表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第六話 その結婚式にでた食事の素材を僕らは知る気はない
211/1818

その嫉妬に狂った女の怒りを、僕らは知りたくなかった

 ステータスを見るのが怖い。

 今のエンリカの状況からして、絶対碌な事にはなっていないだろうけど、ステータスがまた変更されてる可能性が高い。

 見ないといけないような、見てはいけないような……

 いや、でも、確認しとこう。


 エンリカ・エル・ぱにゃぱ

  種族:エルフ クラス:殺戮拳闘士デストロイグラップラー弓使いアーチャー

  状態:妊娠中・狂化バーサーク

  装備:若草色のローブ、エルフの普段着

  スキル:集中

      乙女の咆哮:気合いを入れる事で相手の威嚇を跳ね退ける。攻撃力増大。

      渾身の右ストレート

      渾身のフック

      滅殺クロスカウンター

      殺意のコークスクリュー

      爆殺アパカ

      ドリアードヒーリング

      ウンディーネヒール

      ノームの一撃

      シェイドグラップス

      チェイサーアロー:狙った獲物を追って行く矢を放つ。

      ストライクアロー:クリティカル率がアップ。攻撃力増大の技。

      最後の一矢:矢筒にある残り最後の一矢に必ず必中とクリティカル補正が掛かる。

      全弾放射:全ての矢を一回で放出する荒技。範囲攻撃。

  常時スキル:豚・偽人語理解

      魅了耐性・大

      命中率補正・大

      七大罪・嫉妬:???

      束縛する女の執念:束縛します。手に入れた獲物は逃しません。

      討ち滅ぼす女の妄執:邪魔者には全能力増大して相対します。連続くいしばり補正。致死のダメージを受けても気力でねじ伏せ生き残ります。

      くいしばり:致死のダメージを受けても一度だけ生き残る。

      母の一念:子供が近くにいる時、敵対者がいれば全ステータスに超上昇補正が掛かる。

      嫉妬する女の憎悪:夫に近づく女には100倍返しが基本です。

      死すべし浮気者:夫を誘惑した女性に対し発動・???

  種族スキル:精霊魔法Lv4

       精霊視

       森の民


 ……見なきゃよかった。

 いや、いろいろおかしいよ。なんか二次職できてるし!?

 しかもその二次職が主職で殺戮拳闘士!? 弓使いが副職になってるんですけど!?

 拳系の能力が幾つも増えて総長が使ってた爆殺アパカまで覚えてるし!?

 シェイドグラップスって多分闇精霊の加護だよね。なに地味に新しい契約しちゃってんの!?


 というか、よく異世界転生小説で出て来る七つの大罪シリーズ!?

 なんで覚醒!? ヤバいよこの人っ。どんだけ豚に固執してんだよ!

 死すべし浮気者とか、バズ・オークじゃなくて相手の女性に向うスキルみたいだし。???って。

 なんかもう、敵の方が哀れに思えてくる怒り具合である。


 気付いたクーフと辰真も迫るエンリカの顔を見て慌てて逃げ出した。

 そこでようやくロウ・タリアンも気付く。

 ロウ・タリアンVS狂化エンリカ、今、最悪の女の闘いが始まろうとしていた。


 初めに動いたのはロウ・タリアン。不折の白ネギを振り下ろす。

 その刹那、滅殺クロスカウンターが発動した。

 初速度が見えなかった。気付いたら一気に踏み込んだエンリカが大地を踏みしめ拳を振るっていた。

 黒く染まった拳がロウ・タリアンの顔面を穿つ。


 予想以上の速度に仰け反るロウ・タリアン。

 そこへすかさず近づくエンリカ。

 殺意のコークスクリューが火を噴いた。

 弾丸のように飛び出した拳がロウ・タリアンの頬を穿つ。

 買い物籠が吹っ飛んで行った。


「この雌猫が……私の亭主に何をしたァッ!!」


 体勢を崩したロウ・タリアンに馬乗りになって拳を振るいだすエンリカさん。

 ヤバい、マウントポジションで連続パンチだ。

 これはキツい。キレたリカードさんを上回る怒りの拳だ。


 現にロウ・タリアンの顔が一気に整形されている。

 血飛沫が舞い散る。

 シェイドグラップスの効果だろう、黒く染まったエンリカの拳が、今はロウ・タリアンの血で赤く染まっています。


 嫉妬怖い。嫉妬コワイ。エンリカコワイ……

 しかも未だに止まらない。

 むしろ拳を振り抜く速度がだんだん上がっている。

 血塗れになっていくエンリカさんが恐ろし過ぎる。


 クーフも辰真もリエラもネッテも、プリカですら幸福感を失くしてただただ引いていた。

 もう、戦闘とかの状態じゃない。完全な私刑リンチである。

 え、エンリカさん、その程度で、許してあげて?

 なんか変なテンションになって来たらしく嗤い始めたエンリカさん。僕らは止める術を知らなかった。


 何十分経っただろうか? ひたすらに殴る機械と化していたエンリカは、ロウ・タリアンの胸倉掴んで立ち上がる。

 既に意識が無いロウ・タリアン、顔が凄いことになっている。

 そんなロウ・タリアンを中空に放り投げ、最後の一撃とばかりに爆殺アパカ。

 ふんっと地面に足を踏みしめ最大の力を込めたアッパーカットを叩き込み、気は済んだとばかりに去っていくエンリカ。


 口から消えろ肉塊とか呟かれた気がしたけど、丁度ロウ・タリアンが爆死したのでエンリカの声は風に流れて消えて行った。

 そんなエンリカさんが優しくバズ・オークを抱き起こす。

 あなた、大丈夫? 今回のは、不可抗力だから許すけど、浮気はダメよ?

 黒い気配でニッコリ笑顔。

 気絶しているはずのバズさんが震えた気がした。


 僕らは肝に銘じた。バズには絶対に手を出してはならないと。

 妻の嫉妬を受けるような立場になってはならないと。

 人の、否、エンリカの恋路を邪魔してはいけない。馬に蹴られるどころじゃねぇ。


 さらばロウ・タリアン。あなたが身を呈して教えてくれたこと、僕らは絶対に忘れないよ!

 遥か空の彼方、ロウ・タリアンの幻影がキランと歯を輝かせた。そんな気がした。

 辰真があまりの恐怖でツッパリに戻っているのに気付いたクーフが困った顔で苦笑いしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ