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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 そのすれ違う者たちを豚は知らない
242/1818

その新たなる波乱の予感を、僕は知りたくなかった

 えー、というわけで、戻って参りましたマイネフラン王国でございます。

 まさか戻る理由が新婚さんにご両親が耐えきれないので責任持ってカインたちが新しい家探す面倒見てくれ。という意味不明な理由であるなど予想もつかなかった。

 いや、なんとなく想像は出来てたけどそうなると信じたくなかった。


 今やラブラブっぷりを存分に発揮する豚とエロフ。

 既に豚もバカップル現象に巻き込まれたようで当初の威厳が感じられません。

 落とされやがったか。

 エンリカはバズ・オーク、いや、今はバズ・エル・ぱにゃぱだっけ? 面倒だからこれからはバズと呼ぶことにするよ。


 とにかく、バズの左腕に絡みついて長男のハーフエルフを抱いているエンリカ。

 バズは右手をバンリと繋ぎ、まさに親子で散歩中ですといった様子で僕らに付いて来たのである。

 殺意? 湧きましたとも。

 のじゃ姫にござる召喚して貰って斬り捨てていただこうかとか

 アルセにアルセギン召喚して貰ってバズの目の前で破裂させてやろうかとかね。


 ああ、そういえば帰り道にもロリコーン出て来たよ。

 遠くから近づこうとしたロリコーンだったけど、のじゃ姫がそれに気付いておじゃる召喚。

 蹴鞠喰らわせて昏倒させた隙に平野を越えました。

 そういえば、このフィールド、ロリコーンしか見かけなかった気もするな。


 多分奴らのせいで脅威を感じた魔物たちが逃げたのだろう。

 行きににっちゃうとか見かけたし、何種類かの魔物はいるはずだろうからね。

 何時か、見れる日が来るかどうかはわからないけど。


 まぁ、とりあえず、戻って来ましたマイネフラン。

 丁度昼時だったのか結構賑わう酒場街。

 昼間っから酒を飲む酔いどれ連中が騒いでおり、店員さんがてんてこ舞いになってる姿が扉越しに見えたりする。


「ふぅ……なんか随分長旅だった気がするな」


「そうねぇ……あまり日は経ってないはずなのに一年くらい旅した気分だわ。シャワー浴びたい」


「どうします? 宿先に取ります? それともお昼?」


「丁度この辺りが飲み屋街だ。食べて行こう」


 リエラの言葉にクーフが応え、カインが同意する。


「ブヒ」


「オルァ」


「のじゃー」


 人外共が何かくっちゃべっているが、僕は知りません。

 団子、ここの団子は食えるのかみたいなことをのじゃ姫が言っているが、残念、この近辺に団子はない。

 餅であるのは非常食としてのみだ。かったく乾燥したのをお湯で戻すタイプの非常食である。


 あ。あそこ、カインが正面潰した店だ。

 正面の壁完全に壊れたままにしてオープンカフェみたいな酒場にしたらしい。

 ビアガーデンと言っていいものか、まぁ、とりあえず盛況らしいので問題はなさそうだ。


 カインたちが入った場所はエルフの酒場ではなく別の酒場だった。

 やはり酔った勢いとはいえ迷惑掛けた店に行くのはちょっとアレだったようで、場末のあまり人のいない酒場へと入っていた。


 西部劇のようにカランとドアをくぐると、室内にいた客たちが睨むようにカインたちを見る。

 かなり強面が多い。

 刀傷がある奴はまだマシなほうで、顔の半分が焼けたような男もいる。


 マスターも強面の髭男だった。

 もっさもさでムッキムキのムッチムチ男が小さなグラスを拭いている様はもう、異様としか言いようがない。

 ここ、ちょっと他の酒場と一線を画してるぞ?


 カインもさすがに空気を察して回れ右しようとしていたが、クーフは逆に果敢に入って行った。

 筋肉質の彼はこの空間に居ようとも殆ど遜色はない。

 そんな彼はカウンターに向うとマスターに聞いた。


「ここに食事は置いてあるか?」


「……ねぇな」


「そうか、邪魔したな」


 交わした言葉は少なかったが、マスターその他面々が僕らを歓迎していないのは理解した。

 クーフは入口に戻ってくるとオープンテラス化した店を指す。


「あちらに行こう。覚悟を決めろ」


 クーフの言葉に、誰も二の句は継げられなかった。

 そして僕はふと気付く。

 あいつ……前にリエラにぶつかって衛兵に突き出された盗人?


 テーブルの一角でこちらを見つめていたのは、確かにあいつだった。

 物凄く怒りに満ちた顔で皆を睨んでいたけれど、カインたちは誰も気付いていないようだ。

 ……ちょっと、注意しといたほうが良いかな?


 ビアガーデンっぽいその店に向うと、カインたちに気付いた店主が現れ、怒るばかりか感謝し始めた。

 あそこで暴れてくれたから閑古鳥鳴いてた自分の店が大繁盛店になったのだとか。

 すげぇ、カインと辰真が酔った勢いで壊したおかげで大繁盛って、商売って何が売りになるかわからないな。


 名前も、火鼠酒処というよく分からない名前から、アルセイデスの休息所に変えたらしい。

 売りはアルセ姫護衛騎士団が空けた室内と外を隔てた砕かれた壁スペース。

 少し外までテーブルが並べられるようになったおかげか、収容人数も増えて店内の内装や盛況ぐあいも見れるので近くを通った人々がここ賑わってるからここで食事するか。と寄ってくるのだそうだ。

 そしてそれが更なる客を呼んでくる。


 壁が壊れた御蔭で集客能力が爆発的に上がったらしい。

 御主人はホクホク顔で僕らを出迎え、ただで食事をして構わないとか言ってくれた。

 よかった。プリカを連れて来なくて本当に良かった。

 あいつ連れて来てたら絶対この店潰してた。


 カインと辰真は罪悪感があるようだが、やられた本人がむしろ感謝してるのでそこまで悪いことにはなっていなさそうである。

 ちなみに、僕の食事はリエラが余分に頼んでくれました。ポシェット入れて後で食べとこ。

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