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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第六話 その結婚式にでた食事の素材を僕らは知る気はない
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その新郎が誰かを、エルフたちは知りたくなかった

 結婚式が始まった。

 エルフ達にとっても、僕たちにとっても忘れられない光景になるであろう悪夢の結婚式が。

 花嫁であるエンリカは今、村娘たちにより着付けに向っておりここにはいない。

 いるのは今回の新郎について知っている僕らのパーティーメンバー男性陣と、リカードさん、そして村長さんである。


 村長さんはかなり御老体のエルフだった。

 一体何千年生きてるの? と思える程にお爺さん化しているエルフだ。

 もういつポックリ逝っても不思議じゃない。


「こ奴が、噂のエロオークか」


 で、そんな村長はリカードさんの家にやって来るなり敵意の瞳でそういった。

 つるりとした頭をぺしんと叩き、ついでに家にいたマルケとアニアを睨みつける。

 おのれ妖精め。そんな文字が彼の背後に揺らいで見えた。


 ちなみに、エンリカにネッテとリエラが付いて行き、合流したプリカもそっちに行ってしまった。

 アルセとネフティアはこちらだ。アニアもネフティアの頭に乗っているのでそのまま居残っている。

 そんなアニアとマルケは揃ってネフティアの頭に隠れると、頭だけ出して村長に視線を向ける。


「ハゲだ」


「ハゲだね。つるっつるだよ」


「黙れクソ妖精どもがッ! 貴様等のせいで、貴様等のせいで儂はぁッ!!」


 入れ歯であれば飛び出していそうな勢いで叫ぶ。

 余程髪のこと気にしてるんですね。

 誰だよこの人の育毛剤、脱毛剤にした妖精はっ。


「ええいロッテアめ! 何時か奴の髪を毟り取って鬘に変えてやる!」


 ロッテアさんかよ!?

 妖精郷で見かけたよ! というか妖精郷の長やってる妖精じゃん!?


「あ、そうそう、ロッテアから伝言あるよー、あなたへの悪戯でハイピクシーになれたから妖精郷の長になれたよありがとー。だって」


「ぶっ殺すッ!!」


 わーきゃーと空中へ逃れるアニアとマルケ、完全に遊ばれている村長が皺がれた腕を必死に動かし飛び上がる。

 何この状況?


「あー、コホン。村長、そのくらいにしてこちらの話に戻って来てくれませんか」


「お、おお。すまんリカード。エンリカの婿についてだったな。チッ。命拾いしたな妖精共め」


 こわーいと笑いながら飛び交う妖精たちに未だ怒りをぶつけ足りない村長さんは、かわりとでもいうようにバズ・オークを睨む。


「オークと婚約とはまた前代未聞だが、本当にいいのかリカード、お前の一家は下手をすれば……」


「娘の選んだ道です。できるだけ応援しますよ、精霊への報告を、結婚式を行いましょう」


 本来、僕の知る結婚式は親族や友人を呼んで祝うものであり、外国式のウエディングと日本式の結婚式の二種類がある。最近は他にもいろんな結婚式があって、水中や宇宙で行ったりバンジージャンプしたり、果ては代理結婚などという訳のわからないものもあったりするけれど、こちらの結婚式は違うようだ。


 というか、エルフ式結婚は村単位でその中から結婚する相手を見付けるのが普通なので互いの親族で集まる必要が無い。

 村人総出で式を段取り、村長を司祭に見立てて精霊に婚約を報告する。

 それだけの儀式である。


 で、精霊に認められれば二人が光に包まれオーブ、というか精霊球が大量に舞って二人を祝福するのだという。

 さすがファンタジー。ちょっと憧れます。リエラさん、一緒にどうですか?

 いや、アルセ、その笑顔で見てみたいね。みたいな顔は向けないで。

 今のアルセは恋愛対象外ですよ。もうちょっとボンキュボンになってから……いや、そこまではいいか、それなりに成長してからね。


「さて、さすがにその防具では物々しかろう。エルフの正装を用意した。こちらに着がえろエロ豚」


「ぶひ」


 呼ばれる名前についてはもう、何も言う気はないらしいバズ・オーク。

 ただただ頷き着替え始める。

 って、この場で脱ぐのかよ。


「きゃああっ!? エロオークが裸になった!? しかもでっか。ちょっとマルケさん、ヤバいよ。乙女の危機だよ。私達襲われちゃうよ!?」


「あっはっは。すごい肌色。さすがオーク。身体ピンクとか……って、なにあのゴツイ身体!? めっちゃ筋肉ついとるやん! ちょ、ちょっとアレはええなぁ。じゅるり」


 何気にマルケが舌舐めずりしてるんだけど、妖精もエルフ同様趣味が悪いな。

 相手オークですよ。

 というか、死ぬ気かマルケ? ロウ・タリアンの最後を教えてやりたい。


「用意は済んだな。では、行くぞ」


 村長に続くようにバズ・オークが歩きだす。

 その服装は緑色の服。

 ロビンフッドを思わせる服を着た豚がいます。似合ってません。


 エンリカの結婚と聞いた村人が物見遊山で集まる中、ついに花婿が姿を露わにした。

 この日、エルフ史にその名を残す伝説のオーク、エルフを娶った豚物語の主人公が、その表舞台へと姿を現したのだった。

 当然、困惑と絶望と蔑みの混じった怒号が響き渡った。

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