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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四部 第一話 その自称神との遭遇を僕以外は知らない
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その遺跡の存在を、僕らは知らなかった

「プリカの命中率を何とかしてほしい?」


 バズ・オークとエンリカの結婚式が終わり、なんやかんやでエルフニアに滞在していた僕らのもとへ、プリカのお爺さんがプリカと共にやってきた。

 どうやら武器が出来上がったからわざわざ届けに来てくれたらしい。


 それでまぁ、なんかカインたちと話をしていて、プリカの命中率低下補正の話になったんだ。

 そしたらプリカのお爺さん、ランツェルさんがそんな事を告げて来た。

 話によると、妖精郷を越えた先、エルダートレントの生息域にとある遺跡があるらしいのである。

 そこでは試練を受けることが出来、その試練を越えることが出来れば、自分の弱点を克服したり、新しい力を手に入れることが出来るのだとか。


 カインたちも初耳らしく、ランツェルさんの話に聞き入っている。

 どうやら自分達もその試練を受けてみたいようだ。

 まぁ自身の強化に繋がるなら受けてみるのもありか。

 僕も出来そうならやってみようかな。


 バズ・オークから受け取ったアルセソード改をポシェットにしまい、僕はアルセを見る。

 拝啓皆さん、ついにアルセの頭の双葉が成長し、ツボミをつけるまでになりました。

 一体この先どんな花が付くのか楽しみです。


「まぁ、いっか。別に目的地とかはねぇし」


「そうねぇ。お金もまだ余裕あるし、折角だし行ってみましょうか」


「仔細ない。行きたくない奴はいるか?」


 クーフが賛成しつつ周囲の意見を聞いている。

 しかし、誰も異を唱えない。

 どうやら皆同行するらしい。


「だけど、エンリカは今回家にいなさい」


「え? でも……」


「さすがに子供連れで行く場所じゃないわよ。ね、バズ・オーク」


 バズ・オークとエンリカの両親、リカードさんとルイーズさんの仲は良好とはいえない。

 しかし、結婚式で神の奇跡を見せられた両親は一応歩み寄りを始めていた。

 何せバズ・オークとエンリカの婚約を神が認め祝福したのだから、それを台無しにする訳にも行かず、彼らは不承不承バズ・オークをエンリカの夫として認めようとしているのである。


 だから、言えない。言える訳がない。

 あの神様の祝福っぽい光。妖精さんの悪戯ですとか、言えるわけがない。

 もしもばれてしまえばおそらく共謀とか疑われて妖精は根絶やし、バズ・オークは食卓に並ぶこととなるだろう。

 頼むぞバズ・オーク、エンリカを確実に幸せにしてくれ、お前達次第で一つの種族が消えかねないんだからな!


「じゃあ、その遺跡って奴に行ってみるか。アニアはどうする?」


「行っきまーす」


 アニアはネフティアの頭の上で元気に答える。

 小型の妖精だったはずだが、気のせいか成長し始めているようにみえる。

 どうやらロウ・タリアン戦に従軍したせいで経験値を大量摂取したため、もうすぐハイピクシーになれるのだとか。


 ツッパリとかはテンションでランクアップするけれど、通常のランクアップは強敵を何体も倒すことで経験値を積み上げ行うモノらしい。

 妖精の場合は悪戯がそれに当るんだと。

 悪戯すればするほどに強大な力を手に入れる妖精。もちろん、敵対する魔物を倒すだけでも経験値が手に入る。


「多分次の冒険でハイピクシーになれるのよ! もうロッテアに弄られる私じゃないわ!!」


 妖精にも身分階級みたいなのはあるらしい。


「ちなみに、妖精の通常進化はハイピクシー、ヌェルピクシー、ネオピクシー、クイーンまたはキングになるのだよ」


 と、胸を張って講義を始めるアニア。

 誰も聞いていないのは気付いてないらしい。

 そんな皆はランツェルさんに遺跡の場所を聞いたり、新しい武器を確認していたりする。


 お、アレって魔導銃だ。

 リエラの魔導銃壊れたからなぁ。新しいの買ったらしい。

 エルフ製らしく緑色の小型の拳銃に見えた。


 辰真はアルセの蔦から造られた棍棒を見て感動している。

 なんか感慨深いものでもあるのか、それを肩に引っ提げ天井を見上げ涙ぐんでいた。

 見た目はその、バットにしか見えない。なにせ僕が落書きで書いたバイクに乗る不良の絵をランツェルさんに見せてこれを作れと力説してたからなぁ。

 不良にバット……確かに、しっくりくるなぁこの取り合わせ。


 ついでに、余ったアルセの蔦でネッテに杖を作ってくれていたランツェルさん。

 これはプリカを連れて行ってもらう報酬の前渡しなのだとか。

 ありがとうございますと受け取ったネッテだが、豊穣の杖の方が魔力補正は高いらしく、どうしたものかと困っていた。打撃力と耐久値はアルセスタッフのが高いんだけどね。


 プリカ自身もエルヴンアーマーという簡易の胸当てを取りつけ、肩パッドと下半身を守る防具を身に付けている。

 手には練習用の弓ではなくエルヴンボウ。エルフ製の緑色の弓である。

 エルフの魔法が掛かっているらしく長持ちするんだそうだ。


 確かに、彼女の能力は結構凄そうだから命中阻害能力が無くなれば普通にエンリカとタメを……張れそうにないね。

 彼女の強さはちょっと斜め上に行ってしまっている。

 何せ普通にグラップラー化してるし。


「よし、それじゃ善は急げだ。行こうぜ皆!」


 僕らはバズ一家をエンリカ宅に残し、全員で新しい旅へと歩み出したのだった。

 さぁ、僕たちの旅はこれから……これ、終わるフラグだった。

 とりあえず、気を取り直して行こうか。

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