その姫の実力を、彼らは知らなかった
「のじゃー!」
のじゃ姫
種族:偽人 クラス:丁髷族
装備:懐刀百舌鳥、赤い着物、団子、轟炎石
種族スキル:威嚇・小
おじゃるでござるのじゃー:無礼でおじゃると殿中でござるを多数生成する。
のじゃ姫なのじゃー:強い自己主張。挑発と同様の効果。敵を自分に釘付けにして狙いの的を絞る。
甘いのじゃ:攻撃に対する懐刀によるカウンター攻撃。
団子を喰らうのじゃ:団子串を投げる遠距離攻撃。
お団子なのじゃ:お団子を食べてHP・MP・TPを回復。どこから調達しているかは不明。
おさらばなのじゃ:戦況が不利になると自身に火を付け焼身自殺を図る。
ドロップアイテム・懐刀百舌鳥・赤い着物・みたらし団子・轟炎石
もはや僕は突っ込まない。ツッコミは入れないぞ。
なんだよおじゃるでござるのじゃって。……っは。ツッコミ入れてしまった。
と、とにかく、のじゃ姫のステータスからしてアレが今回のボスと見てよさそうだ。
そんなのじゃ姫はワンバーカイザーの頭上で串団子を両手に持ってそれを天高く掲げながら「のじゃー」と声をだしている。
その声に反応するように動き出す魔物たち。
そして鼻血を吹きだすロリコーン紳士。
うん、幼女出て来た時点でお前が戦力外なの知ってた。
しかし、こいつが使える事もまた事実。
なんとかのじゃ姫以外の殲滅に役立たせたい。
……仕方あるまい。
僕はリエラに近づくと魔物図鑑を使って指示を出す。
ワンバーカイザーを見せた後にプリカのステータスを見せる。
初めは何のことか理解していなかったリエラだったが、はっと気付いて指示を出す。
「プリカさん、ワンバーカイザーをお願いします!」
「いいの!? 矢も尽きかけてたから接近戦挑んで来る!」
「お願いします。それとロリコーン紳士、アルセの護衛をお願い。殿中でござるを近づけないで!」
「フォっ!?」
声を掛けられると思っていなかったロリコーン紳士が変な声を出す。
というか、それがお前の鳴き声か。
とりあえず、アルセの手を操って軽く振ってやる。
その瞬間。彼は鼻血をハンカチで拭いさり、男の顔になった。
まるで、お嬢さん、あなたには命に代えても指一本触れさせません。
そう告げるような視線を送ってくると、踵を返して迫り来る魔物たちにステッキを向ける。
さぁ、ここから先は通行止めです。お嬢さんに触れたいのならば私を倒して行きなさい。
そんな声が聞こえた気がした。単純な奴め。
「ネフティアは遊撃。指示とか必要無いだろうから自分の判断で蹂躙お願い!」
チェーンソウの電源を入れたネフティアは頷く代わりに走り出すと、さっそくシューストリングナイトの串を伐採。
中央から消え去った上半身がポテリンの頭上に落下していた。
「アニア、皆の補助よろしく、アルセの傍にいて!」
「ああ、せっかく入ったパーティーはまさかのボス戦で主力を残して壊滅。私はそんな不幸なただ中にいて丁髷男共に蹂躙されるのね。ああ、いけないわ、私は一人なの、皆でなんてそんな。や、優しくしてくださ……はいな!」
なにか妄想していたアニアはリエラの声で慌ててアルセのもとへと飛んで行く。
ハイピクシーになったばかりの彼女は体が一回り大きくなったせいで飛ぶのも一苦労なようだ。
慣れるまでは多少動きがぎこちなくなるのだろう。
ただ、今回に限ってはそれが一番の枷になる。
「惑わしの草地」
走り込んでいた殿中でござるたちが、突如バラバラの方向に走り出した。
中には壁にぶつかっている殿中でござるもいる。
そして仲間同士でござる! といいながら斬り合い始める殿中でござる。
どうやら鞘同士が当ったせいらしい。そういうのは武士らしいのね。
そしてアルセは種を蒔いてアルセギン召喚。
ネギソードを生成して踊りだす。
うん、いつも通りですねアルセさん。
皆への指示を出し終えたリエラはゴールドダガーを手に無礼でおじゃるに斬りかかる。
「だぁ!」と気合いを入れて一撃。
無礼でおじゃるは名刀桜吹雪でこれを受け止める。
だが、続く葛餅の一撃を避けることなどできなかった。
高速で振り抜かれるアルセソード改の一閃。
無礼でおじゃるの首が舞う。
間近で見せられたリエラがうぁっと嫌そうな顔をするが、直ぐに離れて別の敵へ。
今は嫌悪感で吐いたりしている暇はないのである。
「「「ござる!」」」
三方向から丁髷砲。
「「おじゃる!」」
さらに蹴鞠による遠距離攻撃。
アルセ向けて飛んできた蹴鞠はロリコーン紳士のステッキに中心を貫かれステッキの装飾へと早変わり、リエラへの一撃は葛餅が撃破し、三つの砲弾に狙われたネフティアは近くにいたポテリンを盾にして逃れた。
そして、ワンバーカイザーの悲鳴が響く。
暴れ出すワンバーカイザー。その背後にプリカが食いついている。
生きたまま踊り食いされるワンバーカイザーが暴れるが、プリカは気にせず彼を捕食していく。
そして、のじゃ姫が落下して来た。
目の前にはリエラ。
好機とばかりに葛餅がアルセソードの一閃。
真上から真下への一撃を、しかしのじゃ姫は伸ばした手に持った懐刀百舌鳥で受け止める。
「あまあまなのじゃ!」
さらに反撃とばかりに飛びかかる。
驚くリエラに団子串を持ったまま踊りかかるのじゃ姫。その目の前に、アルセギンが飛び込んだ。
驚くのじゃ姫とリエラ。咄嗟にリエラの前面に広がる葛餅。
葛餅が硬質化するのと、串が刺さってアルセギンが破裂するのは、同時だった。




