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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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三百四十一・その失態を、彼らは知りたくなかった

SIDE:朝臣美樹香


 グーレイが来た。それだけで皆が勝てる、そう思い始めた。

 事実、彼が来たことで解決策も見付かったようで、ピピロさんが攻撃を受けてる間にグーレイたちが突撃するらしい。

 何故か私も一緒に突撃する事になったんだけど、いいんだろうか?


 まぁ、トドメの一撃刺すつもりで気配消してついてくか。

 ゴールドは、同じつもりみたいね。

 信、あんた大丈夫? 足引っ張っちゃダメよ?


 光来と二人居残った信が心配で思わず彼を視線で追う。

 何時からだろう、目を離せない存在になったのは?

 デブだしさえないし、眼鏡だし、でも、頼りになるのだ。

 つい、頼ってしまう。居てくれるだけで落ち付く存在。

 気付いた時には……


「そろそろだ二人とも、私がこちらに引きずり出すから、トドメは二人に任せるよ」


「「了解」」


 さぁ、気を引き締めろ。

 失敗は許されない。出て来たところを確実に、る!


「よし、アレだね」


 黒い人型は未だに体から黒い光を放っている。

 どうやら全身から放出しているようだ。

 ピピロさんの防御がどれ程持つかわからないので出来るだけ早く、しかし焦る気持ちに押しつぶされないようにしっかりと配置に付き息を潜める。


 私達の準備が整ったのを確認し、グーレイさんが動きだす。

 今までの赤い光をぴちゅんっと放出することもなく、黒い人が立向けて特攻する。

 光を放出したままの人型はこれに反応すら出来ないらしい。

 人型の頭を掴みあげ、何かを引きずりだすグーレイさん。


 黒い光が止まり、見慣れない人型の生物が黒い人型から取り出される。

 今、だッ!!

 私は即座にその背に姿を現し、首を切り裂く。

 あっけない、でも、これで、終わりだ。


「よし、上出来だ朝臣君。これで異世界の邪神君は……」


 グーレイさん?

 ふいに、グーレイさんがぐらりと前のめりに倒れて行く。

 何が起こったのか理解できず、私はソレをただ見守っていた。

 そして、その背後に……黒い人型。


「あ……」


「ふふ、ははは、ぎゃははははははっ!! テメェーがいるこたぁ最初からわかってんだよブァーカっ! パンテステリアを手に入れるのに邪魔なテメェは真っ先に排除するに決まってるだろがぁよぉっ!!」


 なん、だ?

 これ、どうなって? いや、まさか……こっちが、本命?


「美樹香、ボサッとしないっ」


 はっと弾かれたように走りだす私のすぐ真下を、グーレイさんを掬いあげて走り出すゴールド。

 ひたすら笑っている黒い人型を放置して、私達は一目散に逃げだした。


「そうだよ、そうだよっ、お前ら自称神どもはみぃんなプライドだけはあるからなぁ、目に見えてこの世の理から外れた生物見付けたら自分が出てくると分かってたぜぇ。あとはそいつに注意向けた瞬間やっちまえば、ほら、このように俺の勝ちぃ。パンテステリアぁ、見てるー。俺がお前を手に入れに来ちゃったよぉーぅ」


 天に向け、気味の悪い声を出している黒い人型。

 アレに対応出来るのは同じ神。その神であるグーレイさんは倒された。


「ゴールド、グーレイさんは!?」


「分からない。胸元に黒い靄みたいなの掛かってる。さっき背中から突き入れられた腕がそのままこれになった」


「死んでるかどうかも不明、天との会話も無理、こんなの詰んでんじゃないの!?」


 なんとか信のもとへと舞い戻る。

 ピピロさんも疲れきった顔ながらなんとか無事らしい。


「作戦失敗よ!」


「見てたから分かるよ! 仕方ない。ここじゃむやみに殺されるだけだ。業腹だけど、アーデの大樹まで引こう」


「あれってアーデの大樹って名前なの?」


「アーデたんが大樹になったんだろ。だったらアーデの大樹でいいんじゃないか。それよりも急いでくれ。あいつの意識がこちらに向いたら全滅の可能性も高い」


「そ、それもそうね」


 私達は失敗した。

 グーレイさんが倒すべきは黒い光を放つ何かではなかった。

 その近くで身を潜めていた邪神を倒すべきだったのだ。


「どうにか、なりそう?」


「リエラさんに賭けるしかないだろ。グーレイさんを救えるかもだし」


「なんてこと。やっぱり既に詰んでない?」


 気のせいか、周囲が静かだ。

 ああいや、気のせいじゃない。あれだけ居た裏世界の魔物達が消え去っている。

 まるでアレら全てがグーレイさん一人をおびき出し倒すためだけに出現していたかのようだ。


「お、おでがグーレイ運んでぐだ」


「弟者よ、狙われる危険が高まるぞ?」


「仲間、だがらなぁ」


「そうがぁ。なら……殿はおでがやろぅ」


 そう言って、裏世界の筋肉兄弟がハイタッチ。兄は踵を返し、街門前で黒い人型を待ちかまえる。


「ちょ、ちょっと、良いのアレ?」


「ある程度やっだら逃げるだ。兄者はそういう゛性格だぁ」


 それなら、良いんだけど……

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