表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
 第二話 その町の名を彼は知らない
20/1818

その二人が有名になる切っ掛けを、二人は知らない

 けぷり。と可愛らしくお腹をさするアルセは、最後に僕が選んだショートケーキを食べて満面の笑みを僕に向けた。

 まるでおいしかったよとでも言っているようだ。


 せっかくなのでおしぼりで口元を拭ってやる。

 リエラが視線を逸らした隙を見計らったので疑惑の視線は向けられることはなかった。

 今度から何か行動するときはリエラに見つからないように気をつけよう。


「旨かったな。アルセも全部食ってたみたいだし」


「私思ったんだけど、アルセって雑食でよかったのかしら?」


「でも、全部食べちゃってますよ?」


 ……あ。そういえばそうだ。

 普通に食事させたけど、アルセは人間じゃなかった。

 下手すれば猫が玉ねぎ食べた時のように食当りに……大丈夫そうだな。


 当のアルセは食べ過ぎた感はあれど、食中毒になっているような様子はない。

 多分雑食だったのだろうと結論付けることにした。

 もし雑食でなくても大丈夫だったということは問題無いということだ。


 一応24時間程は気を付けて見ておこう。

 確かサバイバル術で食べてそれくらいの時間何事もなければ食べられるとかテレビで見た記憶がある。


「おいおい、今日は厄日かよ、またアルセイデスだぜ」


 アルセと共にトレーを返しに行こうと立ち上がらせた時だった。

 アルセを見つけた三人の冒険者が吐き捨てるように声を出す。

 そいつらを見た瞬間、僕は思わず戦慄した。


 あいつらだ。

 一番最初、アルセを殺そうとしていた冒険者。

 男二人と女一人のパーティー。


 今は宿に装備を置いているのだろう。

 ラフな格好で食事を取っている。

 あの時は兜で見えなかったが、ムサいおっさんと厳つい顔の若い男だ。

 二人とも顔が赤い様子からしてだいぶ飲んでいるらしい。


 女の方は姐御肌とでも言うべきか。少し厳つい顔つきながら、美人と言える女性だ。胸はかなり大きい。

 あの胸は……けしからん。


「しかも人間様の食事を取ってやがる。魔物のクセに」


「なんですかあなたたちは?」


 言葉の棘を敏感に感じ取ったリエラが立ちあがり、アルセを庇うように前に出る。

 そんなリエラに、二人の男はなんだ、やるか? とでも言いたそうな目で睨んで来た。


 さらに立ち上がって通路を塞ぎ見上げるような高さからリエラを見下げてくる。

 さすがにこんな厳つい男たちに睨まれて、新人冒険者であるリエラが対等に物申すことなど出来る訳もない。


 冷や汗塗れで早まった。といった顔をしていた。

 それでも、青い顔ながら懸命に睨み返す。

 マズいことになってもフォローしてくれる人がいると信じているからこその空元気だ。


 そんな期待されてるカインとネッテは面倒臭そうな顔をしている。

 酔っ払いには関わりたくないなという雰囲気が滲み出ていた。

 折角なのでアルセの腕からフォークを取ってカインに投げてやる。


 あ、くそっ。フォークで撃墜された。

 僕の行動に気付いたアルセがカインに振り向き花咲く笑顔を送ると、突然の攻撃に怒ろうとしていたカインが気の抜けたように頭を掻いて溜息を吐く。

 そろそろ動くか? と思った時だった。


「あー気にしないで。この二人、アルセイデス追い詰めたのに訳の分からない攻撃受けて逃げられたのよ」


 男たちの後ろから、女が声を出す。


「うるっせぇ」


 だいぶ酔いが回っているらしい。

 赤い顔で怒鳴る男たちに、女はため息を吐く。


「気にしなくていいから、ほら、この二人に絡まれないうちに部屋に戻って」


「そうします。行こ、アルセ」


「おい嬢ちゃんよぉ、その魔物殺しゃ5万ゴスだぜぇ。ペットにするにゃ高価すぎりゃぁしねぇかぁ」


 と、ゲラゲラ笑いだす。

 なんか……イラつく。

 ムカついたので、男の一人を蹴転ばしてやる。


 酔っていた男は受け身も取れず、隣の男を巻き込んで床に転んでしまった。

 「のああっ」だって。倒れた拍子にどこかぶつけたのか厳つい男が気絶。

 そいつに抱きついたまま、上に覆いかぶさったおっさんは「やりやがったなぁ、このやろぉ」とか言っているが、目の焦点が定まっていない。

 そのまま寝てしまったので放置することにする。


 男が男に覆い被さるような凄い格好になっていたけれど、まぁ、大丈夫だろう。

 連れの女が戸惑いの声を上げる中、二人の男は幸せそうに寝入っていた。

 結果オーライだ。

 なんか、もう、絵に出来ないような光景だけど、問題はあるまい。


 何が起こったのか理解できていないリエラが突然の二人の行動に呆気にとられた顔をしているが、やはり酔っ払い同士だったせいで、この行動も酒のせいだろうという事になった。


 ああ、写真があればこの光景撮れてたのに……あ。スマホ使えば撮れるな。折角だし写しておこう。

 あ、電池切れた。


 まさか最後に撮った映像が二人の男が床で抱き合い眠る姿とか……

 僕、何やってんだろう。

 せめてアルセの笑顔で締めたかった。


 脅威がなくなったので、落ちついてトレーを返却し、僕たちは部屋に戻ることにしたのだった。

 ちなみに、トレー返却の際、デザートとして設置されていたクッキーを幾つか摘まませて貰った。

 なかなか美味かった。余は満足じゃ。

 ちなみに、アルセにも与えると満面の笑みを返してくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ