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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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三百四十四・その絶望へのカウントダウンを、僕は知りたくなかった

「くまっぴょぅっ」


「煩いっ」


 くまっぴょろんの攻撃が空を割く。

 そんなくまっぴょろんの腹を蹴りつけるバイスグリムデ。

 位相が違うから攻撃か効かないとかチートも良い所だ。

 でも、相手が高次元生命体だというのならそれも納得できてしまうのが辛い所。


 要するに、グーレイさんが敵にまわったようなものだし、僕だって認識されれば一発消滅させられるくらいには実力が隔絶しているはずだ。

 いくらリエラが強くなったからと言っても神々に敵うかといえば無理としかいいようが……


 あっ。

 あった。

 一つだけ、一つだけ方法が、あってしまった。


 そして、思い至る。

 グーレイさんが居ない状況。

 皆倒れた近い未来。

 たった一人残されたリエラ。


 そんなリエラのスキルには唯一相手に勝てるだろうスキル【救世の一撃】。

 ああ、そうか、今まで見て来たあの光景は……

 ここに、繋がっていたのか。


 バグも効いているのかわからない。

 相手は位相がずれてるから攻撃を喰らわない。

 でも向こうからは一方的に攻撃出来る。


 でも、【救世の一撃】は違う。

 そんな理不尽な相手に必ず届く一撃を放つ事が出来る。

 代わりに、リエラはこの世界から、いや、あらゆる世界から消え去る。


 彼女の身体も、彼女の命も、彼女の存在も、そこに居た事実すらも、全ての知り合いから記憶すら消し去って消失する。

 そこに、彼女の居た事実は一つも無くなる。

 僕が大切だと思った人が、記憶にすら残らなくなるなんて……今の僕より酷いじゃないか。


 そんな事を考えている間にも、仲間はどんどん減って行く。

 小玉君が杙家さん庇って殴り飛ばされ、ゴールドさんが蹴り飛ばされる。

 カリオン君の攻撃が空振り、カウンターを貰って撃沈。


 瞬く間に三人が倒された。

 ピピロさんが必死にカバーしてるけど、やはり一人じゃ厳しいみたいだ。

 可能ならリックマンさんにも防御に徹して貰いたいけど、なんかスキルがまたバグって変化したらしい。

 完全防御じゃなく反射になってしまったのでダメージを喰らうのは確定してしまっているようだ。

 ゆえに、防御をするならおそらく一度きりになるだろう。


「うぬれっ、我が拳を持ってしても当たらぬか!?」


「貫波っ、だめ、ですね。あの闇の向こうに届いていないようです」


「ぴるるるるるっ」


 駄目か。皆いろんな技を試しているものの、誰もどんなスキルもバイスグリムデに届かない。

 ああ、ニャークリアさんが吹っ飛ばされた。

 一撃当たるたびにあのまとわりつく闇が気絶と同時に復活を阻止してくるみたいだ。

 御蔭でニャークリアさんも戦線離脱……


 あれ? ふと思ったけど、今のところ誰も……死んでない?

 慌てて皆を確認する。

 脱落したメンバーは多いモノの、誰も死んでる人は居ない。

 ……パンティさん、質問がある。


 ―― なにバグ君? ――


 あいつが皆を殺さない理由、分からないかな?


 ―― バイスグリムデが皆を殺さない理由? ――


 ―― そんなのわかりきったことじゃない。ああいうねちっこいストーカーが周囲の羽虫を殺さないのは、そいつらを後で人質にするためよ ――


 人質?


 ―― お前が俺のモノにならないならこいつ等一人づつ殺して行くけど、どうする? ってね ――


 つまり、全滅した時点であいつはパンティさんの見てる前で一人ずつ惨い殺し方で消していくってことか。なんという悪辣。

 でも、攻撃方法がないなら確かにもう手は……


「いや、見付けたぜ、アレに一矢報いる方法をよォ!!」


 矢を番え、闇に向けて放った矢田君が確信めいて叫ぶ。

 そして、あろうことか矢を放った後、即座に走りだす。


「矢田!? どうするつもり!?」


「こうすんだよッ!!」


 黒い人型向って殴りかかる。

 無駄だと呆れているバイスグリムデ向け、矢田は拳を振り抜き、そのまま闇の中へと突撃して行く。


「直接中入るつもりっ!?」


 そうか、あの闇の奥はバイスグリムデのいるだろうどこかに繋がって……ないでしょ!?


「うおぉっ!?」


 闇に半ばまで埋まったところで何かに抵抗されるように跳ね返されて尻もちを突く。


「痛って、はは、今、触ったな?」


「跳ね返したよ? 何か問題が?」


「いいやぁ、ただ、触れちまったんだよなぁ、俺に?」


「何が、おかしい?」


 矢田は勝ち誇ったように笑う。


「何がおかしいっ!!」

 

 あざ笑う矢田にイラッとしたらしく、バイスグリムデは憤慨したように蹴りつける。


「お前みたいなのはいつもそうだッ! 力を持たないとわかるや勝ち誇ったように笑って来るッ、雑魚の癖にっ、雑魚の癖にッ!!」


 うっわ。先程とは打って変わって何かスイッチ入ったみたいに矢田を蹴りまくる。

 もう闇がまとわりついて意識失ってるのに……

 でも、なんであんなに達成感ある顔してんの矢田? ん? 待って。あいつ……バグ感染してんじゃん。

 その彼に、触れた……バイスグリムデ、バグった?

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