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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1813/1818

後日談・その二人きりのデートを、彼ら以外知らない

SIDE:斬星英雄


 僕にとって異世界転移は糧になったかどうかと聞かれると首を傾げざるをえない。

 そもそもな話、僕は厨二病だった。黒歴史で必死に英雄たらんとして頑張って、空回りして、結局皆から見放された。


 独り暮らししようとしたけど人が恋しすぎて結局失敗したし、異世界にはあまり良い思い出がない。

 ただ、その中でも人の出会いはとても素敵な出会いだったと思う。

 グーレイさん達の御蔭で僕の人生、終わったままで決着することもなかったし、ガーランドさんたちの御蔭でそれなりの剣術も覚えた。

 今も剣術スキルは持ってるけど、さすがに現代世界では使わないからなぁ。


「あは、凄いですね英雄さん、初めて見ることばっかりです」


 それに、ギオちゃん。

 元々男で魔王で巨大だったんだけど、結局彼女のバグは女体化スキルに代わり、彼女の精神性も彼女のまま、僕と一緒にこの世界に来てくれることを選んでくれた。


「世界が違うとここまで違うんですね」


 現代ファッションに身を包んだ彼女の姿はあまりにも、まばゆい。

 正直、モデルとか女優とか言われてもおかしくないくらいに、いや、実際声が掛かってくる時だってあったけど全力で断ったしね。


「これから、もっともっと君に紹介するよ。この世界は観光名所が一杯だからね。日本を見回って、それが終わったら世界を見に行こう。アイテムボックスにいろいろ詰め込んで。どうかな?」


「ふふ、楽しみ。でも、本当に私なんかでいいんですか?」


「……うん。君が、いいんだ」


 彼女はもう、彼女としての人格を確立した。

 魔王の力は持ってるけれど、魔王に戻るつもりはないらしい。

 そして、僕の……彼女だ。


 家に二人で帰って、母さんに大激怒されて、でもギオちゃんが凄く良い娘だからすぐに受け入れられて。

 お父さんと二人きりで話をさせられて、なんか絶対に幸せにしろって約束させられて。

 お金については必死にためる。最悪異世界知識を披露すればいいし、グーレイさんたちから貰ったもしもの場合に行く場所もある。


 そこに行けば異世界組に関する困ったことなども解決してくれるそうだ。

 あと偶に駄女神も出没するらしい。

 会いたくは無いけどある程度は優秀らしいので困ったことがあれば尋ねればいいらしい。


 しかし、剣術はいいけど武器、どうしようかな。

 アズセ式の剣、凄くカッコイイんだけどこの世界じゃ取り出す事も難しいし、訓練する訳にもいかないからなぁ。

 深夜の公園で素振りとかしてても普通に通報されそうだし。


 何か一芸極めてお金を手に入れるか。ギオちゃんとチューバーデビューして投げ銭で稼ぐか。

 それもいいなぁ、何か特別なトリックっぽく魔法使ってみせたり、剣術披露してみたりしたらそれなりにイイネーがつくんじゃないかな?

 いや、駄目かも。なんか黒服のヤバそうなのが家に大挙して来そうな気がする。


「あれ? 英雄さん、あそこ、凄く不審な顔してるのって……尾道さんじゃないですか?」


「え? あ、ほんとだ。シシリリアさんもいる」


 おーい、と手を振ってみる。

 きょろきょろしていた尾道さんは、あっと気付いてシシリリアさんともどもこちらにやってきた。


「斬星君とギオちゃんか。なんという僥倖!」


「うん?」


「じ、実はだね、シシリリアさんを養子として引き取ることになったんだ。ただ、私には先立つお金がなくて、今からあそこの店に向かおうと思っていたんだ」


「あそこって、ああ、グーレイさん達に紹介されたカフェですね。なんかでっかい犬の剥製があるから目立ちますよね」


「んー、あれって、多分トサノオウだよね? 私の元の世界にも居た奴よ」


「はい?」


 シシリリアさんの元の世界に居たの? あんなデカイの? え、ちょっと待って、じゃああの剥製というか置物って、本物!?


「ね、入るの、恐いでしょう」


「えーっと、これは僕らも一緒に行かなきゃいけない感じかな?」


「お願いですからここでサヨナラは許して下さいっ」


 ちょ、尾道さん、縋りつかないでっ!? 一般の人見てるからっ。

 なんかおっさんと青年のカップルとか聞こえたぞ!? ちょ、マジ変な噂立つからやめてぇ!?


「ああもう、分かりました。ギオちゃん、ちょっと寄り道するけど、大丈夫?」


「はい。シシリリアさんもご一緒ですし、楽しくなりそうです」


「……なぁ、あんた」


 シシリリアさんの白い目が突き刺さる気がする。


「言わないで、理解はしてる」


 そう、ギオちゃんは男じゃない。

 TS系美女なだけである。

 元男なだけである、だから、立派な恋愛対象だ。


「今日も楽しい一日になるといいですね、英雄さんっ」


 カフェに向かって走り出し、こちらを振り向く無邪気な君が、僕にはとても眩しい美少女にしか、見えないんだ。

 だから、その手を取って、一緒に走りだす。

 いつまでも、君と一緒に――

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