表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四部 第一話 その自称神との遭遇を僕以外は知らない
229/1818

その下層ボスの能力値を、僕は知りたくなかった

「撒けたか!?」


 息を吐いて周囲を確認したカインは、ござるの声が聞こえなくなったのに気付いて全員を確認する。

 クーフ、ネッテ、リエラ、葛餅、ネフティア、アニア、プリカ、辰真、アルセ、知らない紳士風のおっさん。うん、全員いる。そんな顔をして安堵の息を吐く。


「焦った。さすがにあの数はないだろ」


「そうね。しかも殿中でござるとか聞こえたら援軍が来るの確定だし、下手したら無限に湧く殿中でござると戦わなきゃならないところだったわね」


 お嬢さん、飴をあげよう。ロリコーン紳士がアルセとネフティアにイチゴ味の飴をあげていた。

 二人して顔を見合わせ、ネフティアは無表情に、アルセは満面の笑みで飴を舐め始める。

 あ、ついでにモノ欲しそうなアニアにもあげてるぞ。畜生、紳士だ。


「ミニアルセに感謝だな。結局あれなんだったんだ?」


「よく分かりませんけど、アルセが地面に何か蒔いてましたよ? 魔物図鑑で見てみましょうか?」


「そうだな。ちょっと落ち付いたみたいだし、頼むぜリエラ」


 そしてリエラとネッテがアルセの能力値を確認する。

 アルセギン発見。

 唖然とした口が塞がりません。


「アルセの頭の葉っぱ、いつの間にかツボミができてるなと思ったら……」


「そういえば、証拠として持って帰ったはずのバスケットに入っていた野菜が全て無くなっていたな。誰が食べたのかと思っていたが……」


 と、クーフが納得したようにふとアルセを見る。

 お嬢さん落としましたよ? と殿中でござるが持っていたらしい刀をうやうやしく差し出してくるロリコーン紳士。

 「おー?」と興味深そうに手に取ったアルセが振りまわす。

 鞘に入っているから当っても大丈夫だけどさ、ロリコーン紳士さん、痛くないの?


「おい、あれはロリコーン紳士ではないか?」


「あれ? そういえばいつの間に?」


「なんであいつがここにいるんだ?」


 全員今気付いたのかよ!?

 やはり彼らは当てに出来ない。ロリコーン紳士、お前を倒すのはどうやら僕の役目らしいな。


「あ、見てくださいこれ、忠誠変態紳士の姫なんてスキルがありますよ」


 嘘だっ!!?


「にしても、これはまた一気にスキルが増えてるな。なにしたらこうなるんだよアルセは……」


 あの野郎、認められたというのか。アルセに、忠誠騎士の一人だと、認められただとっ!?

 リカードさん僕に力を。僕は、やるよ。あなたがやれなかったことを、殺るよ?


 そんな僕の決意に気付かない面々は、行動を開始する。

 どうやら既に最下層に辿りついていたようだ。

 あのモンスターハウスの後もかなり走ったからな。


「ここだ。ここが下層のボスが居る場所だ。順当にいけば殿中でござるの上位個体が出るだろう。一度そいつを倒して向こうの部屋に向ってから、試練開始だ。用意はいいな?」


 カインの問いに皆が頷く。

 さぁ、試練前の守護ボスとやらを拝ませて貰おうか。

 扉を開き、皆が入る。


 部屋の奥には昔の合戦などでよく見かける垂れ幕があった。

 椅子のような物に座る殿様みたいな格好の偽人、それを守るように配置された殿中でござる。

 ボスキャラっぽい白塗りの顔で丸い眉、あれはどう見ても麻呂だ。鎌倉時代とかその辺りの顔をしている。そいつに向って魔物図鑑を掲げる。


 無礼でおじゃる

  種族:偽人 クラス:丁髷族

  装備:名刀桜吹雪、紋付き袴

  種族スキル:威嚇・激

      無礼でおじゃる:殿中でござるを多数生成する。

      蹴毬:毬を蹴って遠距離攻撃を行う。

      真空波斬:横一線に走る剣閃にさらに衝撃波が加わる。

      丁髷砲:頭の上にある筒で砲撃。

      武士は食わねど高楊枝:戦闘を行っていない時、立っているだけでHP・MP・TPが徐々に回復。

      介錯:戦況が不利になると殿中でござるを召喚し自害する。

  ドロップアイテム・名刀桜吹雪・紋付き袴・毬・丁髷砲


 うわぁ……なんかもう、なんかもうどうしようもない。

 僕はもう、ツッコミ入れないぞ。

 これはツッコめと指示されてるようなスキルだけど、敢えてツッコミ入れないぞ!


「おじゃる!」


 無礼でおじゃるが声を発する。

 そして抜刀する殿中でござるたち。

 その数は10体。


「ござる!」


 一斉に駆け寄ってくる殿中でござる。

 しかしこちらも既に闘う準備は出来ていた。

 辰真が武器を手に走る。

 さすがに拳で戦うのは危険と見たらしくアルセの棍棒で激突。


 殿中でござるの一体が刀を振るう。

 これを棍棒で弾き飛ばし、気合い一閃。

 オルァと頭に打ち下ろす。


 うわぁ、陥没した。

 さらにクーフが巨人殺しで五体一気に薙ぎ払う。

 カインが一人、ネフティアが三人ともうリエラの出番すらなく楽に……


「無礼でおじゃる!」


 無礼でおじゃるが声を発すると、虚空から生み出されるように現れる10体の殿中でござる。

 何コレ、いや、能力値にもあったけどさ、これはいくらなんでもチート能力じゃないですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ