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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1776/1818

三百二十六・その剣が動いた理由を、彼らは知りたくなかった

 SIDE:斬星英雄


「「うおおおおっ」」


 剣撃が響く。

 光の魔法が飛びかい銃撃が鳴り響く。

 光魔法は銃撃で撃ち抜けるが、この銃弾、魔法と相殺で貫通は出来ないらしい。

 結果的に千日手になってしまっていた。


 確かに、あの性剣が言うように僕と光来の実力は同じらしい。

 否、通常時なら、同じらしい。

 このままだと埒が明かないし、そろそろ光来を倒さないと僕が逆にやられかねない。

 その結果は痛いほどわかってる。だから、負けられない。


 僕が負けるってことはここに居るギオちゃんも、そしてグネイアスの姫様の貞操も危険なんだ。絶対に負けるわけにはいかない。

 しかし、このままだと少々、不味いな。

 光来はまだ気付いてないみたいだけど、気付かれるとこちらが不利になりかねない。


 正直、光来は剣で闘うことにこだわり過ぎている。

 彼の得意なモノは光。

 そして光を操る面子で凶悪な攻撃を放つのは、パッキーや尾道さんだ。

 つまり、魔法を光線状に発射されはじめたらおそらく詰む。


 それまでに決着をつけられれば勝ちなんだけど……

 何度か必殺の間合いで放った攻撃はあったが、ことごとく性剣に防がれてしまっている。

 あの剣、なんとかしたいんだけど……武装に丁度良い剣がないんだよなぁ。


 ―― こりゃ長期戦だなぁ、俺はそこまで待てんぞ光来ぃ ――


「ぐっ、だったら防御はお前が動けよっ」


 ―― はぁ? 女でもない相手になんで俺様が……ああもう、クソ、大盤振る舞いだっ、これで駄目なら見限るからなっ ――


「あいつをぶったおしゃ良い話だろ、そうだ、そこの女に首輪付けようぜ。そうすりゃわざわざ姫様探す必要もねぇーし」


 ―― なぁるほど、そりゃぁ名案だ。っし、滾って来たぜぇ ――


 ほんとろくでもないなこの二人。

 けど、実力は無駄に高いのだ。

 剣が防御に入り、両手が空いた光来は光魔法に集中する。


 魔法弾が倍になった!?

 クソ、銃剣じゃダメだ。銃に換装、バックステップで遠距離まで撤退しての銃撃戦だ。

 さらに防戦一方になってしまった。

 これでは勝利の芽が無くなってしまう。


 いや、だが、狙い目はあるか、光来の魔力が尽きる瞬間、あるいはマジックポーションを飲む瞬間を狙えば……

 ……あ、れ? 性剣、何処行った?

 魔法と銃弾で迎撃していた僕はふと、性剣が居なくなっている事に気付く。

 防御を行うはずじゃなかったのか?

 これだと光来は無防備……っ!?


 咄嗟に、飛び退く。

 しかし、前方からの魔法弾を迎撃するためにワンテンポ遅れてしまった。

 背中に直撃する鈍痛。

 性剣の柄が僕の背中を痛打してきた。


 ―― おっとぉ? また避けやがった。だがさすがに今のは大ダメージだな ――


 剣が自分の判断で奇襲っ!?

 クソ、油断した。いや、これは油断じゃない、想定外の攻撃だった。


「はははっ、斬星ぃ、よそ見してていいのかぁ!?」


「っしま……」


 剣に気を取られた一瞬で、無数の光弾が眼前に迫る。


 ―― 冥土の土産に教えてやんぜぇ、ビームソードなぁ、アレマジで痛かったんだ。あのままだったら俺もさすがにやばかったぜ ――


 そんな、どうでもいい事実を告げる性剣の声を聞きながら、僕の身体は光弾を無数に受ける。

 悲鳴など上げられなかった。

 ただ、視界が明滅し、意識が……


 どさり、自分が倒れるのが分かった。けど、もう、動けない。

 完全な敗北だ。意識があるだけでもう、負けることが確定してしまった。

 薄れ始めた意識の中、性剣を手にした光来がゆっくりとにやついた笑みで近づいてくるのが見えた。


「残念だったなぁ、剣の英雄っ。最後は剣に倒されましたってか。一思いに頭を刎ねてやんよ。いや、やっぱ脳天から真っ二つのがいいか?」


 ああ、畜生……光来だけだったら、負けなかったのに。

 あの剣さえなければ……いや、これは、言い訳、か……

 真上へと振り上げられた剣。真っ直ぐに僕へと……


「だめっ!!」


 不意に、視界の中に飛び込んでくる女性の背中。

 ああ、駄目だ。ギオちゃん、逃げて……


「チッ、折角ノッてるのによぉ、やっぱ殺すか。姫の方が手に入れた達成感すげぇだろうし」


 両手を広げ、絶対に傷つけさせないとギオちゃんが僕を庇う。

 恐怖で震えながら、振り下ろされる剣を毅然と見つめる。

 ああ、僕は、無力過ぎる。

 バグってしまえばよかったかな? リックマンさん達みたいに、僕も、その方が、もっと強く……


「ぎゃはは、斬星ぃ、お前庇って女が死ん……ってオイっ!?」


 振り下ろされる両腕。

 下卑た笑いが響く。

 しかし、ギオちゃんの頭に剣が振り降ろされることは無かった。

 なぜなら、それは性剣だったから。


「オイ、クソ剣ッ! 何勝手に逃げてんだ!?」


 ―― おいおい元相棒、俺は女に使われたいんだ。女を斬りたいわけじゃあねぇ。さぁ可愛らしいお嬢さん。俺を使ってこいつを倒してみねぇかい? 今ならお安くセクハラ程度で請け負うぜェ? ――


「……や、やりますっ」


 ギオちゃんの決死の庇いで……性剣が光来を裏切った――――

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[一言] 戦いが終わったら、粉砕して砂漠に撒いて植林しようぜ!
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