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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四部 第一話 その自称神との遭遇を僕以外は知らない
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その最後の扉を開く最初の一人を、僕は知りたくなかった

「さて、ここか」


 無礼でおじゃるが居たボス部屋の先にあったのは、待機部屋らしい。

 なぜか丸いテーブルが中央に存在し、10脚の椅子が存在していた。

 その先には何も無い部屋に向うための扉があり、今は全開になっている。


 扉は下から上にせり上がって来る扉らしく、おそらく誰か一人が入った時点で他の邪魔者が入らないように扉が閉まるシステムなのだろうとカインとネッテが言っていた。

 扉の横の壁には文字が書かれている。


「ここに文字があるな。何だこの文字?」


「うーん。どっかで見たような文字なんだけど、読めないわね?」


 僕ならどんな文字も日本語化してるから読めるけどね。

 どうやらこの文字は……


「ここは試練の間。ここに一人きりで入る事で試練を受けることが出来る。試練を乗り越えれば新たな力を授けよう。そして全員で入るのならば、最後の階層ボスが現れる」


 ということです……全部クーフに言われたけどね。


「読めるのかクーフ?」


「うむ。懐かしい文字だがどうやら我の知る文字のようだ」


「そうなの……あ、そうだわ。これ、アルセの書いていた文字に似てるのよ!」


 ネッテがふと気付いてクーフに告げる。

 あれ? ってことはまさか、ここに書かれてるのはまんま日本語ですか?


「こ、これって、もしかして、クーフが居ればアルセとのコミュニケーションできたんじゃ……」


 今更発覚した衝撃の事実。

 クーフが居れば、僕の存在が明るみに出ても問題が無い!?

 これは、これはもしかして……僕、誰も知らない生物、卒業の可能性があるんじゃ!?


 人知れず拳を握る僕。

 ようやく、ようやくここに漕ぎつけた。

 長かった。相手と意思疎通をこなすという、ただそれだけのことに費やした時間は余りにも多かった。

 僕は今、感動している。何かに!


 そんな僕を余所に、カインたちは誰から入るか相談している。

 ここからは一人だけの試練を行うのだ。

 誰かが入って試練を受け、次の人に大丈夫かどうかを教える。


 様子見も兼ねた一人目だ。

 せっかくなので強い奴から向うべきかとカインはクーフに視線を向ける。

 しかし、クーフは一人目なのだからリーダーが行くべきじゃないかと告げる。

 ネッテやリエラも賛成らしい。


 どうやらカインが一番に向う事が決定したようだ。

 が、彼らは気付いていなかった。

 アルセさんがまた暴走していることを!


 僕が気付いた時、アルセはとてとてと扉に向けて歩いているところだった。

 ちょっとアルセ、いきなりそこに向うのはダメでしょ!?

 ロリコーン紳士もアルセ可愛いよアルセ。なんて顔でほっこりしてないで止めろよ!?


 慌てて走る僕は直ぐにアルセに追い付く。

 アルセを止めようとしたその刹那。急にアルセが視界から消えた。

 丁度扉に入る直前の場所で、なぜかアルセはその場にしゃがんで何かを掴む。


 ああ、そっか。アルセはその何かを手に入れるために歩いてたのね。

 納得した僕の足は勢いのままアルセに蹴っ躓いて地面を転がる。

 ジャッと何かがせり上がる音が聞こえた。


 いたた……

 全くアルセの暴走には困ったものだ。

 そのうち絶体絶命の状況に……?


 顔をあげると、部屋の中には誰もいなかった。

 いつの間にか扉が閉まっている。

 アルセも居ない。

 誰もいない部屋に一人、存在エラーな僕がいた。


 ……あれ?

 ……え? もしかしてここ……試練の間?

 はい、一番最初に試練を受けるのは、僕でした(笑)。

 どうしよう。


 向こう側にももう一つ扉が見える。

 どうやらまだ部屋があるらしい。

 ただし、扉は閉っているので行くことは出来ない。

 でも、おかしいね、試練のはずなのに敵出て来てないんですけど?


 不安になりながらも一歩前に踏み出した時だ。

 前方の床から光が溢れだした。

 よく見ればそこだけ水晶体のレンズみたいな作りになっている。


 そこから徐々にせりあがってくる人型の生物。

 銀色に輝く身体。アーモンド形の巨大な黒目。

 細い腕と細い指。頭でっかちのその生物はどうみても……


「グレイだ!?」


 思わず口にした僕に、そいつはやぁとばかりに片手をあげた。


「ようやく会えたね存在エラーのバグ君」


「……え? もしかして、僕のこと、理解してる?」


 思わず声に出して話す。そういえば、この世界で初めての会話じゃないのか?

 折角の異世界人ファーストコンタクトがまさかの人外、しかも未確認生物の一人グレイじゃないですか。

 地球外生命体として地球でよく知られた生物だ。

 何でここにそんなのが出て来るの? しかも僕のこと理解してるし。


「まぁ、とりあえず自己紹介をしましょう。初めまして神です」


「はぁ、神っすか、僕は……はぁっ!? 神ぃ!!?」


 どうやら僕は、本当に未知の生物とのファーストコンタクトに成功したようです。

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