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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 そのすれ違う者たちを豚は知らない
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その火種の存在を、彼は知らなかった

「この盗賊は南にある街道に出没する盗賊団の頭らしいのよ」


 アニアとメリエの会話は賞金首の詳細情報に移っていた。

 盗賊頭のコブン・ナッタはゴブリンが出没する前から時折南の街道に出現する盗賊団らしい。

 だいぶ前から賞金首にされているのだが、未だに誰も討伐出来ていないのは、相手が姿を現さず、盗賊団の基地も見当たらないからだそうだ。


 コボルトのレオスは同じく南の街道に出現するコボルトである。

 荷馬車を襲って行くのだが、最近は姿を現さないらしく、もう討伐されたんじゃないかとか噂がある。

 ……街道に出没していたコボルト……ねぇ?


 レッドオーガのグラウスト、これはゴブリン軍団の生き残りのようだ。

 なんでも冒険者のパーティーが取り逃がしたんだと。

 で、聖樹の森の方に逃げたらしいのでどこに行ったか分からず、仕方なく賞金首にしたようだ。

 ちなみに、聖樹の森っていうのがあのアンブロシアとかがいる、アルセと出会った森のことである。


 聖樹の森にはブラックドッグの上位個体らしいバーゲストが確認されたらしい。

 名前はポチ。ただの犬かよ!? と思ってしまう程普通の名前だ。

 でも凶悪なんだとか。即死の魔眼という目で見ただけで即死させる攻撃を行ってくるのでかなり賞金が高い。


 スマッシュクラッシャーのメニスはゴボル平原で時折出現するスマッシュクラッシャーのリーダー格だそうだ。

 あいつか? と思ったけど辰真により倒された後に確認されているので、別個体。

 おそらく負けたスマッシュクラッシャーたちの指導者として落ちのびた個体だろう。


 ロリコーンは東街道に出没するロリコーンの一人。

 なんでも貴族がガラトスという街に向う際、溺愛していた愛娘に突然襲いかかってきたロリコーンなのだそうだ。

 抱き付かれただけだったが、あの容姿の魔物、幼女な少女にはトラウマものだった。

 怒り狂った貴族様は多額の懸賞金を出してギルドに討伐依頼をだしたということだ。


 ウインドドラゴンは最近学園都市コルッカに向う道を通り道にしだした近くの山に生息するドラゴンらしい。

 ドラゴンは人里に現れるだけでも脅威ということで討伐依頼がだされるが、さすがにドラゴンを相手取るのはなかなかに辛い。

 余程の実力者がいなければ討伐は夢のまた夢なのだそうだ。


 楽しげに語るメリエと唸るように首を振り続けるアニア。

 アニア、ちゃんと聞いてる?

 聞いてないよね?


「お、ここに居たのかアルセ」


「依頼、いいのなかったよ」


「護衛依頼が殆どだな。皆ゴブリンの残党を警戒しているようだ」


 カイン、リエラ、クーフが戻ってきた。辰真はどうした? ああ、クーフに隠れて見えなかっただけだ。後ろに居たよ。

 葛餅が相変わらずリエラの頭の上にいるのだけど、そのせいでリエラが冒険者たちの視線を集めている。

 聖女だとか、魔王殺しだとか、有名になったね二人とも。


「か、かかか、カイン様!?」


 カインに気付いたメリエが棒立ちになって気を付け姿勢、ちょっとお姉さん、緊張しすぎです。


「ん? あんたは確か……」


「は、はははははい、メリエ。メリエ・マルゲリッタと申します。か、かかか、カイン様、あの、わた、わたしを……けっこ……な。仲間に入れてくださいっ!」


 今、結婚とか言わなかったか?

 カインは気付かなかったようだけど、リエラがあ、まっず。といった顔をしている。


「仲間にって、あんた確か別のパーティーに居なかったか、ほら、あの二人の……」


「あ、あいつらとは別れましたっ。今はフリーです。こいび……仲間募集中です!」


 今、恋人募集中とか、言わなかった?

 どうやら、バズさんの次はカインの恋が始まりそうで……


「あら? 私達が一番最後?」


 そして素敵なタイミングで戻ってきたネッテ。

 本命の登場!?

 まさかの三角関係?

 あれ、なんか凄いデジャブ。豚とエルフの闘いが脳裏をかすめる。

 その姿が目の前の二人に置き換わる。


 そして繰り広げられるであろう魔法戦、それは少し前のネッテ対偽ネッテを思い出された。

 あんなキャットファイトが始まったら……

 町が……王国が、壊滅しかねない。


 ここにも爆弾が存在したっ!!?

 しかし、ネッテもカインも気付かない。

 しかもカインの奴、のんきにネッテに仲間にいれていいか? とか聞いてるし、ネッテも気にした様子も無くいいんじゃないとか、ヤバい。火種が、火種が投入されようとしている。


 僕はアルセの腕を操りセレディの似顔絵を描くとカインに見せた。

 思い出してくれカイン。今、お前は彼女と同じモノを作ろうとしているんだ!!

 だけど、僕の思いは曲解された。


「あら、これセレディさん。上手いわねアルセちゃん」


 メリエの言葉に何で知ってんだ? といった顔をする面々。

 気付いたメリエが絵から顔を上げて笑顔で応える。


「最近田舎の村から来た冒険者なんです。いろんなパーティーに入って冒険してますよ。ついさっきも聖樹の森に冒険にでてましたし」


 セレディがここにいる。

 その刹那、彼らはバズの危機を知り、もう一つの危機は見過ごされた。

 メリエが……仲間に加わった。

 僕は……どうすればいいのだろう。カインの背後で胃を押さえて蹲るリエラを見ながら、途方に暮れる僕だった。

 ……まぁ、いいか。成るように成れだ。リア充は爆死すればいい。

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