その未知の存在を、僕は知りたくなかった
「この辺りにあったはずだよー」
遺跡の場所を見たアニアは、どうやら妖精仲間と一度遺跡に来た事があるのだとか。
丁度エルダートレントにちょっかいを掛けて追われたところで隠れたのだという。
彼女の案内のもと、僕らは新たな冒険に出発していた。
今のところ出現したのはタマネギンとウッドボア。
一度スプリガンを見かけたけどアニアが世間話をしただけだ。
彼と戦う事は多分今後も無いだろう。ないと思いたい。
だって妖精に危害を加えているところを彼らに見られると、地の果てまでも追って来るとか説明に書かれてたし、触らぬ神に祟りなしだ。
結局エルダートレントには会わなかったなぁ。
まぁいいんだけど。
しかし……と僕は仲間を見回す。
カイン、ネッテ、リエラ、葛餅、辰真、クーフ、ネフティア、アルセ、僕。
新規加入? のアニアとプリカという面々だ。
バズ・オークやエンリカというかなり強力な戦力が居なくなった半面、補助に特化した悪戯妖精と能天気な命中率の悪いエルフが仲間になった。
……うん、完全に戦力ダウンです。
あ、ちなみにミクロンさんはエルフニアに置いてきました。あいつエルフ見てふおおおおおおおお!? とか興奮してたから連れて来る必要無いだろう。戦力外だし尻の療養も兼ねて放置である。
「こいつか」
それは森には不釣り合いな遺跡だった。
遺跡……というか、遥か昔に墜落した戦艦? みたいな形をしている。
丁度船底からデッキ部分までが土に埋まったような、船の上部分に見える。
入口と思われる長方形のドアから内部に入れるらしい。
周囲は蔦などに覆われ自然に浸食されているものの、むしろ趣があって……カシャ
CG激写は今日も正常反応です。
いや、風景撮ってどうするよ。
まぁ凄く素敵な風景だけど。
「中は暗いな。松明使うか」
「じゃあラ・ギ唱えるわね」
僕らはカインを先頭に、恐る恐る戦艦内部へと入って行く。
カインが持つ松明だけが周囲を照らす……わけじゃなかった。
アルセが自家発光を始めてむしろ明るいです。
カインもそれを見て松明意味なかったかなと落胆していた。
結局カインは松明の火を消して鋼の剣を手にする。
アルセの光を頼りにして、彼らは周囲を警戒しながらダンジョン探索を始めるのだった。
「ランツェルさんがいうにはこの遺跡の最深部に目的の場所があるらしいわ。ボス部屋を越えた先にある部屋らしいけど、普通に全員で入れば普通のボス、一人ずつ入ると試練の始まりだそうよ」
「ここの魔物、いい匂いするけどなんかすごい変なんだよね」
「なんですかそれ? 変?」
「そうなのよリエラ。なんかね、串に刺さってるような存在がいて、剣を振りまわしてくるの。あれは食べたくなるけど変だよ」
アニアの言葉になんだそれ? といった顔をするリエラ。
確かにアニアの説明では意味不明だ。
「はぁ……また遺跡探索か。ここ最近で二つ目だぜ。昔は年一出来ればいい方じゃなかったか?」
「ふふ。でもカイン悪い気してないじゃない」
「そりゃあ、俺だって男だし、未知の場所を自分の足で歩破するのは憧れるもんだぜ。なぁ……ってバルスもいねぇし辰真やクーフに男のロマン話してよかったっけ?」
「問題無い。我も水晶勇者と共に無数の遺跡を探索したしな。むしろその遺跡群から学んであの墓を作ったのだぞ」
男のロマン。それは何千年経とうと変わらないらしい。
話のわかる存在を知って、カインがテンション高めに「だよな」とクーフと話しだす。
ソレを見たネッテとリエラがクスリと笑っているのは、子供ねぇ。みたいな思いだろうか。
辰真がおもしろくなさそうな顔をしているのはおそらく話が通じないから二人の会話に参加できないもどかしさのせいだろう。
舌打ちして先行を始めたのでアルセに慰めて貰うとしよう。
と、アルセを引き連れ辰真に触れようとした時だった。
ワンワン。と、何かが聞こえた。
犬?
僕が立ち止まったことでアルセも立ち止まる。
光源が止まってしまったので、気付かず歩いていたカインたちも直ぐに気付く。
どうしたアルセ? と応えて直ぐ気付く。
「敵か!?」
「そんなっ。何時の間にこんな近くに聞こえるまで……」
もともと僕らの索敵を担当していたのはバズ・オークだった。
臭いに敏感な彼だからこそ高い索敵能力で敵が近づく前に戦闘態勢を取れていたのだ。
そんな彼が居なくなっている今の状態では、索敵能力が極端に落ちることは当然だった。
そして、索敵すべきベテランのカインとクーフが話し込み、ネッテもリエラもそんな二人に気を取られていた。バズ・オーク任せにしていた弊害だ。
初めに気付いたのはネフティアだが、彼女は自分の武器を構えはしたがスイッチを入れていない。そのせいで誰も気付けなかったようだ。
バズ・オークの次に索敵能力があるのはネフティアか。喋らないから彼女の動きはしっかり見とかないとだね。
「狼モドキ……でしょうか?」
「いや待て。なんか匂いが……すっげぇ美味そうな匂いだな」
確かに、何か匂いが漂ってきました。
犬のような声のもとから流れて来ているらしい。
そして、アルセの光源へと現れたのは二体の……ハンバーガーだった。
……え?
僕は思わず目を擦る。
四足で駆けて来る犬耳のハンバーガーが二匹いる。
何この珍妙生物?
魔物図鑑に登録。
名前、ワンバーガーだそうです。
ワンコ型ハンバーガーだからか?
種族はファーストフーダー? 何コレ?
犬耳と両手足以外は食用可能だそうです。食べたくないな……
というわけでワンバーガーシリーズ出現です。
他の作品で見かけたぞ? という方がいらっしゃいましたらご一報を。その時は別の魔物……ニャンバーガーとかに差し変えようと思います。
ワンバーガー
種族:ファーストフーダー クラス:ワンバーガー
・両手両足の生えたハンバーガーに犬耳が生えた魔物。
あの独特の美味しそうな匂いを醸しながら駆けて来る。
犬耳と両手足以外は食用可能。
ドロップアイテム・ハンバーガー・犬耳




