200話突破特別編・その休日に動く者を、誰も知らない
ついに200話ですね。
特別編とかその辺りも数えてですけど。
記念ということで、ある平穏な一日を描いてみました。
時系列としてはゴブりん倒してリエラの演奏会が始まる前の休暇の日です。
ちなみに、今は202話に移動してますが当時200話です。
本日は、冒険お休みの日であります。
カインとバズ・オークは飲みに行ってしまっており、クーフは武器屋で解体作業。
辰真と葛餅は女性陣の護衛である。
その女性陣はというと、なんか皆で服を見に行くんだとか。
どこの世界でも女性はウインドウショッピングが好きなんですかね?
僕も好きだけどさ。主にゲームとかをガラスケース越しに見るのは。
んで、僕はと言うと、ぶっちゃけ暇だった。
辰真みたいな初心な存在じゃないのでリエラに付いてこないでくださいねとか言われてしまったのだ。どこに何しに行くのか分かってない辰真が羨ましい。
ショックである。
というわけで、今は誰もいない宿の部屋でベッドを存分に堪能しているんだけど……暇だ。
正味寝て過ごすのは勿体無いと思うんだよ。
さて、ならばどうする?
当然、まだ見ぬ冒険に繰り出すに決まっているさ!!
というわけで、宿屋を脱走した僕は皆の様子でも見に行くことにした。
まずは……クーフの奴から見に行くか。
と、武器屋の裏手にある解体場へとやってきた僕が目にしたのは……
「はっ。なかなかできんじゃねぇかミイラのクセに」
「ミイラは関係あるまい。解体作業は皆嫌がるからな。誰かがやらねばならんのだ」
「あんたも好きもんだな」
「そういう主も大概だと思うが? クランリーダーが自ら解体というのはどうなのだ?」
「何事も率先してやんのが俺のモットーだ」
なぜかグラスホッパーズのゴードンさんと二人で楽しそうに血塗れになっているクーフを発見した。
僕は何も見なかったことにして酒場街へとむかった。
野郎共の共演など見るに堪えん。
前に向ったエルフの酒場はエンリカがいたから行けた場所であり、カインとバズ・オークだけなので、別の酒場に入ったようだ。
いや、違うな。途中であの人にあったらしい。本日も無理矢理飲み友達としてパーティーの打ち上げに参加させられている。
あの人って誰だって? バズラックさんだよ。
天元の頂ってチームが六人全員で打ち上げをしている。
ドワーフが混じっていたり大声をあげる人がいるとエンリカ御用達の店には入れないので、このパーティーでは無理らしい。ああでも、エルフが一緒なら入れるんだろうけどね。嫌な顔されるだけで。
なんかもう凄い酔っ払い空間が醸し出されてるので放置しておこう。
なんかバズラックさんがバズ・オークにキス迫ってるし。
これ以上ここにいて決定的瞬間を見てしまう前に帰ろう。
と、いうわけで、中央通りに存在する服屋に足を運ぶ僕でした。
ここにいるらしいんだよね、ネッテ達が……っといたいた。
どうも中流層用の服屋のようだ。
この国には三種類の服屋があり、一つは下層民用の単一の染め物で造られた服が売られており、都内でも一番安い。主に奴隷や収入の少ない人のための服屋である。装備品も売っているが壊れかけとか職人見習いが打った失敗作とかが置かれてるらしい。行ったことないけど。
次に中流民用のそれなりにオシャレさを追求できる普段着専門店。この店のような奴だね。
アレンジ品なども多数出回っており最近の流行はボタン付き。
胸元にボタンが付いた服が流行の最先端らしい。
日本でいうなら昭和か平成入りかけくらいの服装ですかね?
それもダッサイ奴ばっかりの品揃え。
唯一まともそうなのが普通の白シャツやブラウスってのはどうなのだろうね?
あ、アロハシャツみたいの発見。
最後に上流階級御用達服屋。
ここで商われるのは貴族服が主であり、服屋も貴族街に存在しているのでまず下民が入ってくる事はない。
オーダーメイドも随時受付中であり、無数の貴族から予約される人気の名店だった。
今回来た中流民用の店で、ネッテとリエラはアルセとネフティアを着せ替え人形化していた。
エンリカは一人、色々な服を自分に合わせている。
いや、違う。あいつバズ・オークの服を選んでやがる!?
葛餅にまでなんか服着せてるし、ここも結構カオスだな。
あはは。辰真の私服姿とか似合わねぇ。
あ、これこれ、むしろ辰真の私服はこっちだろ。
僕はアルセを連れ出し、服の一角からなんかやーさんとかが着そうな龍の刺繍が入ったボタン留めのYシャツみたいなのを持っていく。
それに気付いたネッテとリエラが、あら? とアルセに注目。
アルセから渡された服を辰真が困った顔ながら着替える。
ガクランが見当たらないのは剥がしたのかと思ったけど、どうやら身体にしまえるようだ。
何ソレ凄い。
背中に変な皮みたいな状況で張り付いていたのを見付けて僕は驚いた。
そして、辰真がチンピラに進化した(笑)。
いや、似合ってる。なんかもう凄い似合ってる!
ネッテとリエラもなんか笑っている。
そんなにおかしいのかと驚く辰真だが、似合うと言われて困っていた。
結局似合うのかおかしいのか、彼には自分の姿がどういう状況なのか全く理解できていなかった。
さて、あまり居るとバレるし、そろそろお暇しよう。
僕は暇潰しを終えて宿へと戻った。
僕がいない間、皆は皆で休日を楽しんだようだ。
少し寂しい。僕は、僕だけは皆の輪には入れない。それが凄く、悔しい。
少しして、ネッテ達が帰って来る。
一番最初に部屋に戻ってきたのはアルセ。
笑顔満面可愛らしい白のワンピースを風になびかせ、僕に飛びついて来た。
それは、まるでただいま。と言っているようで、僕はこの世界にちゃんと存在しているんだと気付かされる。
「おかえりアルセ。おかえり……皆」
確かに姿も見えなくて声も聞かれない僕だけど、僕は確かにここにいる。
そんな当たり前のことに気付かされた、昼下がりの午後でした。




