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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 そのすれ違う者たちを豚は知らない
243/1818

その生物が国に居ることを、僕は知りたくなかった

 食事を終えた僕らは、とりあえずギルドに向った。

 あの店味はそこそこだったな。オープンだから珍しさでウケてるだけみたいだ。

 味の向上を所望する!


 というわけで、ギルドにやってきた僕ら。

 相変わらず混雑しているので、バズとエンリカの家族は子供が逸れると困るのでここで別れて自宅探しに向ってもらう。

 王城近くにそういった専門の店があるらしい。王国内の空き家を紹介してくれる場所だそうだ。

 そこでとりあえずいくらかかるかとどんな家が良いかを選んでおいて貰うのだ。

 で、僕らが行くと丁度商談に入る前くらいになっていると。ネッテ達がそんな事を言ってた。


 今回、ネッテはロリコーン紳士を呼び寄せ、のじゃ姫共々テイムモンスター化するそうだ。

 のじゃ姫は分かるけどあいつはいらないだろ。

 そう思ったけど意見を言える立場じゃないので放置です。


 で、カウンターに向うと、お客様対応していたカルエさんが僕らに気付いてふにゃっと微笑む。

 呼び鈴鳴らして奥からギルドマスターを呼びだすと、新しいお客さんの対応を始めていた。

 相変わらずつっかえつっかえだ。それでも対応している厳ついおっさんが微笑ましい顔で説明を聞いているのが印象的だった。

 彼女の冒険者人気は高そうだな。


「ようやく来てくれたかカイン君」


「ニコラウスさんだっけ。どうしたんです、ギルドマスター自ら」


「あのね、君等に国王陛下から召喚状が来てるんだよ。なのに今まで顔を出さない。一体どこに夜逃げしてたんだ?」


「ゲフンゲフン。よ、夜逃げとか、な、なんのことやら。俺らはただエルフニアに冒険してただけですよ。嫌だなぁ、あははははは」


 ニコラウスさんに促されギルドの奥へと連れて行かれるカイン。

 代表者だけでいいだろうと、クーフとリエラは辰真を連れてカウンターに並ぶ。

 依頼に良いのが無いかを確認しておくのだと。


 僕は待つ間暇なので、アニアとネフティア、アルセを連れて賞金首を見に行くことにした。

 賞金首欄には幾つかバツマークの入ったモノがある。

 これは討伐されたという証明のようなものだ。


 賞金首を狩るには幾つかルールがある。

 まず、相手の首を持ちかえること、これが討伐証明になるのだ。

 また、持ち帰る必要が無いのは離れた村で出された討伐依頼。この場合は出資者に首を出したり、出資者の目前で相手を倒せば証明が成り立つ。なのでギルドには換金に戻るだけである。

 ギルド職員を連れて冒険するのもありらしい。追従用の追加料金が凄い取られるらしいけど。

 ああ、出資者さんやギルド職員から討伐証明書とかいうの貰うんだっけか。それをギルドに持っていけば換金できるらしい。


 今居る賞金首は……と、盗賊頭のコブン・ナッタ。コボルトのレオス・コボルト。レッドオーガのグラウスト・オーガ。スマッシュクラッシャーのメニス・クラッシャー。バーゲストのポチ・バーゲスト。ロリコーンのヘイオ・ロリコーン。ウインドドラゴンのメガイス。

 うん、なんかいろいろいるなぁ。


「あら? どこかで見たと思ったら、アルセちゃんじゃない」


 まぁ奇遇。と、どこかで見た気がする女の人が近づいて来た。

 こぼれんばかりの胸が印象的な……はっ! メリエさんか!

 やばい、胸で名前思い出したよ。


 にこりと微笑みを向けるアルセ。

 メリエもそれを見てあら。と微笑んでいた。

 きつい目をしているので大人びた印象を受けるメリエが笑うと、ちょっと愛らしく見える。

 この人何歳だろう? 20代後半かなっと思ってたけどこの笑顔見ると10代と言われてもしっくりくるな。


「ねぇねぇお姉さん、これってなぁに?」


 ネフティアとアルセが普通に見てたから聞きづらかったらしいアニア、折角話の分かる人が来てくれたと知り、メリエに質問を始めていた。


「これ? ああ、賞金首のことね。これは……」


 そして説明を始めるメリエ。僕も初めはその説明に耳を傾けていたんだ。

 アレに……気付くまでは。

 不意に、気付いてしまったんだ。

 なんか肌色の物体が颯爽と歩いて行くのに。


 あれ? バズこっちに来たの?

 なんて思ってしまった。

 だが、違う。胸があった。

 そのオークには胸がある。つまり女性だ。


 そのオークが、ギルド内部を我が物顔で歩いていた。

 周囲には数人の冒険者がおり、どうやらどこかのパーティーに入って依頼を受けたようだ。

 彼女を入れると男女四人組のパーティー。どうも即席パーティーらしい。自己紹介してる。

 すぐにギルドから出てしまったが、見間違いじゃない。奴だ。奴がいる。

 風に乗って名前が聞こえた。名前も、一致した。


 何故だ? 奴は田舎の村で余生を過ごしているはずじゃなかったのか?

 マズい、非常にマズいぞ。バズたちがこの町に住むことになればほぼ確実に鉢合わせする事になる。

 絶対に、絶対にそれは阻止しなければっ。

 王都に、血の雨が降る。

 否、下手したら、嫉妬の悪魔に対抗するために憤怒あたりに目覚めたオークが激突して国が滅びかねん。


 一人呆然とする僕。この事実を知るのは僕だけ、しかし僕に皆に伝えることは難しい。それでも、皆に伝えなきゃ。これは、最優先事項だ。

 彼女、セレディをバズとエンリカに会わせてはならないッ!

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