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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1793/1818

三百四十三・その絶望的な闘いを、彼らは知りたくなかった

 なんか、ヤッバいのがでてきた。

 ノヴァが最初に出現した時のように、なんかもう見るからに黒い呪人みたいな黒一色の人型。

 バイスグリムデ、それは確かに、聞いたことのある名前だ。


「涅槃寂静……麒麟天獄殺っ!!」


 リエラが即座に動いた。

 Gババァが持ちあげたガーランドさんにバイスグリムデが手を向けるより早く、彼の身体を切り刻む。


「っ!? 実体が、ない?」


 なんと?


「おや、随分と実体の薄い生物がいるねぇ、でも残念。僕の身体はこの位相には居ないんだ。つまり、君たち人間や魔族、この世界のあらゆる生物に僕を殺す術はないんだよ」


 笑うバイスグリムデ、そんな彼に向かって、朝臣さんが首切りを、灼上さんたちが魔法攻撃を行うが、どれもこれも傷を付けることすらできず、遠距離魔法は闇の中へと消え去った。


「一瞬でカタを付ける事は可能だ。でもそれじゃあパンテステリアの気力を折るには至らない。君たちは贄さ、一人一人じわじわとなぶり殺してあげよう。さぁパンテステリア。見てるかい? 返事は出来ないのは分かってる、回線閉じさせて貰ったからね。あ、じゃあ見れてないのか、残念」


 回線を閉じた? じゃあ、まさか、天の声と会話出来ない?


 ―― ああもう、どうなってんの!? このジャミングめんどくさっ ――

 ―― 駄女神さん急いでくださいっ、このままじゃ皆がっ ――

 ―― 駄女神言うなしっ!? ――


 うん、普通に繋がってるな。


「おい、女神共、おい!? クソ、マジに通信できねぇのか」


 矢田? ん? えーっともしかして、通常の通信は聞こえないのか。

 ホントにジャミングはできてる、と、あーっと、パンティさん聞こえるー?


 ―― バグさん、ちょっと今立て込んでるので邪魔しないで……え? バグさん? ――


 おー、やっぱりそっちに声届いた。


 ―― えええ、なんで? なんで通じてるんですか!? 他の通信軒並みやられて状況分からないのに ――


 多分ほら、パンティさんと僕でパス繋がったままのバグあったでしょ、アレがジャミングで無効化されてても普通に繋がってしまってるんじゃないでしょうか?


 ―― ナイスバグっ! パンティちゃんとしか会話できないみたいだけど、ナイスだわ ――


 駄女神の声も聞こえるんだけど、黙っておこう。

 多分向こうにはパンティさん以外僕の声聞こえてないみたいだし。

 とりあえず、これで向こうとの通信は問題なし。

 現状把握は出来てる?


 ―― いいえ、さっきから砂嵐でそっちの状況全く分からないわ。出来るだけ詳しく教えてくださいっ ――


 おっけ、バイスグリムデは位相違い? って言う理由で攻撃全部当たらない。

 グーレイさんの心臓付近に穴が空いててバイスグリムデと同じ黒いモノに塞がれてる。あと気絶したまま目覚めない。もしかして死んでる?


 ―― っと、それは多分双干渉のせいで意識はあるけど体を動かせない状態ね。バイスグリムデからの干渉が揺らがない限りはグーレイさん目覚めないわ ――


 ―― えっと、ソレは多分…… ――


 あー、こっちは駄女神さんの声聞こえるんで復唱はいいっす。とりあえずグーレイさんの参戦は不可能ってことだね。

 ジャスティンが弾き飛ばされ意識を飛ばす。


 ―― やっぱり敵はバイスグリムデね。音声だけはこっち来てるんだけど、何やってるかまでは分かってないのよっ ――


 宣言通りだよ、あいつ僕らを一人づつ倒して行くつもりらしい。

 しかもさっきの闇光線使わずに拳や蹴りで一人づつ意識を刈り取ってる。

 あ、また。今度は光来君が倒された。


 光線を放つが先程よりは威力が弱そうだ。

 狙われたのはアリーシャ。

 びくりと震えた時には既に遅く、光線はアリーシャの……目の前に飛び込んだギュスターブが守り切る。


「ギュスターブ、さん?」


「大丈夫だ。お前は、俺が守る」


 あ、恋が産まれてる。もともとくっつきそうだなとは思ってたから無事に生還できたら多分あの二人くっつくだろ。

 が、二度目の光線が彼の頭を直撃し、意識を失い倒れる。

 必死に縋りつくアリーシャの胴に、三度目の光線が当たり、彼女の意識も消え去った。


 不味い、非常に不味い。これ、本気で全滅在り得るのでは!?

 ね、ねぇパンティさん、これ大丈夫!?

 ……返事しろよ!?


 どんどんと、味方が減って行く。

 反乱軍達も、王族も、等しく崩れ倒れて行く。

 バイスグリムデはあえて近接戦闘を行うメンバーを無視し、エストネアさんを、灼上さんを、メロンさん、ラウールさんを撃破して行く。

 倒れたメンバーの生死は分からない。

 皆黒い靄に取りつかれ、意識を失ったまま動かないのだ。


「畜生っ、エストネアッ!」


「信っ!? このっ」


 皆、必死に闘う。しかし影の中に居るバイスグリムデに攻撃は一切届かない。

 だから、多分、これいかないのだろう。

 僕はぐっと手を握る。

 集中しよう。この世界のために、アーデの為に、皆のために。


「無理よ、無理だわ……」


 隣では、ぺたんと座りこんで頭を抱えたシシリリアさん。裏切り者の彼女をバイスグリムデは許さないだろう。

 だから彼女は自分の終わりを悟って絶望に至った。

 反乱の意思などもう持てないのだろう。


「何よこれ!? 食べれないっ!?」


「解体も無理か」


「せ、性剣さん、お願いしますっ」


 恥ずかしいポーズを決めて、ギオちゃんまでが剣を振るって参戦。しかし、そのどれもが攻撃にすらなっていない。

 あの黒い人型は完全に闇だ。そこに実体は存在しないらしい。

 それでも……いけ、バグ弾っ。


 今度は、誰にも当たらなかった。

 僕が投げたバグ弾は尾道さんをすれすれで飛び越え、バイスグリムデの中へと消えていく。


「うん? なんだ? 今変なのがこっち着たような?」


 しかし、効果は見られなかった。

 バグが、効果を見せない? そんなバカな?

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