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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第六話 その結婚式にでた食事の素材を僕らは知る気はない
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その偶然の奇跡を、彼らは知りたくなかった

「やぁ、お帰りエンリカ、そしてぺっ。やはり来たかバズ君」


 再びエルフニアに帰ってきた僕らは速攻でリカードさん達のもとへと向かった。

 出迎えたリカードさんが物凄い笑顔でエンリカを出迎え、バズ・オークに気付いて唾を吐き捨てた。

 ここ室内ですよ?


 どうやら記憶は戻っているらしい。

 相変わらずバズ・オークを殺意の視線で射抜いている。

 そんなリカードさんに、バズ・オークは神妙な顔で買い物籠を差し出した。


「ん? 何かね?」


「ロウ・タリアンのドロップアイテムですお父さん」


 エンリカが伝えると、リカードさんはなぜか首を捻る。


「それを渡してくれるのはイイのだがねエンリカ、なぜ持って来たんだ?」


「いやいや、リカードさん、ロウ・タリアンを倒せるようなら認めるとか言ってたじゃないすか」


「はて、そんなこと言ったかな?」


 記憶にない!?

 まさか記憶に無い状態が記憶から消去されてるとか、どうなんですか!?


「あらあら、エンリカ、おかえりなさい。プリカちゃんも、お爺さんが心配していたわよ。あいつはどこに行ったんだ? って」


 リカードさんと話していると、奥の方からルイーズさんがやってきた。

 ちょっと、包丁、危ないから包丁は置いて来てください!


「あ、おじいちゃんにお話ししてこないと。エンリカ、私ちょっと家に戻って来るね」


 と、プリカが出ていく。

 ホント、空気読めない娘ですな。

 ここから修羅場が始まるというのに。いや、むしろそれから逃げ出したという事か?


「今日は泊って行くのよね、エンリカ?」


「え、う、うん。それでね。その……私が好きな人のこと、覚えてる?」


「ええ、そこの豚さんね」


 ギロリとバズ・オークを睨むルイーズさん。その視線はどう料理しようかと吟味するような目だった。

 視線に晒されたバズ・オークが物凄い震えている。

 頑張れバズ・オーク。ここがお前のデッドラインだぞ!


「それでね、できるなら、その、結婚式、開きたいなって……ここで」


 女性だから、花嫁衣装で両親に祝福されたい。

 そんな乙女心を伝えることは、果たして罪なのだろうか?

 ただ、人生の祝福の時を家族に祝われたいだけの少女の願いは、しかし無碍に手折られた。


「無理だ!」


 気が付けば、血涙を流すリカードさん。

 きっと、ずっと悩んだはずだ。バズ・オークを好きだというエンリカからバズ・オークを離すべきか否か。ずっと、親として苦悩して、ようやく折り合いをつけようとした矢先。

 なんとかバズ・オークを認めようとストレスに潰されそうになりながらも耐えた男の魂からの叫びが聞こえた。


「交際は認めてやる。もう既成事実も有り相思相愛ならば私もルイーズも何も言わん。お前の好きなように生きてほしい。だが、だがだ、無理だ。その豚公に娘をやることを完全に認めて結婚式を開け? 無理だ。そこまで妥協など、もう無理なんだっ」


 血反吐を吐きそうな顔で十分な譲歩はしたと告げるリカードさん。

 もはや威厳などかなぐり捨ててエンリカに懇願する。

 これ以上親不孝を重ねないでくれと、縋りつくように告げていた。


「そうね。さすがに……いいわエンリカ、結婚式をここであげても」


 何かを思いついたとでもいうように、ルイーズさんは告げる。

 エンリカの顔が花が咲いたように喜びに染まるのを目にして、嫉妬に駆られた女のように暗い目で告げる。


「エルフの子をあなたが産めたならという条件が付くけれど」


 それは、余りにも酷な条件だった。

 なにせ第一子はあのバンリ。どう見てもオークです。

 つまり、オークの子はどんな女性に産ませてもオークになる。それが通例なのだそうだ。

 だからこそ、真にバズ・オークとエンリカが愛し合っているのであれば、エルフの子が生まれてもおかしくないだろう? ということらしい。


 つまり、バズ・オークが夫でもエルフが生まれるというのならばルイーズさんもその子を孫として可愛がれると、リカードさんも致命的なストレスで倒れる事はないだろうと、ルイーズさんが譲ることが出来る最後の砦だった。


「エルフの……子供」


「あ、あのネッテさん、出来るんですか、オークとエルフでエルフって」


「ハーフエルフにはなるけど可能ではあるはずなんだけど、オークの苗床になるとオークしか生まないと言われてるわ、エンリカがエルフを産む確率は……限りなく低いはずよ」


 むしろ皆無に近い。


「うっ!?」


 愕然としたエンリカ。その顔が急に苦痛に歪む。

 エンリカ? と皆の視線が集まったエンリカは、腹を押さえてうずくまった。


「う、産まれる……」


 ちょぉ!? なんてタイミングですかエンリカさん!?

 そして再び出産パニックが起きた。

 生まれたのは男の子。エルフの可愛らしい男の子でした。

 え、何このタイミング?


 エンリカの腹から出て来たエルフの子を見た瞬間、リカードさんとルイーズさんが再び気絶していたのは、御愁傷様としか言いようがない。合掌。

第二子、堂々の生誕w

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