身自らを使い敵にダメージを与える技。スキル後硬直あり。

  常時スキル:なし

  種族スキル:霊素吸収:周囲の霊素を吸収し、悪霊化を防ぐ。

      ぷにぽよん:ぷにんと柔らかくぽよんとした抱き心地。人肌温度で冬もあったか。

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