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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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三百四十六・そのいつか見た光景を、彼は知りたくなかった

「舐めるなぁぁッ!!」


 怒り狂ったバイスグリムデが黒い光を打ち放つ。

 もはやこちらを殺さず無力化、なんてことは考えていないらしい。

 ただし、こちらも残っているのは実力者。


 Gババァ、ユーデリアさん、ギオちゃん、尾道さん、ピピロさん、リエラ、パッキーの七人である。

 うん……まぁなんだ。濃いメンバー残ったな。

 でも、この面子なら……


「ぬぅぅっ!?」


 拳を打ち出したユーデリアさんに黒い光が襲いかかる。

 両手でキャッチした彼女はじりじりと後退しつつも光線を受け止めていた。

 意味が分からないけど受け止めてたんだ。


 ソレを斜め上へと跳ね上げる。

 正直この人バケモノだと思う。

 が、ユーデリアさんの無防備な胴向けて、バイスグリムデの拳が突きささる。


「なぁ!?」


「馬鹿が、どれ程強かろうが下位存在に負けるわけねぇだろが!」


 うっそ、ユーデリアさんが負けた!?


「シャァッ」


「テメェもだよッ」


 上空から襲いかかって来たGババァの蹴りを受け止め地面に叩きつける。

 さらに上空に跳ね上げてからの投げ飛ばしでGババァの意識を刈り取った。

 ただの攻撃ならあの二人が負けるはずはなかった。けど、あの巻き付く黒い靄が二人の復帰を邪魔してしまう。


 攻撃特化の二人がやられたことで、防御一辺倒だったピピロさんが矢面に立たされる。

 尾道さんの避けタンクと二人頑張っては居たものの、やはりまとわりつく闇を受け続けたピピロさんが一番に体勢を崩した。

 眠気を耐えるような動きが一瞬の隙を作ってしまう。


 不味い、思った時にはすでに遅かった。

 再生を始めたバイスグリムデの蹴りが棺の盾を割り砕き、ピピロさんの胴に突き刺さる。

 不味い、もう面子が半分以下、攻撃力はリエラ以外ほぼ皆無だ。


 ギオちゃんは恐がってるばかりだし、パッキーじゃ……

 尾道さんに任せるにしても……あっ。

 攻撃を避けていた尾道さんを、まさかの抱き付きで拘束、そのままバックブリーカーで撃沈。

 さすがの幽霊の歩法も動きを封じられると発動不可能だったらしい。


「あぁ……」


 ギオちゃんがアイアンクローで持ちあげられる。

 闇が纏わりつき次第意識を失ってしまった。


「はは、結局貴様等は勝てはしないのさ。そら、こいつで終わりだ」


 ん?

 パッキーが殴り飛ばされ、意識を失う。

 必死に闘っていたパッキーだったけど、やはり一番弱いと最後まで残された形だ。


 くねくねちゃんたちは戻ってこない、向こうで戦っているのか、何か他に理由があるのか……

 とにかく、残された戦力はリエラのみ……ん、リエラ、のみ……?


「さて、誰から殺して行こうかな? やはりグーレイとかいうふざけた神からだろうな。まかり間違って干渉を解除されても困るし」


 あいつ、リエラに気付いてない?

 リエラ、どうなってんの?


「バグさん、変です。私の攻撃、急に当たらなくなりました。ただ、私のこともあの人認識出来てないみたいで、どうなってるんです?」


 攻撃が、当たらない? 矢田から感染したバグが作用してるのかな?

 じゃああのスキル使っても……意味がないのでは?


 ―― あー、それは大丈夫よ、アレ、どんなバグった存在でも必ず対消滅させるスキルだから。でも、使わないでいられるならその方がいいわよ? ――


 そりゃそうだけど……

 でも、このままだとグーレイさんが殺される。

 周囲の助けは期待できない。

 戦えるのは、リエラしか居ない。


 ああ、本当に、こんな場面が来てしまった。

 僕ではなにも出来ないこの……いや、バグらすこと、出来るんじゃないのか?

 こっちの世界に居るんだろうあいつ。だったら、だったら僕なら……

 でも、奴は既に、バグってる。これ以上バグらせて、効果、あるのか?


 僕は考える。

 今、必要なのはなんだろう?

 あいつを倒す方法は本当にないのだろうか?

 僕に何か出来ることは無いのだろうか?

 むしろ、リエラが選んでしまうより早く、僕が何か……

 バグらすことはいつでも出来る。それでどうにかなるかは賭けになる。

 最悪手に負えなくなる可能性だってある。


 アイテムを確認する。

 何かないか? 僕が使える道具。

 手に入った何か。頼む、あいつに一矢報いれる物、あってくれ。

 最悪は僕がバグらせる。だけど……だけどっ……


「……やっぱり、こうなっちゃいましたね」


 不意に聞こえた声に、夢がフラッシュバックする。

 何度も見た未来の夢、それが、今、追い付いてしまった。


 いつか見た夢のように、彼女は笑った。

 泣きそうな顔で、決意を込めて、僕に向かってたった一度、微笑んだ。


 このままグーレイさんを殺される訳にはいかないから。

 皆を守れるのは彼女しか居ないから。

 世界を救えるのは、彼女だけが出来ることだから。


「ダメだよ、それだけは、他に方法がある筈だッ」


 叫んで気付く。これは、夢の再現だ。

 違う、僕が言いたいのはこれじゃない。

 このまま夢と同じにさせる訳にはいかない。

 何か、何でもいい、何かないか、あいつを倒せるとは行かないまでも、今の状況を好転出来る可能性がある何か。

 バグで不測の事態を起こす以外に、本当に、僕等には何もないのか!?

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