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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その魔物の生態を彼は知らない
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その依頼の重要度を、彼らは知らない

 翌朝、僕はうんと背伸びをして起きた。

 カインが起きている間、その横でじぃっと起きていたのだが、カインが女の子を襲うことはなく、早々に眠ってしまっていた。


 テンプレならここは女性にオイタする場面だろうカインめ。どこまでイケメンクソ野郎なんだ。

 全く手を出さないばかりか、まさか一番最初に眠りやがるとは。


 そんなことだから、女性陣が部屋のシャワーを浴びるというイベントを見逃すんだ。

 僕は当然……行かないよ。行かなかったさ。別に見る必要無いし。


 入ろうとしたら一度開けないといけないという理由からでも、シャワー室に靄が発生するため僕の姿が浮き彫りになる危険があるからとかそういう理由じゃないからな。

 僕は男として覗かないという英断をしただけなんだからな。

 ヘタレっていわないでっ。


 まぁ、同じ部屋なら音がしたら分かると思い、僕は、アルセのベッドの下で寝ることにする。

 カインが起きてもすぐに分かって起きられるさ。きっと。

 ちゃんと対応して死角からの一撃で意識を狩り取ってやるさ。

 透明人間舐めんなよ!


 シャワー後の艶姿を見てみたい気もしたけれど、どうにもリエラが僕を疑い始めてる。

 アルセの近くに居るとじぃっと睨みつけるようなリエラの視線にさらされるのだ。

 見えないはずなのに正直居心地が悪い。


 アルセのベッドの下に身を潜ませるのは万一アルセと一緒に寝てバレたらアレだし。リエラに万一バレたらどうなるかわからないから怖いし。

 僕はベッドの下の透明人間で十分さ。斧男じゃないだけマシだと思ってほしい。


 というわけでしっかりと睡眠をとったのだけれど、さすがに身体が痛かった。……ベッドで寝たい。

 結局今日もアルセに起こされ、ベッド下から這い出ると、リエラだけがやっぱり眠りこけていた。


 部屋の中でリエラが起きるまでは何もすることが無いので、アルセと共に木の棒使って遊んだり、絵を描かせてみて遊んだり。

 頑張ってリエラの寝姿を模写してみたらアニメ調のキャラクターがだらしなく眠る姿になってしまった。


 他人の手を使ったからかなり下手だ。

 もともとが下手なのもあるかもしれない。

 いや、一応アニメっぽい感じになら綺麗に描けるんだよ?

 ネッテが僕とアルセの共同作品を見て肩で笑いやがったけど、仕方ないさ下手なのが悪い。というか途中でアルセが動いて何度かぶれたし。


 といっても、ネッテの笑った理由はアルセに寝姿模写されてるリエラの間抜け面に対してらしい。僕には僕の絵がけなされているようにしかみえなかったけどね。


「……この子は大物に成れそうね」


「その前に夜襲受けて死ぬぞ」


 カインとネッテがあきれ顔なのも仕方ない。

 なぜなら……すでに昼前だからだ。

 どうやらリエラ自身が起きるに任せると一日潰れそうな気がする。

 仕方がないので僕が揺すって起こすことにする。

 お母さん後五分。なんて言葉がリエラから洩れ、カインとネッテが大爆笑していた。




 リエラが起きると、準備を整え教会に向う事にした。

 魔法が籠った弾を受け取るためである。

 起きぬけこそぼさぼさ頭に涎塗れのリエラだったが、朝シャワーで心機一転、元気一杯である。


「うーん、明日まで武器なしかぁ。どうしよう」


「迷子のにっちゃう探しでもやっとくか? 請け負う必要はないから詳しい話だけ聞いて今日だけ探してみろよ。見つかったらそれから受ければいいし、無理ならそのままだ。下手に受けると見つからなかったら違約金取られるからさ」


 カインの言葉にそれもいいかなぁ。とリエラは考え込む。

 宿屋を後にして教会へと向う。

 その道中、町が妙に殺気立っていた。


「変だな」


「あ、あれを見て下さい。何か行列が出来てます」


 リエラが指示した方向には、100人以上が並ぶ行列。

 皆、一様に厳つい格好をしており、どうやら冒険者が殆ど。

 手には皆ぬいぐるみのような……あ、いや、「にっ」とか鳴き声聞こえるから生物か。


 手にしているのは大きな球体を二つくっつけたような生物。

 僕の見知ったモノで例えるならば、雪だるまにウサ耳を付けた生物だった。

 下の球体後部には丸い尻尾があり、上の球体前部には円らな瞳が一対。

 後は真っ白な毛で覆われた生物だ。

 肩で担がれたり、子供に抱きかかえられたり、無数に存在していた。


「あれ、にっちゃうですよね」


 ということは、もしかしてこの行列、にっちゃう探し関連?


「ただのペット探しにしちゃ随分大勢だな」


「ただの……じゃないってことかもね。先にギルドに寄ってみましょ」


 ネッテの提案で教会に行く前にギルドに行くらしい。

 まぁ、僕が何か提案できる訳じゃないから付いて行くだけなんだけど。

 全く訳が分かっていなさそうなアルセは、にっちゃうたちを見つめて指を咥えている。


 今は銃をリエラに取られているので手持ち無沙汰なのか、それともただただ何も考えていないだけなのか、だいぶ大人しい。

 僕の裾を掴んで放さないのだけは相変わらずだったけど。


 カインたちがギルドへと向う時も、アルセはにっちゃうに視線を向けたままだった。

 もしかして、気になるのか、あの生物が。いや、僕も気になるけどさ。

 なんだかモフモフしてそうで触ったら癒されそう。

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