三百四十・その生物がなんなのかを、彼らは知らない
SIDE:ピピロ=バックラ
「バーチャルカバーッ!!」
それは、多分ぎりぎりの割り込みだった。
僕の仮想盾が光に呑まれそうになっていた光来君の前に出現する。
物凄い熱量と光のダメージを防御し、仮想盾が消滅した。
「がはっ、な、なぜダメージが?」
光来君、もしかして防御する必要無かった?
なんかグーレイさんから僕が必要になるって聞いたからこっちに急行したんだけど、大丈夫だったかな?
「ピピロさん!? なんでこっちに!?」
「助っ人に来ました、グーレイさんもすぐに来ますよっ」
アレが、敵か。なんか凄くヤバそうな存在だ。
黒い人型、ノヴァさんの最初の頃があんな感じじゃなかったっけ、じゃあ、アレって呪人?
「アレ、多分グーレイさんたちが言ってた神だろ。天の声通信できなくなってるし」
「え? アレ神なんですか灼上さん」
「いや、知らないけども」
適当に言っただけか。
でも、確かに言われてみればあれだけの攻撃は普通の魔物だとは思いたくないなぁ。
僕の能力で使えるスキルは……
「換装、棺の盾」
スキル発動挑発の咆哮。こっちよ、来なさいッ!
相手の攻撃が光来君から僕へと移動する。
今だ!
「シールドリフレクタ―!!」
しっかと盾を構え、僕はスキルを発動する。
迫りくる黒い光、脳裏にチリつく危険信号。
逃げたい、逃げたい。でも、逃げない。
僕がこちらに来る時、尾道さん達が言ってくれたのだ。
ここは任せてくださいって。
だから、任せた以上はこちらは問題無いのだと、貴方達が送りだした女はしっかりと勤めを果たしたと、胸を張って言えるようにっ。
「跳ね、返れぇぇぇぇぇぇッ!!」
盾に衝撃、黒い何かが光の中を帰って行く。
「あ、やった! やったぞ! 直撃だっ!!」
思わず叫ぶ灼上さん。どうやら上手くいったらしい。
結果は分からないけど、っていうかこの光線長くない?
あ、やばい、シールドリフレクターの方が途切れそう。
「ツインシールド、シールドリフレクタ―ッ」
仕方なくラージシールドを手前に取り出しシールドリフレクタ―を掛ける。
残念ながら直ぐに弾け飛ばされたものの、数秒だけ持ってくれた御蔭で棺の盾がシールドリフレクターを再発動する。
「なんか長くない?」
「どうなって……相手に返ってるせいか? ピピロさん、そこから逃げれるかい!? 多分相手に返って行った光が再反射されてるっ」
再反射!? 向こうも自分が放った魔法を反射できるってこと?
なんて面倒な性能してんの!
えーっとえっと、あ、そうだ。カバーだ。
「誰でも良いので灼上さん殴ってください」
「なんでっ!?」
「良し来た! おりゃぁ!「カバー!」」
光来君が嬉々とした表情で灼上さんに殴りかかる。
味方のダメージを肩代わりできるスキルが発動し、僕は体ごと防御に割り込む。
「いってぇ!?」
「ご、ごめんなさいっ、でも脱出完了です」
「凄い脱出方法だ。光来君でよかった」
「よくねぇよ!?」
黒い光は私が居なくなったことで真っ直ぐに飛んで行き、遥か遠くで減衰して消えていった。
「ほんとに、反射してるんですね」
「面倒だけど、アレを倒すのは僕らでは無理そうだね。そう言う訳で、グーレイさん、お願い」
ん? あ、グーレイさん着いたんだ。
「やぁ、神が来たって聞いたから着たよ。ゴールドさん案内ありがと」
「ん。でも中央も忙しそうだった、大丈夫?」
「リエラ君がいるから問題は無いよ。私がやっていた事は適当に間引く程度だったし、それもちょっと手間だけどリエラ君なら問題無く対処できるよ」
リエラさんへの信頼が高過ぎません?
なんかもう全部リエラさん任せにしちゃえば解決しちゃう気がして来るんですが。
「ふむ、何とかできるか分からないけど、やってみよう。ピピロさん、光線を防御してくれるかい? その間に近づいてみよう」
「は、はい、あの灼上さん、脱出のためにタイミング見て誰かに殴られてください」
「おっけー。光来君、殴れって合図したら僕殴ってね、命令」
「おいっ!? 命令し過ぎじゃねぇか!? お前後でマジ覚えとけよ!」
「はっはっは。誰かが犠牲になるしかないのならば一番信用できない光来君しかいるまい」
「信、さすがにえげつない」
ある意味悪人の所業だと思います。天罰くらっちゃってもしりませんよ?
「よし、もっかい挑発の咆哮からの、シールドリフレクタ―!!」
ラージシールドはもう使えない、だから灼上さん任せの脱出だ。
グーレイさんは光が僕に放たれた瞬間に走りだしている。
これなら大丈夫そうだ。
大丈夫、僕はやれる。ちゃんと英雄の一人として皆の役に立ててる。
役立たずなんかじゃない。そう言ってくれる人たちのためになら、僕はっ!