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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その魔物の生態を彼は知らない
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その神のお告げの重要性を、彼女は知らない

 ギルドは昨日に比べると幾分人だかりが少なかった。

 おそらく、冒険者の殆どは行列に並んでいるせいだろう。


「この依頼ね」


 カウンターで依頼内容を受け取ったネッテが、用紙に眼を通し溜息を吐く。


「ちょっとカイン。この依頼、あんたたちちゃんと見た?」


「ああ。ただのにっちゃう探しだろ?」


「ええ、報酬1億ゴスのね」


 ……1億ゴス。まず間違いなく億万長者だな。


「い、いい、1億ですか!?」


 許容量オーバーで停止していたリエラが遅れて声を出す。


「大方、依頼名だけ見て放りだしたんでしょ、あんた気に入らない依頼は名前だけしか見ないから」


「うっ……」


 呻くカイン。どうやらネッテの言う通りらしい。

 しかし、なるほど。だから行列ができてるわけか。


「こりゃ逃せないわね。カイン、さっさとにっちゃう探しに行くわよ」


「あ、あれ? 私は?」


「リエラは教会。先に弾貰って来なさい。アルセも連れて行ってね」


「ええ――――っ」


 アルセを押し付けられたリエラは不満を口にする。

 しかしネッテもカインも彼女を無視してにっちゃう探しへ向ってしまった。

 二人とも目が$マークになっていたのは気のせいだろうか? あ、でもこっちのお金の単位はゴスだから目がGosになるはずだ。やはり僕の見間違いか。


 リエラは自分が参加できない事に不満たらたらで、なおもアルセにアルセも行きたいよねぇとか言っている。

 まぁ、別に僕とアルセだけで向ってもいいんだぜ。とでも言えれば良かったのだろうけど、話ができないからなぁ。


 僕はアルセと共に先にギルドをでることにした。

 それに気付いたリエラは、さすがにアルセを迷子にさせる訳にはいかないと、教会へと向うのだった。




 教会に付くと、シスター・マルメラと神父が長椅子の一つに座っていた。


「あの、何してんですか?」


 彼ら以外誰も居ない教会。

 リエラもさすがに足を踏み入れづらかったようで、入口付近から二人に声を掛けていた。


「おや、お待ちしておりましたよ」


「この時間は誰も来ねぇんだよ。ペド神父の噂が噂だからな。こんなクソ教会より正式な教会に向うんだ。ここに来んのぁ余程のバカか冒険者共だ」


 ふんぞり返って座っていたシスターが、リエラに顔だけ向けて言う。

 やっぱり、口が悪かった。

 信者ができないのはこのシスターのせいなんじゃないか?


「お、おやおやこれはアルセさん。ご機嫌麗しゅう」


 僕の思考を遮るように、神父が立ちあがる。

 アルセを見つけて急にテンションアップだった。

 気付いたシスターが舌打ちしながら立ち上がり、教壇後ろの通路へと去って行く。


「今日も来て下さるとは、これはまさに神の思し召し。まるで私とあなたが出会う運命だと告げられているようです」


 ……なんだろう、告白みたいに聞こえるのは?

 神父はアルセの前にやってくると、懐から何かを取りだす。


「本日はクッキーを焼いてみました。アメのように飲み込んで息が詰まる心配もありません。どうぞ」


 神父のクッキーを思わず受け取るアルセ。

 それを見たリエラはケダモノを見る目をしている。


「オラ、クソビッチ。依頼の品だ。持ってけ泥棒」


 シスターが戻ってきた。手には三つの銃弾。


「も、もうちょっと口調を何とかできませんか……」


 ただ口が悪いだけだとわかってはいても、ちょっと傷ついたらしいリエラ。

 思わず抗議の声を上げるが、シスターは無視だ。


「ああ、美しい。そのクッキーを咥えるあなたの表情、絵にして残しておきたいほどですよッ」


 この神父、大丈夫か?


「そういやぁ他のクソビッチと黒髪豚野郎はどうしたんだよ」


「あ、はい。高額依頼のにっちゃう探しに行きました。私達もこれから合流する予定なんです」


「にっちゃう探し……おいペド神父。せっかくだアレやってやれ」


「アレ? ああ、オラクルですか? よいですよ」


 オラクル?

 神父が教壇へと向い、教壇前で両手を広げる。


「天にまします我らが神よ、迷える子羊に天のさば……救いの道を示し給え」


 今、天の裁きとか言いかけなかったか?

 それからしばらく、神父は祝詞を唱え続ける。

 やがて……


「対象のにっちゃうはまだ生存いきています。耳にピンクのリボンをつけているようですね。ラッキーカラーは黄色です」


「だとよ」


 ……え? 今のがオラクル? 占いみたいなものだろうか?

 リエラも初めてのことだったらしく、ぽかんとした顔をしていた。


「今のがオラクルっつー奴だ。クソビッチには勿体無ぇ神様のお告げって奴だ。ありがたく受け取りな。有難すぎて昇天しちまっても知らねぇがな」


 本当に神様の声とやらかどうかはわからないけど、一応、気には止めてみるか。

 魔法が使える世界だ、当ってる可能性も高い。

 耳にピンクのリボンか。


 この情報、合ってるならばかなりアドバンテージになる。

 リエラは聞かなかったことにするみたいだったが、僕としては他の二人にちゃんと伝えた方がいいと思うんだ。

 でも、どうやって伝えるか……


 ……あ、そうだ。

 良い事を思いついた。いや、やることからいって悪い事か?

 でも、僕は見えないし、いいよね?

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