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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五話 その二人の婚約を彼らは知りたくなかった
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その異物たちの目的を、妖精は知らない

 ブロック・オリー、殲滅完了。

 クーフ無双がすごかった。

 やはり単発の辰真やバズ・オークよりも面の破壊力はこういう時役に立ちますな。


 何体かブラック・オリーが紛れていたけどブロック・オリーと殆ど区別なく皆殺しにされました。

 クーフ容赦ねェ。

 救出されたリエラもその光景を見て自分の不甲斐なさを再認識したようだ。

 もっと頑張らないとと気合いを入れていた。

 圧倒的戦力見ても前向きなのはいいことだ。

 あの演奏会のせいでプレッシャー耐性とか手に入れたのかな?


「この森ってどんな魔物がでてくるのエンリカ?」


「そうですね。彼らを除けば、ドリアデス、ドライアド、エルフ、スプリガン、トレント、エルダートレント、ピクシー、ウッドボア、タマネギンですかね。あとは動物が多いですか」


 ちょっとエンリカさん。魔物のカテゴリーなのにエルフ入れちゃっていいの?

 というか歩く玉葱っぽいの本当にいるんだ。


「聞いたわねカイン、皆、敵に気を付けてね」


 さぁ行きましょうか。とネッテがアルセの腕を取って歩きだす。

 迷わないよう率先して手を繋いでくれたのだろう。

 でも待ってネッテさん。それ、偽アルセですからっ!


 頭のチューリップを揺らしながら首を傾げて連れて行かれるドリアデス。

 皆違和感なく歩きだし、アルセと僕だけが取り残された。

 あ、いや、ネフティアは僕と手を繋いでるからここにいるけどさ。


 そのネフティアはアルセと顔を合わせて首を捻っている。

 皆、どうしてドリアデス連れて行ったんだろうね? といった顔だ。

 いや、普通に間違えただけだよ多分。


 とりあえず、直ぐに合流しようネフティ……ぎゃああああああああああああああ!?

 僕はネフティアに視線を向けた。

 その視線の先に、玉葱がいた。

 両手両足の生えた玉葱がいた。

 身体に顔が……ムンクの叫びみたいな顔がある玉葱がいた。


 僕はポシェットからチェーンソウ召喚。

 僕の手を離したネフティアはまるでそれを理解していたかのようにスイッチを入れて動く刃を叩き込む。

 玉葱が真っ二つです。

 物凄い汁が飛び散っていた。

 周囲が玉葱臭くなる。


 直で浴びたネフティアが目をやられてのたうち回った。

 ネフティア――――っ!? 傷は、傷は浅いぞ! というか涙出るだけだから傷すらないぞっ。

 涙目鼻水。転げ回ったから土や枯葉がひっついて凄いことに。

 どこかに水……ないかな。さすがに死甦水は勿体無い気がするし。


 ……はっ!? カインたち見失った!?


 ネフティアが何とか立ち上がり、恨みがましく玉葱を蹴りまくる。

 余程今の攻撃が腹に据え兼ねたらしい。

 それを見ていたアルセまでが参加し始めた。

 ちょ、死体に何してんの二人とも。そんな酷いことしちゃダメだよ。


 そして僕らは彷徨った。

 アルセが先行しだしたのでそれに従ったのだけど、どうやら水辺を探していたようだ。

 植物だからわかったのかな? ネフティアの姿を見て探してくれたのだろう。

 とりあえず、泉に辿りつけたのでアルセの頭を撫でておく。


 ネフティアは泉を見るなり顔を洗いに向った。

 無警戒に泉に向って顔を洗う。

 周囲には誰もいない。大丈夫……かな?

 あ、ダメだ。


 ざばぁっと巨大な化け物が泉から姿を露わした。

 顔を洗ってぷるぷるっと顔を振ったネフティアは、それを見てチェーンソウを起動させる。

 吼え猛る化け物。

 なんかぬめぬめっとしていてオ二イソメみたいな気持ち悪い顔をしている。

 そんな巨大生物が森より高い位置に身体をせり出し、ネフティアを睥睨したその刹那、チェーンソウが音を立ててそいつの胴体を両断していた。


 ……出現直後、御臨終です。なむー。

 出て来なければ、死ななかったのに。

 これは相手が悪かった。

 雉も鳴かずば撃たれまいという奴だ。可哀想に。


 顔を洗ってついでに全身水浴びしてすっきりしたネフティアが戻って来る。アルセにグッドサインを送ってお礼をした。

 さて、こっからどうしようかね。

 カインたちがどこ行ったか全く分からないし、迷子だよ完全に。


 アルセはやることないと思ったのか、おもむろに泉に近づくと、両足を水に付ける。

 ああ、自分の水分補給もしたかったのね。

 ネフティアとアルセに近づいて、僕は周囲を警戒しておく。

 また変な魔物出て来たりしないよね?


「すごいねー。まさかタイダルネクツァーを倒しちゃうなんて」


 不意に、誰かの声が聞こえた。

 周囲を見回した僕だけど、声の主は見当たらない。

 ネフティアも姿を探す。けど、居ない。


「あはは。私を探してんの? こっちこっち。ここだよこ・こ」


 と、声のした方向を見ると、居た。

 空を浮遊する小さな少女。

 背中には透き通った蝶のような四枚羽。


「私ピクシーのアニア。あなたたちは?」


「おー!」


 両足をばたつかせて水滴を飛ばしながら、アニアに振り向いたアルセが楽しげに笑う。


「んん? ドリアデスかと思ったらコイツ別者だ。うわ、ビックリ。何者? 何者っ!?」


 そうやって無防備に近づいて来た小さな妖精を、ネフティアがむんずと掴みとる。


「あれ? ちょっと、人間さん? 待って。待ってぇ。私捕まえても意味ないよ。お願い、見世物にするのは止めてっ。妖精酒なんてただのお酒だよ。美味しくないよっ。誰かたっけてぇ!!」


 ネフティアは、やかましい妖精を捕まえた! テッテレー。

 僕の脳内にそんなメッセージが流れた気がした。

 ピクシー

  種族:妖精 クラス:ピクシー

 ・妖精郷で生活する妖精の一種。

  多種多様な容姿だが、小さな姿というのは共通している。

  明るい性格が多く、悪戯好き。人間やエルフには見世物にされたり妖精酒にされているらしい。

  背中の羽から出された鱗粉は傷を癒す効果があると言われている。

 ドロップアイテム・妖精の粉・妖精の羽・妖精の腕輪


 タマネギン

  種族:自立野菜 クラス:ネギン

 ・両手両足の生えた玉葱。

  ムンクの叫びみたいな顔の模様を持っている。

  切ると周辺に刺激的な汁を飛ばしてくるため目潰し効果抜群とエルフたちからは嫌われている。

 ドロップアイテム・タマネギ・怨嗟の仮面


 タイダルネクツァ

  種族:水妖 クラス:ネクツァ

 ・ぬめぬめっとしていてオ二イソメみたいな気持ち悪い顔をしている。

  縦穴を掘って水を溜めこみ、泉にして巣穴に引き籠る。

  水を飲もうと近づいて来た魔物や人を引き込み喰らって生活している。

 ドロップアイテム・泉・のたうつ触手

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