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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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三百四十九・その自滅の理由を、ヤツは知らない

「どうしたのバイスグリムデ。もしかして怖気づいた?」


「ふ、ふざけるなッ! 貴様、一体何をした!? この俺に何を飲ませた!?」


「私が知る訳ないじゃない。見えない誰かと間違えてるんじゃないの?」


 本人的には綱渡りなんだろうね。

 相手は神様な訳だし、変な黒い靄使われたらって思うでしょ。

 でも既に彼らの立場は逆転している。

 リエラっ。やっちゃって!


「えいっ」


「がはっ!? あ? しまった! 存在が薄いせいで忘れて居たぞそこの女ッ」


 リエラが認識された。

 つまり、攻撃が通る。

 それは、即ち、こいつの能力からリエラ隠蔽というスキルが無くなったと言える。

 いや、むしろ……神としての権能纏めて、シシリリアさんに割り振られたんじゃないかな?


「良いだろう、貴様から殺してやる、光線を、喰らえいっ」


 と、なぜかスペ○ウム光線撃つような体勢になるバイスグリムデ。


「シビビビビビビッ……なぜ、倒れない!?」


 いや、逆になぜそれで倒れると? アホかな? あ、アホだった。

 アホになる薬が徐々に効果を発揮し始めているらしい。


「ぶっは。何ソレ、馬鹿にしてんの!?」


 あまりのアホさ加減に噴きだしたシシリリアさん。

 事情あんまし話してなかったから普通にバイスグリムデがふざけたんだと思ったようだ。


「馬鹿にしているのは貴様だろうが! これならば、どうだっ!」


 と、そこいら中に漂っていた黒い靄を集めてシシリリアさんに投擲。

 放物線を描いた黒い靄はそのままシシリリアさんを飛び越え遥か彼方へと飛んで行った。

 思わず見上げたシシリリアさんが黒い靄の群れを見送っている。


「え? なに?」


 あー、分かりやすく言うとね、グーレイさん達に纏わりついてた黒い靄を全部集めてポイしちゃったんだバイスグリムデ。

 それでどうなるかって言うと……


 ゆらり、そこかしこで起き上がってくる仲間たち。

 黒い靄による妨害が無くなったからこそ、彼らはすぐに意識を取り戻したのである。


「馬鹿な!? 貴様らなぜ起き上がって来られる!?」


 あんたが黒い靄取ったからだよ!?


「やってくれたねバイスグリムデ……しかしバグ君、一体どうなってるんだい?」


 おお、グーレイさんまで起きたのか。こりゃもう僕らが頑張る必要ないよリエラ。


「そうみたいですね。もう、グーレイさんさすがに慢心ですよ、グーレイさんのせいでどれだけピンチだったか」


「ああ、すまなかった。でも……よくそこから覆せたね。何をしたんだい?」


 アホになる薬を飲ませました、まる。


「……ん?」


 グーレイさんが僕の言った言葉を理解できなかったようで、バイスグリムデを一度注視、コマネチしてるアホなバイスグリムデを確認し、僕に視線を戻す。


「えっと、なんて?」


 アホになる薬を飲ませました、まる。


「アホに、なる薬?」


 ポシェットの中にあったんで。あと馬鹿には見えない毒薬とか言うのもあるよ? 見る?


「はぁ……毎回思うけど、バグ君はいろいろずれてないかな? いや、御蔭で助かったんだがね?」


「あの、グーレイさん。胸貫かれてたと思うんだけど、大丈夫なんですか?」


「心配はいらないよリエラ君。貫かれたように見えてるだけでそこまでダメージは無い。私達神々は人と体の作りが違うのでね」


 え? 高次元生命体って、そんな根本から違うの?


「そもそもこうして人型を取ってる必要すら本来はないんだ。我々の本体的な意味を持つモノを近しいモノに例えるならスライムやアメーバが適当だろうね。形は持たず、何にでもなれる。体の一部を攻撃されても簡単には死なない。といっても、バイスグリムデのやった方法だと意識を取り戻すのを邪魔されて行動不能になるんだけども」


 その黒靄を、自分から取り去っちゃった、と。アホだから。


「なんというか、君を敵に回したら神でもバグるという良い見本だねぇ」


 実際には僕がバグらせた訳じゃ無く、矢田から感染しただけなんだけどね。


「それでも、だ。十分な働きだよ。あとは、任せてくれ」


 また失態演じて元の木阿弥とか止めてくれよ?


「当然。そんな失敗する気はないよ」


 グーレイさんがアホな事して周囲の皆を困惑させているバイスグリムデへと歩きだす。

 ソレを見守っていると、隣にリエラがやってきた。


「ありがとう、ございました」


 こちらこそ。あの必殺、使わないでいてくれて、ありがと。

 正直、僕は直前まであの能力を使うと思っていた。

 リエラなら、やりかねないって。


「私も、使うつもりでした。けど……貴方が押し留めてくれたあの時、アーデの声、聞いたんです。もう少し、貴方を信じてあげて、って」


 なんだよ、最初から最後までアーデにおんぶに抱っこじゃないか僕等。

 これじゃあどちらが保護者なのかわかんないね。

 僕らはアーデの大樹を見上げる。


 気のせいだろうか? こちらに微笑みかけてくれているような、そんな気がした。

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